2021/01/13 (水) 12:00 6
平原康多(87期=埼玉・38歳)にとって、1月14〜17日に開催される大宮競輪東日本発祥72周年記念(GIII・倉茂記念杯)は4連勝が責務となる。競輪のスター選手にとって地元開催は別物。「GI以上」と話す選手も多い。平原も無論、完全Vを目指すが、昨年末のグランプリと同じく、ただ勝てばいいとは思っていない。
平原が脇本雄太(94期=福井・31歳)をマークした衝撃は、関東勢にも大きなものがあった。その後、「自分が平原さんの前で走れれば」と若手選手から聞くこともあった。平原のために、の思いがある。関東をずっと引っ張り続けている平原のために…。平原としてはその気持ちはうれしいが、「その先に」を願っている。
2021年のグレード戦線は2大会を終えた。和歌山競輪場で開催された“岸和田記念”「岸和田キング争覇戦in和歌山」は12日に最終日を行い、松浦悠士(98期=広島・30歳)の優勝という結果だった。才迫開(101期=広島・28歳)の圧倒的な責任感がもたらした結末。松浦の体調は決して良くはなかったそうだが、まさにラインの力だった。また、和田健太郎(87期=千葉・39歳)…。
和田はグランプリ王者としての1走目を勝利で飾った。初日特選、正直、厳しい構成だと思った。だが、和田真久留(99期=神奈川・29歳)との素晴らしい連係で1着スタートを飾った。決勝は繰り上がりではあったが、3着で和田健のモットーである「車券に貢献する」4走を終えた。
千葉のグランプリ王者は海老根恵太(86期=千葉・43歳)以来になる。2009年、京王閣でのグランプリを制した海老根は、翌年1月熊本記念に参加した。年始の9〜12日。グランプリからの激闘の後、決して状態は良くなかった。初日3着、優秀8着で、当時の勝ち上がりプログラムでの準決B回りとなった。
その時に南関ラインで海老根の前を回ったのが桐山敬太郎(88期=神奈川・38歳)だった。その桐山の敢然とした攻めが、海老根の決勝進出につながった。和田健も今年、これまで以上に南関ラインの重みを知るだろうし、またその美しさを教えてくれると思う。
どのレースでも、ラインの力が大きな武器となっている。平原の立川記念の優勝も、アクシデントがあったとはいえ、関東3人が力を合わせた結果といえる。しかし、平原が見ているものは、目の前のレースだけではない。
ただラインに貢献するのではなく、ラインで上位独占、ラインでゴール前勝負、究極は先行で平原から逃げ切る走りをしてみろ、というところに至る。それは、関東が強くなる、関東が競輪を盛り上げる、という意味になる。平原が求めているのは、そこだ。ラインの戦い、が世の中に何かを伝えられると信じている。
大宮競輪場は元々、『大宮双輪場』と呼ばれるもので、歴史は古い。というより、日本最古の自転車競技場といっていい。1940年に戦争の影響で中止となった幻の東京五輪。その大会のために、ヨーロッパの競技場をもとに500メートルの楕円形の競技場が建設された。日本でも戦前から、ロードの大会など自転車競技の大会は人気があった。一度、大きな夢は戦乱のために破れ、今年…。新型コロナウイルスの影響は拡大するばかりで不安は募る。現在、トラック種目の代表内定選手を中心に沖縄で合宿が行われている。今はとにかく今夏の大会が無事に開催されることを祈るばかりだ。
昨年末の平塚グランプリの後も、少しずつ、競輪のドラマは進んでいる。東京五輪…。2021年、その1ページ、1ページを存分に楽しんでほしい。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。