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【競輪祭女子王座戦予想】絶対女王・サトミナに風穴を!? “ちょっと待っておねいさん作戦”で読む勝負の行方

2025/11/13(木) 18:00 0 15

11月19日、小倉競輪場で「第3回競輪祭女子王座戦(GI)」が開幕する。
グランプリスラムを達成した“サトミナ”こと佐藤水菜。世界選手権でも連覇を果たし、まさに「絶対王者」の名をほしいままにしている。もはや国内に敵なしーーそう言われるなか、今シリーズこそ“風穴”を開ける選手は現れるのか。元競輪選手・中川武志が、サトミナの“負けパターン”を徹底分析し、打倒の可能性を探る。
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止まらない女王・サトミナを止めるのは誰だ!?(撮影:北山宏一)

■2025年最後のGI、舞台は小倉

 2025年もついにラストGI。舞台は競輪発祥の地・小倉競輪場だ。

 屋内唯一の400バンクとして“高速バンク”と評されることが多いが、実際に走ってみると「そこまで軽くはない」。上がりタイムも他場より格段に良いわけではなく、“超高速”とは言えない。

 ただし、天候や風の影響を受けない安定した環境であることが最大の特徴。競輪養成所男子の一次試験にも使用されるなど、各選手が持つトップスピードを最大限に発揮できる、純粋な実力勝負のバンクだ。

■絶対女王・佐藤水菜、世界連覇の衝撃

女子ケイリン2連覇を果たした佐藤水菜(提供:公益財団法人JKA)

 今節の主役はもちろん、“サトミナ”こと佐藤水菜
 2025年の世界選手権では、250バンクながらホーム捲りで堂々の連覇。日本人による世界選手権連覇は、あの中野浩一氏以来の偉業。国内でも敵なし。GIは昨年の女子王座戦から4連覇中と、まさに無双状態だ。

 しかしーー競輪に「絶対」は存在しない。
 筆者の持論、「競輪に硬いレースなどない」。そこで今回は、佐藤が2着以下になる“隙”を展開から探っていく。

■「サトミナの負けパターン」から勝機を探る

 男子競輪では、筆者がデビューする以前は「ライン」が存在せず、準決勝などは強い選手が前から並ぶレースがほとんどだった。絶対的なスピードを誇った中野浩一氏に対抗するため、関東でフラワーラインができ、これが男子競輪におけるライン戦の始まりとされている。

 近年のガールズケイリンでも、“ライン的”な動きが見えることもあるが、現状では自力選手とマーク選手の“win-win”関係の関係と言える並びで作戦面での2段・3段掛けのラインはまだ成立していない。

その1. 悪い癖はある ーー 佐藤水菜の“イン詰まり”に潜む罠

佐藤水菜の“唯一の隙”と言っても過言ではないイン詰まり(撮影:北山宏一)

 佐藤の負けパターンとして、まず誰もが思い当たるのは“イン詰まり”だ。
 彼女にはひとつ、強さと紙一重の“悪い癖”がある。捲りに行く前、隊列の後ろに下がったとき、普通の選手なら前の選手との車間をやや開け、その後ろからタイミングを計る。前が内を開ければ、自分も内を少し開けておくのがセオリーだ。

 しかし佐藤の場合は違う。彼女は内を閉めたまま、車間を詰めていく。まるで前を逃さぬように抑え込みながら、次の瞬間を狙っているようにも見える。一見、隙のない構えだが、これがレースのペースが上がったときに“罠”となる。内を突いて並んでくる選手がいれば、前との距離が詰まりすぎ、結果的に自らの動きを制限してしまうのだ。

 普通の選手なら捲れる場面でも、脚への負担を強いられ、勢いを削がれてしまう。力でねじ伏せてしまうこともあるが、それはあくまで脚力が常軌を逸しているからこそ成立する芸当であって、理論上は自分で自分を苦しめる形を作っていると言える。

 もし彼女が敗れたときは、ぜひ前で駆けていた選手の動きに注目してほしい。
 どんな展開であれ、彼女がインに詰まったときには、そこに必ず“勝負の糸口”が潜んでいる。その動きを読み解くことが、次のレースを占う上での大きなヒントになる。

その2. かましを送り出す展開 ーー “バックを踏ませる”勇気が勝負を変える

2024年のガールズグランプリでは石井寛子が優勝を掴んだ(撮影:北山宏一)

 昨年のグランプリでは、佐藤が前受けからホームで坂口楓華のかましに合い、3番手で切り抜けたものの、最後は捲りきれず番手を回った石井寛子が優勝を掴んだ。あのレースも、最終ホームで一度バックを踏んで立て直したという点で、実質的にはイン詰まりに近い展開だったと言える。つまり、彼女にとって“ゴールに近い地点でバックを踏まされること”こそが最大の弱点であり、そこにこそ勝機がある。

 この状況を作り出すには、あえて最終ホームまで仕掛けを我慢し、思い切って一か八かの勝負に出る勇気が必要だ。もちろん、そこには佐藤自身のわずかな油断も欠かせない。前受けはあのグランプリ以来見られないが、4月のガールズクラシック決勝では打鐘から抑え先行で逃げ切っており、あのときはグランプリの時よりも明らかに前に出てからのペースが速かった。力で押し切る強さを見せつけた一戦だった。

 ただし筆者の経験上、小倉ドームという舞台は、かます側よりも“かましを合わせる側”のほうが有利なバンクだ。屋外の競輪場に比べて風の影響がなく、合わせにいった選手の踏み出しが生きる傾向がある。今シリーズ、ホームで強烈にかませる選手といえば、昨年グランプリで見せ場を作った坂口楓華を筆頭に、仲澤春香児玉碧衣大浦彩瑛といった顔ぶれが揃う。

 このあたりの選手が同乗するレースでは、その番手を回りそうな選手から狙ってみるのも面白い。とはいえ、この戦法は合わされれば即大敗のリスクを伴う。残り一周を楽しむ余裕もなくなる可能性があるが、それでも勝負に出る勇気を持つ者だけが、絶対女王・佐藤水菜に風穴を開けることができるのだ。

その3. あえて仕掛けない勇気 ーー“ちょっと待っておねいさん作戦”

(左から)小林優香児玉碧衣尾崎睦大浦彩瑛(撮影:北山宏一)

 佐藤水菜の勝ちパターンとして最も多いのは、他の選手が積極的に仕掛けてスピードが上がりきったところを、圧倒的なトップスピードで一気に捲り切る展開だ。つまり、周りが動けば動くほど、彼女の持ち味が最大限に生きる構図になっている。

 では、その流れを断ち切るにはどうすればいいのか。

 そこで鍵になるのが、“あえて仕掛けない勇気”だ。
 佐藤に後方から仕掛けられ、勝負が決まってしまうリスクを覚悟のうえで、最終ホームではその時点で前に出ている選手に先行を任せ、自分は最低でも2コーナーまでは動かない。この「待つ」判断こそが重要になる。

 この作戦の肝は、自身のトップスピードを最終4コーナー以降に持っていくことだ。そうすることで、佐藤の仕掛けが遅れれば遅れるほど、彼女は自分のトップスピードを出し切れないままゴールを迎えることになる。これが、筆者が名付けた“ちょっと待ってちょっと待っておねいさん作戦”だ。

 フレーズ的にも、少し時代の香りが残るくらいでちょうどいい。忘れられた頃にやってこそ効く作戦である。

 この戦法を実際にやり切れるのは、限られた勝負師だけだ。今年4月のガールズクラシック準決勝で佐藤に初勝利を挙げた児玉碧衣。仕掛けを待つ胆力と勝負勘を兼ね備えた尾崎睦。復調気配が漂う小林優香。そして、次世代の勝負師として頭角を現している大浦彩瑛は年齢的には今しかない。このラインナップを見ると、まさに“今、この瞬間に挑める選手たち”という印象だ。

 この「おねいさん作戦」で彼女たちが勝つとすれば、2着の筆頭候補はーーやはり佐藤水菜。それほどまでに、彼女の存在感は別格であり、勝敗が決してもその名は必ず上位に残る。

■打倒サトミナ大作戦、そしてその先へ

佐藤水菜に“一強時代”を突っ走ってほしい(撮影:北山宏一)

 以上が、現時点で筆者が考える“打倒サトミナ大作戦”である。

 ただ、ここでひとつ、古い話をさせてほしい。
 日本でプロ野球が最も熱狂に包まれていた時代、それは巨人のV9時代だった。一強が続く時代というのは、他の勢力を圧倒する一方で、その世界そのものの進歩と人気を大きく押し上げる。競輪もまた、同じ構図の中で成長してきたスポーツだと思う。

 筆者はどちらかといえば穴党で、波乱を好むタイプだ。
 それでも、ガールズケイリンの進化と発展のためには、しばらくは佐藤水菜に“一強時代”を突っ走ってほしいと心から思う。彼女が築く牙城が高ければ高いほど、それを超えようとする挑戦者たちの意志もまた強くなる。そのぶつかり合いこそが、ガールズケイリンという舞台をさらに熱く、深くしていくのだ。


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