2024/12/15(日) 18:00 0 7
今年の顔であり、2025年S級S班所属となる9名の選手たちによる一発勝負。競輪界の一大決戦「KEIRINグランプリ2024」が30日、静岡競輪で開催となる。netkeirinでは並びが発表される記者会見までの9日間、出場選手たちの特徴やグランプリまでの道のりを日替わりでお届けしていく。今回はスピードで時代を築く2022年のグランプリチャンピオン脇本雄太を紹介する。(構成:netkeirin編集部)
自転車競技最高峰の大会UCI世界選手権のケイリンで銀メダルを獲得し、日本代表として東京五輪を戦った脇本雄太。グランプリは2022年の平塚で優勝している。これまでGIを8勝しており、そのうち3回は完全優勝。獲得タイトルや表彰歴を並べて見れば、誰もが認める才能の持ち主であることは明白であり、自転車競技界ならびに競輪界を牽引してきた中心人物であることに間違いはない。世界と対等に戦い抜いた神速を武器にそのスピードでファンを魅了している。
ところが、近年はあまりの強さに警戒され厳しく対策されるレースも目立ち、「脇本包囲網」と表される形でレースが進むこともしばしば。長年フィジカルへのダメージも蓄積され、脇本本人からコンディションの不調がコメントされることも。そういった状況から昨年はタイトル獲得には至らず、苦戦する姿も見られた。
また、そんな背景に輪をかけ、脇本を取り巻く周囲の環境変化や後輩選手の成長などから番手回りの機会も増えており、走りの幅を広げ続けている。超ド級のスピードで格の違いを見せつけながら、ラインとして機能することへの意識も高まり、脇本雄太の選手像は日々大きく進化を遂げている。これからも目を離せない圧倒的強者だ。
今年は年明けに体調不良でリズムを崩していたが、ウィナーズカップでは初日特選から脇本らしさ全開の豪快な捲りが炸裂。その勢いのまま優勝へ一直線。この優勝もあって賞金ランキングも上位に位置し、一時期は4位で「グランプリ出場濃厚」であった。だが、激しい賞金争いは簡単ではなく、最後のGI競輪祭前にはボーダーライン付近の8位であった。
そして迎えた競輪祭初日。勝ち上がりは逃せない中、一次予選1でまさかの9着。例年の勝ち上がりポイントのボーダーを考えれば一次予選2では連対必須の苦しい状況。背水の陣で臨んだレースは一本棒の展開となり、最終バックでも後方の大ピンチ。脇本を愛するファンも「まさか一次予選敗退あるのか」と不穏な気持ちが頭をよぎったのではないだろうか。
しかし、最終直線で猛烈な脚で大外から強襲し1着。「これぞ脇本」という異次元のレースで勝ち上がりを決め、その後のレースもすべて1着で決勝進出を果たした。そして決勝、脇本は元ナショナルチーム所属の同県寺崎浩平の番手を回ることに。近畿勢は後ろ攻めになるが、赤板で寺崎が主導権。そのままの隊列で打鐘周回に入り、最終ホームで犬伏湧也が強烈なカマシで迫り番手から発進するが、近畿3番手の村上博幸の位置に犬伏がハマってしまう。
最終直線では犬伏とのマッチレースになるが、輪界屈指のスピードを持つ犬伏ですら差を詰められないまま脇本が押し切り優勝。近畿勢では59年ぶりとなる競輪祭優勝を決め、3年連続6回目のグランプリ出場を確定させた。
競輪祭優勝後のコメントで「寬仁親王牌の決勝での失敗があったからこそ、それを糧に今回はやれた」と脇本は語った。おそらくはこれからも増えていくであろう番手のレースもこなしながら、自力でも変わらず強いレースを披露していくことだろう。年々戦法の幅を広げ続け、さらなる高みに上り詰めていく。
最後に脇本の武器を紹介したいのだが、能力値そのものが武器なのでレースを絞ることが困難だ。今年も幾度となく衝撃的な強さで競輪ファンを沸かせてきたが、特に衝撃的だったのが向日町記念の決勝だ。近畿からは脇本を含め3人が決勝に勝ち上がり、地元の窓場千加頼、山田久徳とは別線勝負に。脇本は武藤龍生とのコンビで臨むことに。
脇本は中団からのスタートになるが、赤板手前から清水がこの位置を奪取しようと脇本の外を並走する形に。しかし脇本もこの位置を譲らず。この位置を諦めた清水が窓場を叩き、そのまま先行し、脇本は最後方。その隊列のまま最終バックを迎えたところで窓場が先捲り。2センターから4角手前で逃げる清水を捉えていく。
直線の短い向日町バンクということもあり、この瞬間に多くのファンが窓場の地元優勝を確信したのか、ものすごい歓声が飛び交った。しかし、大外に膨れて絶望的な展開から、理不尽なほどのスピードで伸びていき、脇本優勝。レース後、窓場は「勝てたと思った」とコメントを出している。まさに異次元の脚を持つ脇本にしかできないオンリーワンな芸当、きわめてレべチである。
最後に、現在netkeirinで募集中の投票企画「競輪ファンが選ぶ KEIRINグランプリ2024優勝選手」で脇本雄太に寄せられたコメントを紹介する。
「復調している。強い脇本が帰ってきた。最終2角捲りが炸裂!」
「ここに来て仕上がってきた。競輪祭の勢いでそのままグランプリも」
「やはり輪界ナンバーワン」
「福井人なので応援、競輪祭最強はまだまだワッキー」
「世界の脚がある。超高速のまくりが見たい」
「好きに走れば負けん」
「搭載しているエンジン(脚)が違う」