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【ガールズグランプリ2025展望】佐藤水菜の偉業達成か、ライバルたちの逆襲か 史上最高賞金をかけた“女たちの頂上決戦”

アプリ限定 2025/12/21 (日) 12:00 16

平塚競輪場で12月28日から30日まで開催される「KEIRINグランプリシリーズ」。29日に行われる「ガールズグランプリ2025」に出場する選手の今年の戦いぶりを、デイリースポーツの松本直記者に解説いただきます。

ガールズグランプリ2024(撮影:北山宏一)

偉業か、逆襲かーー優勝だけが正義

 2025年のガールズケイリン総決算「ガールズグランプリ2025」が12月29日、平塚競輪場で開催される。今年で14回目を迎える本大会。優勝賞金は過去最高の1530万円(副賞含む)となり、2着は184万5千円、3着102万5千円、7着では67万円と、優勝だけが極めて大きな意味を持つ大会だ。

 ガールズグランプリの車番は、原則としてその年のGI優勝者が内枠(1番車)から順に与えられる仕組みだ。しかし2025年は佐藤水菜が4つのGIタイトル全てを優勝したため、1番車は佐藤で不動。これにより2番車以降については、1月から11月の「競輪祭女子王座戦」終了時点における選考用賞金ランキングの上位者から順に割り当てられることとなった。

昨年のガールズグランプリ出場選手(撮影:北山宏一)

 今年のGI戦線を席巻した佐藤水菜の偉業達成か、ライバルたちの逆襲か。平塚の夜に輝く女王の座を巡る戦いを展望する。

佐藤水菜、史上初の年間全冠制覇へ死角なし

 今大会の主役は佐藤水菜で不動だ。今年の戦歴は15走して14勝。4月のオールガールズクラシック、6月のパールカップ、8月の女子オールスター競輪、11月の競輪祭女子王座戦と、年間4つのGIレースを全て優勝している。唯一の敗戦は4月のGI準決勝、児玉碧衣の先まくりを捕らえることができず2着に敗れたのみと圧倒的だ。10月の世界選手権(チリ)でもケイリン金メダルを獲得するなど、世界レベルの脚力を誇る。

(撮影:北山宏一)

 モチベーションは「年間全冠制覇」のグランプリスラム達成。これは佐藤水菜しか狙うことができない尊い記録だ。GI全冠のため文句なしの1番車で登場し、逃げも視野に入れた「先行も辞さず」の構えで押し切りを図る。

 平塚グランプリは過去2回出場し、2020年は6着、2022年は落車再乗の5着と悔しい結果に終わっているだけに、今年こその思いは強い。茅ケ崎生まれで平塚競輪場は思い入れのあるバンク。きっちり力を出し切って2023年立川以来2回目の優勝へ力を出し切る。

児玉碧衣、復権へ新車投入で挑む

 2番車には賞金ランキング2位の児玉碧衣が入る。昨年4月のオールガールズクラシックを優勝して以来、モチベーション面の課題に悩まされていたが、今年に入って練習方法を改善したことで安定感が戻った。ワットバイク練習を1日も休まず続けることで力強さが増し、昨年の1着43回、優勝13回から今年は1着67回、優勝18回に伸ばし上昇カーブに乗っている。

(写真提供:チャリ・ロト)

 11月の競輪祭女子王座戦は準決勝で敗れ、直前の武雄は準優勝と良い結果を出せなかったが、グランプリでは巻き返してくるはずだ。トップに君臨する佐藤水菜に挑戦する立場を自覚し、攻撃的なレースで勝負するつもりだ。

 その秘密兵器として本番には新車「TS9」を投入予定。新車による上積みがあれば、2020年平塚以来4回目の優勝も見えてくる。

久米詩、キャリアハイで初戴冠へ

 3番車は賞金ランキング3位の久米詩。今年は年頭から追加参戦も断らず1年間走り続け、1着61回、優勝15回とデビュー以来のキャリアハイとなる戦歴を残した。12月の松戸でも完全優勝と良い流れを呼び込んでいる。

(撮影:北山宏一)

 平塚競輪場との相性は抜群で、2023年のコレクション優勝を含め、今年も4月、10月と普通開催で完全優勝を果たしている。今回が2回目のグランプリ参戦。持ち味である立ち回りのうまさを発揮して、初のグランプリ優勝を目指す。

梅川風子、打倒・佐藤水菜の一番手

 4番車は賞金ランキング4位の梅川風子。昨年10月の世界選手権を最後に自転車競技を卒業し、ガールズケイリンに専念した1年だった。

(写真提供:チャリ・ロト)

 昨年末の落車骨折明けから始まった2025年だが、胸椎圧迫骨折明けの1月熊本から始動すると、ケガの影響を全く感じさせないレースで白星を量産。8月の女子オールスターでの落車で人差し指を脱臼した直後にも完全優勝するなど精神力の強さを発揮した。以降は11月の競輪祭女子王座戦準決勝まで23連勝と白星を並べた。

 グランプリは過去2回準優勝しており、栄冠まであと一歩。現在の充実ぶりなら、「打倒佐藤水菜」の一番手は梅川風子になりそうだ。

尾崎睦、地元・平塚に捧げる執念

 5番車は地元の尾崎睦。ホームバンク平塚での開催が決まってからは、佐藤水菜や梅川風子らナショナルチーム勢に話を聞き、練習も生活も時間の許す限りともにするなど、優勝するためにできることは全てやってきた。

(写真提供:チャリ・ロト)

 過去の地元グランプリでは補欠、失格による権利喪失など精神的に大きなダメージを負った。昨年6年ぶりにグランプリの舞台へ戻り3着と健闘。2年連続5回目の今回は、地元バンクの応援を背に頂点だけを目指して全力で追い込んでいく。

坂口楓華、ケガ乗り越える“不屈の闘志”

 6番車は賞金ランキング6位の坂口楓華。3年連続4回目の挑戦となる今年は、春から夏にかけて仙腸関節周辺の痛みに苦しんだ。自転車から離れて考える時間を作ったことで秋以降に噛み合い、復調を果たした。

(撮影:北山宏一)

 しかし競輪祭女子王座戦決勝での落車で頭部を縫合手術。幸い骨には異常なく、グランプリ出走にゴーサインが出た。万全とは言えない状況でも、根性と負けん気の塊である坂口なら大丈夫。昨年のグランプリ、カマシ先行で見せ場たっぷりの4着と健闘したように、しっかり仕掛けるレースで優勝を狙う。

山原さくら、大外枠から一撃狙う

 7番車は賞金ランキング7位で滑り込んだ山原さくら。グランプリは2022年平塚以来3年ぶり6回目の出場となる。今年はGIでの活躍はできなかったが、普通開催できっちり結果を出した。

 運命の競輪祭女子王座戦は、賞金7位で前検日を迎えた。ライバルたちの脱落はあったものの、ギリギリの賞金争いを制して権利を獲得した。

(写真提供:チャリ・ロト)

 昨年10月には練習環境を求め、高知から山口支部へ移籍。自転車も長年使ったカラビンカからブリヂストンへ乗り換えて苦戦した時期もあったが、現在は完全に自分のモノにしている。自力一撃のパワーは健在、前回の平塚グランプリでは準優勝。大外7枠から優勝だけを狙って一発を放つ。


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松本直

千葉県出身。2008年日刊プロスポーツ新聞社に入社。競輪専門紙「赤競」の記者となり、主に京王閣開催を担当。2014年からデイリースポーツへ。現在は関東、南関東を主戦場に現場を徹底取材し、選手の魅力とともに競輪の面白さを発信し続けている。

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