2019/12/20 (金) 15:38
東京五輪まで残すところあと僅かになってきた。今シーズンのワールドカップ、世界選手権で自転車競技トラック種目の代表が決まる。開催国枠がないため、自らの力で出場枠をもぎ取らなければならず、熾烈(しれつ)なサバイバルレースが繰り広げられている。
松井宏佑
ケイリンは脇本雄太(福井94期)、新田祐大(福島90期)、河端朋之(岡山95期)の争いと見られていたが、ワールドカップ第1戦のベラルーシ大会で、初参戦の松井宏佑(神奈川113期)が銅メダルを獲得。世界をアッ!と、驚かせた。神経が図太いと言うのか、肝が座っていると言うのか、実に堂々とした戦いぶりだった。新田と深谷知広(愛知96期)の躍進ぶりにも、目を見張るものがある。昨シーズンまでは、結果を残せていなかった深谷だが、今シーズンは絶好調だ。第2戦のイギリス大会ではスプリントで銅メダルを獲得している。
そして、一番の驚きは、第4戦のニュージーランド大会であろう。チームスプリントを雨谷一樹(栃木96期)・新田・深谷で臨み、42秒790のタイムで優勝を果たした。これは言うまでもなく日本記録だが、アジア記録でもある。43秒台の壁を破ったのだから、東京五輪への期待は高まるばかりだ。この大会では他にもスプリントで深谷が銀、新田が銅メダルを獲得している。表彰台に2人、それもスプリントで上がったのだから、世界の勢力図が徐々に変わってきているのかも知れない。
新田祐大
特に新田はケイリン、チームスプリント、スプリントにエントリーしている。昨年まではケイリンがメインだったが、今年は完全にオールラウンダーである。それで各種目で好結果を残しているのは凄いことだ。
さらに第5戦のオーストラリア大会でもチームスプリントは連覇を達成。メンバーは雨谷から長迫吉拓が1走を務めた。この長迫は本来、BMXの選手なのでBMXで東京五輪を狙っていると、聞いたことがある。今回のチームスプリントへの参加は急なことだったらしいが、それでもいきなりの金メダルとは驚きを禁じ得ない。それだけ今の日本チームの力が底上げされているのだろう。果たして長迫はトラック、BMXのどちらで五輪の切符を掴むのか興味津々だ。
脇本雄太
新田、深谷が目立っている反面、日本のエース・脇本の名前が聞こえてこないのが残念でならない。昨年の今頃は世界ナンバーワンのスピードと、言われていたことは記憶違いではない。今シーズンの前半は日本でトレーニングを積み、後半から登場した。しかし、2戦してもメダルには届いていない。決して不調という訳ではないだろうが、それでも、彼の動向は気になるところだ。
興味と言えば、代表争いだろう。卓球の女子では石川佳純と平野美宇が、東京五輪のシングルス代表の最後の椅子を懸けて激戦を繰り広げた。マスコミも連日、大々的に取り上げていた。結果は石川がポイントで上回り、平野はリオ五輪に続いて、個人での出場はならなかった。
さて、自転車競技トラック種目だが、選考基準が明文化された。世界選手権の成績とワールドカップの成績が優先される。ここまでワールドカップのケイリンは松井の銅メダル一つだけ。新田や脇本の世界選手権での走りは俄然(俄然)、注目が集まりそうだ。ただ、新田はケイリンに固執してないという情報も耳にした。スプリントは深谷の活躍が目覚ましいし、昨シーズンは不振を極めたチームスプリントも息を吹き返した。
過去の五輪で、これだけメダルが期待されたことはないだろう。KEIRINグランプリ2019の前に恐縮だが、やはり、東京五輪も気になって仕方がない。
岩井範一
Perfecta Naviの競輪ライター