2019/12/27 (金) 21:34
年末はギャンブルファンにとって、息つく暇もない日々が続く。22日の有馬記念は単勝2番人気のリスグラシューが圧勝。このレースを最後に引退とは惜しい限りである。ジョッキーはこの日のためにだけに来日したオーストラリアのダミアン・レーン。短期騎手免許ではなく、特例での騎乗だったそうだ。認めたJRAの頭の柔らかさを他の競技団体も見習って欲しいものだ。
続いては同日のボートレースグランプリの優勝は石野貴之だった。有馬記念と同様、売り上げの目標を楽々クリアした。ボートレースグランプリは6日間のナイター開催で、200億円を突破とは恐れ入った。競馬とボートレースに共通して言えることは『お客様ファースト』を徹底していることであろう。競輪業界でもこのフレーズをよく耳にするが、まだ遠く及ばない。言葉だけでファンを納得させ、競輪場に呼べる時代は“とうの昔”に終わっている。まして「〇〇ファースト」は小池百合子都知事が使った言葉。なにもそこまでオマージュしなくても良いと思うのだが……要するに、競輪界に身を置く人間たちが自ら考える能力を放棄してしまっている(あくまでも筆者の主観)ように思えてしまうのだ。
地方競馬は29日に大井競馬場で開催される東京大賞典が控えている。つい先日、知人に誘われて、ナイター競馬に出かける機会があった。ターミナル駅から無料バスに乗ったのだが、その客層を見て目が点になってしまった。スーツ姿が半数以上、さらにカップル、女性が多い。筆者が乗ったバスに老年層は数人だけという具合だった。これが競輪だったら、ほぼ老年層で一杯になっていることだろう。このような部分も関係者はリサーチしたことがあるのだろうか?その結果を踏まえ、何をすべきか考えて、行動しているのか、疑問を抱かざるを得ない。
さて、30日はKEIRINグランプリ2019だ。優勝賞金はいつの間にか副賞込みで、1億340万円。難癖のようだが、何と中途半端な数字であろうことか。ボートレースのグランプリが1億円。少しでも多く上回りたいとの考えだとしたら、浅はかな限りである。今年のメンバーはハッキリ書けば物足りないところもある。9選手は1年を通しての活躍が認められ、その場に立つ訳だが、“アピール力”を兼ね備えた選手は、半分いるかどうか?ここでいうアピール力とは業界内に向けてではなく、競輪を知らない層に対して、である。
有馬記念は競馬を知らない人間でも買う。ボートレースのグランプリもイメージキャラクターの人気で、知らなくてもレース場に足を運ぶという。以前にも書いたけれども、その俳優を見たいがために、徹夜組まで出たとのこと。競輪界のイメージキャラクターでそんなことがあったか?……記憶をたどってもない。
今年で言えば、脇本雄太(福井94期)と新田祐大(福島90期)だろう。何しろ彼らは東京五輪のメダル候補である。しかしながら、この業界は口では五輪、五輪と、言いながらも最高峰の舞台で、それを堂々と、謳っていない。五輪のメダル候補が出場するのならば競輪場に足を運ぶ人がいるかも知れない。それが例え、1人でも2人でも良いではないか。スポーツ新聞の記事もそうだ。目立つスペースに9人が紹介されているのだが、競輪を知らない人が読んでも理解に苦しむ専門用語が並べられている。詳細を説明しているのだろうが、それが専門的過ぎる。興味がない人間は間違いなく、スルーしてしまうだろう。
有馬記念と同じように、知らない人間でも年に1度は買ってみよう!
そのように思わせる意識改革がこの業界には必要なのではないだろうか。
岩井範一
Perfecta Naviの競輪ライター