2022/02/21 (月) 12:00 7
みなさんこんにちは! 110期愛知支部の佐々木恵理です。
寒い日が続いていますが、いかがお過ごしでしょうか?競輪も屋外のレースで寒いと身体が動かないので暖かい春が待ち遠しいです。
最近アイドルシーンでは、オーディション番組やドキュメンタリーなどの裏側を覗くようなコンテンツが増えました。ドキュメンタリー番組を見ることで、ステージ上やSNSでの発信ではわからないことが見えてきました。
以前、歌がすごく上手になった推しに歌の練習について聞いたことがありました。歌の上達法についての新しい発見があるとともに、努力も伝わって、これからの活躍に期待が高まりました。アイドルのバックグラウンドが垣間見えたことによって、推しを応援することをより一層楽しめるようになった瞬間です。
自分が競輪選手になってみて、競輪ファンの方も同じように疑問があるのではないかと感じました。
競輪選手にも個人のコラムやドキュメンタリー映像があるとはいえ、バックグラウンドを知る機会は少ないです。また、自分が選手の立場になって思うのは、選手にとって当たり前のことでもファンの人は知らないことがたくさんあるように思います。
競輪の基礎知識があれば、競輪そのものはもちろん、コラムなどのコンテンツへの理解が増し、推しについて入り込めるのではないかと思いました。そこで今回は、競輪選手になってよく聞かれる質問を1人の競輪選手として回答してみました。
Q.練習って何してる?
A.実際に自転車に乗るトレーニングは大きく分けて2つ。競輪場・自転車競技場で行うバンク練習と、ブレーキがついた自転車で公道を走る街道練習をしています。
レースとは違う形でもトレーニングをしています。バイクの後ろを追走するスピード練習、男女混ざっての練習など。レースで使わないギアを使用したりもします。
室内トレーニングでは、ジムでのウエイトトレーニング、固定自転車でのトレーニング、体幹トレーニングなどを行います。
自己負担でトレーナーをつけて指導をしてもらう人もいれば、自分で勉強してトレーニングをする人もいます。練習方法は多岐にわたっていて選手それぞれで全く違います。
Q.どういう生活?
A.レース、練習を中心とした生活をしています。
1ヶ月に2、3回あるレースの日程を元に練習予定や休みの日の計画を立てています。時間の使い方は自由で全て個人に任されています。休みの日は家族と過ごしたり、趣味を楽しんだりとさまざまです。
レースが生活の基準になるので休みも不定期になり曜日を意識しにくいように思います。世の中がお休みの時にレースの場合が多いので一般的な土日祝休みとは時間があいにくいです。
Q.走るレースはどうやって決まるの?
A.競輪を統括する公益財団法人JKAのあっせん課が決めます。選手がSNSで言う「あっせん出ました!」の“あっせん”はここから来てます(意味:走るレースが決まりました)。
FI、FII、GIIIは競走得点、脚質、所属地区などを考慮して決められます。またGI、GIIは提示された選考基準(競走得点、賞金上位、優勝回数など)を元にして選ばれます。選手が自分で選ぶことは基本的にありません。
Q.先輩後輩の関係って?
A.競輪学校(養成所)の卒業期と年齢を基準とした縦社会です。
男子はラインがあるので地区や同県のつながりが深いように思います。開催中の食事も同県でまとまって食べているのを見かけます。地区や期を超えて仲が良い人も多いので、そこは開催中に自転車や趣味の話をしたり仲良くなることも多いのでしょう。
ガールズは同期のつながりが深く、開催中には同期で行動することが多いです。開催中に同期がおらずひとりになることを 「ぼっち開催」と言ったりします(ガールズだけの独自文化)。みんな気を利かせてくれるのでぼっちでもそんな困ることはありません。
Q.師弟制度ってなに?
A.競輪界には師匠のいる選手が多いです。師匠になってもらいたい選手にお願いして、弟子にさせてもらいます。縁のある選手にお願いすることもあれば、愛好会(競輪場で開かれる練習会)での指導担当選手にそのまま師匠になってもらうこともあります。
弟子は、師匠から練習やレースの指導やアドバイスをうけたり、練習や競走中の過ごし方など競輪界での生活ルールを教わります。みっちりと指導する師匠もいれば自由にやらせる師匠もいたり、師弟関係は本当にさまざまです。
Q.競輪選手ってどうやってなるの?
A.日本競輪選手養成所に入所し卒業することと、国家資格である競輪選手資格試験に合格することが必要です。まずは養成所の入学試験に合格しないといけません。入学試験は自転車に乗ってタイムを競う試験(技能試験)、もしくは固定自転車の数値を競う試験(適正試験)、筆記、面接があります。近くの競輪場や支部に連絡し、競輪選手に弟子入りして入試に向けたトレーニングをする場合が多いです。
Q.レース参加中ってなにしてる?
A.レースに参加する際は、外部と通信ができないよう、競輪場に到着後すぐに携帯電話などの通信機器を預けます。主な過ごし方は、持ってきた本を読む、ポータブルプレイヤーでDVDを見る、自転車の整備をする、同部屋の人や友人との会話を楽しむ、居室にあるテレビを見る、日頃の疲れのケア、お昼寝などです。多種多様のリラックスタイムを過ごします。通信機能のない古いゲーム機なら使用可能なので、20年以上前に発売されたゲームボーイで遊ぶ人もちらほらいます。
Q.開催場所によって前乗り・後泊したりする?
A.前検日(レース初日の前日)の検査開始時刻に間に合うかどうかです。選手は前検日に競輪場に入り、自転車の検査、身体の検査をします。前検日の時間に間に合わないと、契約解除となりレースを走ることができなくなることもあるため、遅刻することがないように競輪場に入ります。
交通事情により朝出発して間に合わない遠い競輪場の場合は自費で前泊します。また、ナイターやミッドナイトで帰る手段がない場合は後泊します。ナイターやミッドナイト開催の最終日は無料で宿舎に泊まることができます。
Q.あっせんされたらテンションがあがる競輪場は?
A.個人的には宿舎の食事が美味しいところは嬉しいです。外部と遮断された中で生活するので食事はかなり楽しみになります。
選手に人気なのは松山でしょうか。野菜をたくさん使ったおしゃれで美味しいおかずをバイキング形式で食べられます。個人的な好みですが、西日本の食堂はどこもとても美味しいです。特に、武雄が好きです。食堂のおばあちゃん手作りの味が疲れた体に沁みます。
同じ競輪場でも地方の名物(高知のカツオのたたき、佐世保のちゃんぽん、防府の瓦そば、など)が出ることもあり食堂もそれぞれ特色があります。
今回は競輪選手の平均的な回答をしたので、推し選手はまた違う考えや行動をしているかもしれません。機会があれば推し選手に新しい疑問を質問してみるのもいいかもしれませんね。
それでは、より楽しい競輪ライフを! 次回更新をお楽しみに!
佐々木恵理
Sasaki Eri
愛知県豊橋市出身。大学卒業後、システムエンジニアとして社会人を経験し、テレビ番組でガールズケイリンの存在を知って競輪選手を志願。T-GUP(豊橋ガールズケイリン育成プロジェクト)を経て、2016年に名古屋競輪場でレースデビュー、初勝利。アイドルと競輪を愛する、アイドルヲタクレーサー。