2019/09/27 (金) 16:21
「〇〇アナウンサーは夏休みのため、ピンチヒッターとして今日は△△アナウンサーが担当します」
テレビ局のアナウンサーが時期外れの夏休みなどを取る際、代わりに入ったアナウンサーはこんな感じに紹介されます。
そんな時、私はこう思うのです。
「みなさんは本当のピンチヒッターの意味を本当に理解しているのかな?」
野球をご存知の方はピンチヒッターがどういう場面で出てくるのかをよく分かっていると思います。
本来、ピンチヒッターというのは打順が回ってきた選手がチャンスなのにも関わらず何らかの理由で期待が薄い。
好不調の問題もあるし、対戦相手との相性もあれば、それこそアクシデントが絡むことも。
そこで代わりにバットを託される選手のこと。
大切なのはそこにいるのに呼ばれるということです。
どうですか?
「こいつ、面倒くさいなあ」というこの書き出し(笑)。
先日、浜松オートで行われましたG1秋のスピード王決定戦。
私は開催4日目と最終日に場内のステージイベントのMCとして呼んでいただきました。
ということで、4日目の開門と同時に現地入り。
当日は伊勢崎、川口、浜松のイメージガールが大集合したゲーム大会などのイベント、準決勝戦の勝ち上がりインタビューなどを担当させていただきました。
G1初優勝を目指す地元選手も多く、勝ち上がった選手たちはファンからの大歓声を受けておりました。
そして、翌日は優勝戦です。
ゲスト(お笑い芸人・パンクブーブー)も豪華で、私は優勝戦出場選手紹介。
さらには表彰式が担当です。
自分の任務を果たし、シッカリ大会を締めくくれるようにと、早目に宿に入りました。
その後、宿の近くにあるお店でハイボールを片手に浜松餃子に舌鼓を打ち、心身共に万全の態勢を取ろうとしていたところ……そこに一本の電話が!
はい、レース場の関係者からでした。
「お気づきかも知れませんが、ウチの実況である島田(祐希)さんの喉の調子が悪くて……場合によっては、森泉さんに明日の実況をお願いしたいのですが」
この電話で完全にホロ酔い気分は覚めました。
確かに、今節の島田君はかなり辛そうだ。
とは言え、何だかんだで大丈夫だろうと、高を括っていました。
もちろん、念のために少しだけ準備(マイ出走表の用紙をコンビニでコピーするくらいですが)はしていましたが。
前日までの気持ちは「やると決まれば腹を括って!」が1割。
残り9割は「島田ーっ!治れーっ!」でしたね(苦笑)。
オートレース実況を離れてから半年。
やはり、不安が楽しみを勝るのです。
離れてからは練習すらしていなかった状況ですからね。
最終日、レース場に到着するや否や関係者から正式な打診がありました。
そこからスタジオに直行し、中継時の流れや実況のタイミングなどを確認。
「前日マリオカートの実況をされていたのでブランクは無しということで!」
確かに前日、各場のイメージガールによるゲーム大会で実況を担当しました。
そんな経緯もありましたので、関係者からジョークの言葉も投げ掛けられました。
でも、私、森泉……1レースが開始するまではそれに応える余裕はなし!(笑)
そして、いよいよレースが始まりました。
序盤は思い出しながらの実況。
さらに各場でファンファーレや喋り出しのタイミングも違うので、最初はレースよりもそちらに気を遣います。
それでも、徐々に慣れていき、5Rで遠藤誠(浜松25期)選手が先頭に立った時は「イッツゴーンヌ!」を実況に入れる余裕も出てきました(笑)。
「イッツゴーンヌ!」は野球用語であり、北海道日本ハムファイターズのファンにはお馴染みのフレーズです。
実は遠藤選手はファイターズのファン。
しかも実弟は東大野球部出身で、元ファイターズの投手・遠藤良平さんです。
島田君も遠藤選手がトップに立った時はこのフレーズを実況に入れていたので、実は私も密かに機会を伺っておりました。
ちなみに「イッツゴーンヌ!」はホームランが出た時に出るフレーズです。
このようにどうにか乗り切って、遂に決勝戦。
スタートから柴田健治(浜松27期)選手と藤波直也(浜松31期)選手という共にG1初優勝を狙う地元コンビが大きく抜け出す展開になります。
その2選手に対し、徐々に差を詰めてきたのが“ナンバー1”の鈴木圭一郎(浜松32期)選手です。
レース終盤にリードを広げかけた柴田選手を猛追する鈴木圭選手。
最後の最後で、鈴木圭選手が捲って先頭に立ち、そのままチェッカーフラッグ!
レースリプレイはこちら。
あの位置から追いつくことができる“ナンバー1”の凄味を感じた一戦でもありました。
鈴木圭選手は見事に今年2度目のG1タイトルを獲得!
今節は連日、ギリギリの戦いが続いていた鈴木圭選手ですが、表彰式でようやく笑顔に。
帰りに偶然、駅で鈴木圭選手にバッタリお会いしましたけれども。
実にホッと、した表情をされていましたよ。
冒頭で記しました“ピンチヒッター”の意味。
自分で言うのも何ですが、これが本当のピンチヒッターだ!(笑)
そして、最後にこれだけはお伝えしたい。
どれだけ細心の注意を払っていても調子の悪い日はあります。
当日にならないと分からないパターンもあれば、逆に翌日になるとスッカリ治っていたりもします。
当然、スポーツ選手も普段からコンディションや身体のケアに気を配っています。
それでも、ケガをする時はしてしまいます……それと同じでしょう。
私も数年前、同じような状況でG1レースの実況を代わってもらった経験があるので、島田君の悔しい気持ちはよく分かります。
しかも浜松は改修工事を控えているため、今年度最後となる記念開催でした。
やはり“顔”である自分が締めたいという想いが島田君にはあったことでしょう。
今回は緊急事態でしたが、クオリティーは置いておいて。
島田君の気持ちも汲み取って、無事に終えることができ、私自身もホッと、しています。
また、中継スタッフのみなさんにも多大なるフォローをしていただきました。
この場をお借りして、心より御礼申し上げます。
【オートレース 今後の記念レース日程】
・9/21~=特別G1共同通信社杯プレミアムカップ(山陽)
・10/10~=SG全日本選抜(川口)
・10/31~=SG日本選手権(飯塚)
・11/20~=G2小林啓二杯(山陽)
・12/4~=G1グランプリレース(川口)
・12/18~=G1スピード王決定戦(山陽)
・12/27~=SGスーパースター王座決定戦(川口)
森泉宏一(もりいずみ・こういち)
1984年5月8日生まれ
東京都出身 広島県・富山県育ち
父親の影響もあり、学生時代は野球に打ち込む
25歳の時、ボートレースで公営競技実況デビュー
2017年4月から伊勢崎オートでオートレース実況を始める
公営競技実況の他、プロアマの野球実況
さらにはイベントや展示会の司会
広告モデルや話し方教室講師などでも活動
野球好きの選手からの誘いもあり、
伊勢崎オートの野球チーム「キラッツ」に入部
しかし、デビュー戦において投手で二桁失点を喫する
その為に最近、オートレース界隈でその実力が疑われている
某選手からの「投げるスタミナがあるだけで助かっている」
という慰めの言葉が唯一の救い
森泉宏一
生まれは東京、育ちは広島、富山。学生時代に喋りの仕事を志し、2009年にボートレース実況でアナウンサーデビュー。2017年からはオートレース実況も始める。現在はYouTube配信番組などの出演も多く、「チャリロト劇場 燃えろ!!オートレース」出演時はMCも務める。パーフェクタナビでは「森泉宏一の実況天国」コラム連載中。プライベートでは2022年に年間100本の万車券的中を達成。試走タイムが出ない選手や逃げが得意の選手を好む傾向にある。公営競技を含めた日々の仕事の様子などを投稿している「森泉宏一のモーリーチャンネル」も絶賛更新中。