2018/06/27 (水) 11:20
8月15日からいわき平競輪場で開幕するG1オールスター競輪。その出場選手が19日に発表された。男子ファン投票上位50人は無条件で、以下は選考期間中の競走得点上位者。さらに推薦枠として10人が選ばれた。同時に女子もガールズドリームレース、アルテミス賞レースに出場する14人の名が明らかになった。男子は新田祐大(福島90期)、女子は児玉碧衣(福岡108期)がファン投票1位に輝いた。新田、児玉の実績を考えれば、妥当な結果だろう。
男子は新田以下順に、平原康多(埼玉87期)、深谷知広(愛知96期)、浅井康太(三重90期)、三谷竜生(奈良101期)、武田豊樹(茨城88期)、村上義弘(京都73期)、渡辺一成(福島90期)、山田英明(佐賀89期)の9人がドリームレースに出場する。尚、9位の山田と10位の諸橋愛(新潟79期)との差は僅か1票。これが政治の選挙だったら、間違いなく異議が申し立てられていたに違いない。10位の諸橋から18位の園田匠(福岡87期)までがオリオン賞レース出走となる。ちなみに名簿に登載された中で最下位の選手は61票だった。
新田の得票数は会場・ネット・ハガキで14,368票。何が言いたいのかと言えば、得票数の少なさである。聞くところによると総投票数は約222,000票とのこと。ただ、これは純粋に222,000人が投票した訳ではない。中には複数の会場で投票したファンもいるだろうし、これにネットやハガキが加わる。この数字に全国の競輪ファンはこれしかいないのかと思うと寂しさを覚えてしまう。比較しては申し訳ないのだが、同じプロスポーツであるプロ野球と比べると“雀の涙”である。セ・リーグ先発投手・第1位は12年ぶりのオールスター戦出場となる松坂大輔(中日)で、獲得票数は394,704票。要するに1人で競輪の総投票数を約1.7倍も上回っていることになる。
新田と松坂の差。競技、国民の認知度を考えれば致し方ないかも知れないが、五輪にも出場し、競輪でもビッグタイトルを何度も獲っている新田が14,368票とは改めて寂しい。新田の人気云々ではなく、あまりにも競輪自体の認知度が低すぎる結果であろう。そして、最下位の選手の得票数は正直、あり得ないものだ。何度も書いてきたが、関係者はこの投票数を見て、シッカリした方向性を考えるべきだ。
そして、女子の結果では到底考えられないことが起きた。ファン投票13位の山本レナ(京都106期)、彼女は今期限り(6月30日)で代謝制度にかかり引退が決まっている。ファン投票時はまだ現役だからという主張だろうが、7月以降は現役選手でなくなっているのだ。ファン投票は結果として発表してもいいだろう。しかし、現実に出走できない選手を敢えて出場選手として発表するのはいかがなものか?現に山本は19日、Twitterでハッキリと代謝制度で走ることができない旨を公式につぶやいている。走れない選手を出場と発表するのは彼女への侮辱でもある。素直にファン投票13位の山本代謝制度により走れませんとすればいい、本人も正直に認めているのだから。
20日のスポーツ紙の扱いも面白いものだった。数紙は山本の代謝制度に触れていたが、全く触れずに出場選手として載せていたスポーツ紙もあった。結果、山本に投票したファンはあるスポーツ紙を読んでは残念がる、あるファンは素直に喜ぶ、という大きな混乱を招く。発表の仕方に問題があるからファンも戸惑う。厳しい言い方をすれば、ファン無視の発表だと言っても過言でない。代謝制度は当然、知られている。誰が対象になっているかは関係団体しか分からないだろうが、少なくともファンは自分が応援している選手が代謝制度に引っかかっているくらいは分かっている。諦めていたのに出場と発表されれば“特例”で引退を免れたと思うかも知れない。机上の論理でファンを惑わす、これではいつまで経っても競輪が認知されなくても仕方ないことだと思ってしまう。
最後も女子のことになるが、尾崎睦(神奈川108期)が昨年に続いて、8位〜14位のアルテミス賞レースにも選出されなかった。ガールズケイリングランプリにも出場して、通常開催では本命になることも多い。だが、今回のファン投票結果は16位だった。同様にガールズケイリンコレクション常連になりつつある鈴木美教(静岡112期)も17位だ。投票の基準はファンそれぞれだろうが、違和感を覚えてしまうことは否めない。あくまでも提案だが、上位7人のガールズドリームレースはファン投票にして、アルテミス賞レースは競走得点で選んでみてはどうだろうか?男子も51位以下はそうなっている。もう少し、柔軟に対応してもいいように思うのだが。
岩井範一
Perfecta Naviの競輪ライター