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前田睦生の感情移入

【コロナ禍にあって】365日のそれぞれの想いとメッセージ

2021/01/16 (土) 12:00 7

選手とファンはつながっている

武豊の率直な訴え

 1月7日、1都3県に緊急事態宣言が発出され、13日、それはさらに7府県に拡大された。選手、ギャンブルファンにとって、また昨年のような無観客の苦痛が伴う状況。ジョッキーの武豊は自身のブログで緊急事態宣言に際し「今年も競馬を継続させることで、ファンの皆さんの大事な娯楽となること」というメッセージを発した。

 昨年4月には、武は日本騎手クラブの会長として、競馬を継続開催できることへの感謝と支援活動について声明を出している。日本、また世界の情勢、その中において競馬の存在意義、ファンへの思いを直に伝えるものだ。何が起こっているのか、どうなってしまうのか、不安にさいなまれるファンに対しての直接のメッセージは、多くの人々の胸に届いたと思う。

 競輪界では大きな声明という形はあまりとられていないが、各選手が常時、思いを伝えている。和歌山競輪場で開催された岸和田記念を制した松浦悠士(98期=広島・30歳)も、優勝インタビューで「コロナが収まったら、出待ち、入り待ちとしっかり対応させてもらいたい」と率直な思いを口にしていた。

もどかしいほどの個々の思い

 松浦はコロナの騒動が起こる前、競輪場の入り口で待っているファンにできる限りの対応をしていた。個人で競輪のWeb動画を作っている人にも意欲的に協力。それは金子貴志(75期=愛知・45歳)らもそうだった。“競輪ファンをつなぎとめる”、またどんな角度からでも競輪ファンが1人でも増えれば、と願い行動していた。

松浦と清水とともにファンも歩んでいる

 松浦と清水裕友(105期=山口・25歳)は、『競輪にはたくさんの面白いドラマがある』と信じて頑張っている。彼らは結果を求めつつ、それ以上のものを見せてくれている。写真は昨年2月、豊橋で行われた全日本選抜の準決後のものだ。決勝は松浦が駆けて、清水の優勝。松浦は直線で接触して落車してしまった。再乗、ゴールはしたが、意識は朦朧。医務室に運ばれた松浦は介抱に来た選手に「裕友はどうでしたか」と聞いた。そう聞いたことは覚えているそうだが、その後のことは覚えていないという…。

 医務室は敢闘門のすぐ側にあり、清水は表彰式を控える時、時間を確認しては医務室に足を運び、松浦の容態を確認していた。

競輪選手2300人は同じ

 昨年末から、トップ選手の話を取り上げることばかりだが、競輪選手約2300人(男女)にはそれぞれにドラマがある。その中の一人、井寺亮太(113期=福島・28歳)の思いを紹介したい。

井寺も目の前の戦いにすべてを捧げている一人

 長崎出身の井寺は、競輪選手を志し、横須賀で自衛隊員としての訓練を経て、試験に合格した。当時は、競輪ファンとして車券も買っていた。その井寺は昨年末のKEIRINグランプリ2020を見て…。

 平原康多(87期=埼玉・38歳)が番手の仕事をした意味が痛いほど分かる。それは、ファンの時以上。いや、ファンとして、また競輪選手としての両方の立場から見て、があった。「感動しました」。競輪が何を与えてくれるかを、再確認したようだ。

「ファンとしてを言えば、目の前に1億円がぶらさがっているわけですよ。でもそこで、ただ番手から踏むんじゃなくて仕事をしたでしょう。うお〜〜って」

 競輪界最高峰の戦いはグランプリ。井寺はA級1、2班戦を戦う身。
「平原さんとまで、は言えないけど、自分なりにそういう戦いを見せたい。オレなんかペーペーですけど、1人でも見てくれるファンがいるのなら」。
平原の走りを見た後、自分のやるべきことを思い直した。それは選手みな、変わらない。目の前の一戦を戦うことが、すべて。

誰かに伝わるのならば…

 今、伝えたいメッセージ…。
走りでファンに何かを伝えられる、ということは無形の奇跡だ。競輪にはその奇跡が散りばめられている。その上で、『もっとできることを』とSNSなどを通じて選手たちがファンに思いを放っている場所もある。いろんな競輪選手のあり方を探って、今何が起こっているか、を感じとることができる。

 気になった選手のSNSなどを探って、日々の発信、ひとつ一つの戦いに照らし合わせる。365日の奇跡を、選手たちのメッセージを受け取ってほしい。


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前田睦生

Maeda Mutuo

鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。

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