2020/02/27 (木) 12:42
“ミカエル・ミシェル”という名前をご存知だろうか?フランス人の女性ジョッキーで、只今、絶大なる人気を誇っている。但し、中央競馬ではなく、地方競馬のジョッキーで、南関東・川崎競馬場の山崎裕也厩舎に所属している。愛くるしい笑顔で、彼女が出走すると観客は増えるし、売り上げも大幅にアップしていると言う。地方競馬関係者はウハウハだろう。可愛いだけでなく、実力もなかなかのもの。各地で1着を量産している。胸の前で作るハートマークに、ファンは大喜びで“ミシェルフィーバー”が沸き起こっている。写真やテレビで見る限り、細身で確かに可愛い。イベントなどにも引っ張りだこである、新聞紙上では彼女の記事が出ない日はないという具合だ。
ミシェルは3ヶ月の地方競馬短期免許を取得して、来日しているが、この短期登録制度は競輪にもある。毎年、五輪や世界選手権の金メダリストが来日し、各地でガールズケイリンの“なでしこレーサー”と熱戦を繰り広げている。昨年はナターシャ・ハンセン(ニュージーランド)、ロリーヌ・ファンリーセン(オランダ)、マチルド・グロ(フランス)、マダリン・ゴドビー(アメリカ)の4選手が来日。ハンセンとファンリーセンは3度目、グロは2度目、ゴドビーは初来日だった。
20歳のグロは母国・フランスではモデルもこなしていると、聞いた。これはミシェルと同じだ。その美貌はミシェルにだって負けてはいない。しかし、注目度という点では天と地の差があるだろう。プロモーションに関して言えば、ミシェルはネイルサロンにメディアを招いたり、ジムでのトレーニングを公開したりしている。競走以外の彼女の素顔が新聞やテレビで取り上げられるのだから注目度は増す。要するに、売ることが巧いのだ。この点について、地方競馬の団体はさすがと、言える。
競輪界はどうだろうか?短期登録選手は公式記者会見の後、伊豆でのトレーニングに入り、すぐさまレースになる。競馬と競輪、一概に比較はできないが、グロを全面に押し出すプロモーションを考えても良いのではないだろうか?もちろんグロだけでなく、他の選手を加えても良い。何より競輪業界には五輪という他の競技にはない強味がある。アスリートとして、もっと売り出せば、売り上げ増にも繋がると思うのだが……。
先日、テレビのニュースを見ていると、世界選手権に出発するアマチュアの梶原悠未がインタビューを受けているシーンが目に飛び込んできた。梶原のキャリアを考えれば、取り上げられて当然なのだが、競輪選手のインタビューはなかった。もちろん、他局のインタビューを受けていて、たまたま筆者が目にしなかっただけかも知れないが……。東京五輪でメダルが有力視されている競技なのだから、やはり、脇本雄太や新田祐大らの声を聞きたかった。梶原が悪い訳ではない。盛り上がっているのは競輪業界に身を置く一部の人間だけなのかと、考えさせられてしまった。世間一般の方々は競輪選手より梶原に対して興味を抱いている、だからこそのインタビューだったのではないか。競輪関係者にはこのことを真摯(しんし)に受け止めていただきたい。プロモーションにおいて、他競技から遅れを取っている現状を打開するために、何をすべきか今一度、考えるべきである。
岩井範一
Perfecta Naviの競輪ライター