震災の年に優勝した中川誠一郎

ーー印象に残る熊本記念を教えてください

　その都度その都度、 印象に残るレースがいっぱいあります。そうですね、中野浩一に、滝澤正光と井上茂徳のデッドヒートに、徳島小川圭二の4連勝、あとはやはり地元勢ですね。西川親幸の連覇に合志正臣。久留米で開催した一発目に中川誠一郎が優勝した記念は印象に残っています。ちょうど「平成28年熊本地震」が4月にあった時で、5月の静岡ダービーでは神風が吹いて優勝。その年10月の久留米で初めて記念を獲りましたからね。その後一年おいて連続優勝。やっぱり誠一郎が印象深いです。

過去10年熊本記念優勝者

*は久留米開催

　71周年嘉永泰斗の優勝は格別でしたね。私の予想が最高で、◎◯▲で当てましたから思い出に残っています。去年の中本匠栄の優勝も、九州の二段駆け、三段駆けでしたが、今年どうなるか。熊本記念の思い出はもうありすぎてどれか一つを選ぶのは大変ですが、やっぱり熊本勢の活躍というのが一番です。地元記念はお祭りですから。

バンクは全く別物 内よりも外

ーー熊本競輪が再開しました。これまでと違いは感じますか？

　違う違う、全く違う。昔は500バンクで飛行機が着陸しても大丈夫ということで“滑走路”と言われて、コーナーが結構立って、直線が長かったんですね。で、今は400バンクにしたのですが、カントだけは昔のまま残してますから全然違います。3、4番手からの選手がよく伸びていますね。先行屋が有利と言われますが、長く駆けたらやっぱり持たない。捲るなら、ホームから行くか、遅めの3コーナーから行った方が伸びますね。内に行くよりも外の方が有利。今度の記念もそういう傾向になるでしょう。

小田原の7人は仕方がない

ーー7車連係、3車で別線など、最近G3決勝での並びが話題になりました。社長はどのようにご覧になられましたか？

“小田原の7人”。あれは色々言われます。あっせんの時点で神奈川の選手と南関の選手があれだけ多かったらもう仕方ないですよ。そういう番組になってしまいますよ。決勝で神奈川の6人が並ぶのは当然だと思います。今まで一緒に練習をしてきて、一緒のレースになった時に別線とはならないです。神奈川以外の南関で鈴木裕が一人乗ったけど、鈴木裕からすれば、神奈川の6人に世話になってるじゃないですか。1人で走って雑ぜ繰ったところで、脇本にやられるだけですから。

　専門家、解説者の方々はいろんなことを言いますけど、今年2月の奈良記念はどうか、とか。あの7人は奈良、大阪、和歌山、兵庫、福井、和歌山となれば、それは当然分かれますよ。小田原の場合は平塚をホームにしてる選手と、川崎をホームにしてる選手と分かれるかどうか。やっぱりそれもできません。川崎が練習できない時は、みんな平塚で練習するんだから。みんなが練習仲間なんだから。あれは仕方ないと思いますね。選手も結構難しかったのではないかと思いますよ。

　いずれにしても強力な自力型が多くいる地区の記念では、今後もこういうことが起きてしまうでしょうね。南関、関東とそして近畿ですよね。強い自力型がいっぱいおるのは強みです。今の中部とか瀬戸内とか九州とかはできないでしょうね。私は“小田原の7人”は仕方がないと思っています。

せめて伊藤颯馬がいてくれたら

ーー今回の熊本記念の九州自力型はいかがですか？

　厳しい。もし私の願いが叶うのでしたら伊藤颯馬を(あっせんに)入れて欲しかったですね。あとは久留米の後藤大輝、大分の阿部将大らがおってくれたらと思いました。嘉永泰斗が優勝した時は北津留翼がいて、中本匠栄が優勝したときは松岡辰泰がいましたから。今回の熊本記念に関しては、嘉永泰斗が前を行かざるを得ないメンバーですよね。南関の郡司浩平、深谷知広、近畿の脇本雄太、関東の坂井洋が相手ですから、九州勢は厳しいんじゃないかと思いますね。嘉永泰斗もオールスター競輪が欠場で、共同通信社杯競輪でもそこまで良くなかったから、どのくらい立て直すかですよね。

　地元にかける思いっていうのは、もう誰よりも強いところですよ。中川誠一郎も言ってますけど、若い選手たちに頑張ってもらわないかんです。地元の選手だから応援はしますけど、今の郡司浩平、深谷知広、脇本雄太が相手となると厳しい。伊藤颯馬、伊藤旭、後藤大輝、阿部将大、北津留翼がおってくれたら違いますが、ないものねだりしても仕方ないですからね。おらんで。これが現実ですから。

ーー熊本記念の見どころをお願いします

　そうですね。見てほしいのは脇本雄太。お金が欲しいじゃないですか。今賞金ランキング7位、残すは寛仁親王牌・世界選手権記念トーナメントと競輪祭しか残ってないですから。獲りたいでしょう。あとは南関。郡司浩平は熊本記念2度勝ってますし、郡司はもうグランプリを決めてますからね。決めてない深谷、特に今年は静岡グランプリ。だから私は優勝するのは脇本雄太か深谷知広だと思います。

■プロフィール武田 一康(たけだ・かずやす)
コンドル出版社代表取締役社長。昭和23年4月24日生まれ。小学生の頃から競輪場へ出入りし、予想台に立つ父の英才教育のもと感性を磨き、19歳から予想業に携わる。新聞業務は実弟の圭二氏(コンドル社・専務)、そして幸三氏との巧みな連係プレーで毎日円滑に製作されている。競輪歴60数年のキャリアに裏打ちされた莫大なデータと情報と経験値を基に、歯に衣を着せぬコメントで競輪界の矛盾や問題点を様々なかたちで提起している業界のご意見番的存在。

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