2025/12/11 (木) 08:00 6
競輪祭の前のこと。「たまにはのんびり旅も悪くないか」なんて思いつきで、前から一度は行きたいと思っていた『知覧特攻平和会館』へ向かうことにした。せっかく行くなら、あっちへフラリ、こっちへフラリ。小回りのきく車を選んで、まるで自分が“放浪の旅人”に戻ったかのような気持ちでハンドルを握った。
ありがたいところは、旅先に同期があちこちに散らばっていることだよ。声を掛ければ快く迎えてくれる。『おう、来るなら言えよ!』なんて言葉を聞くだけで気分が上がる。久しぶりの再会、そして夜の語らいーー。出発前には想像しただけで胸が弾んだ。
ところが、この話をポン友に漏らしたのが運の尽き。『おれも行く!』と、しかも追加でもうひとりが加わり、気ままなひとり旅のつもりが、まさかの“友情三人旅”に。まあ、これはこれで賑やかで悪くなかった。ワイワイ言いながら目的地を目指すのは面白かった。こんな旅は修学旅行以来だったな。
そうそう、本題に入らねば! いよいよ残す記念も伊東と広島のふたつになった。伊東記念の看板どころはS班・岩本俊介に松浦悠士、そして清水裕友。ここはさすがに存在感が違う。今年、S班陥落となったが“意地とプライド”を見せてもらいたいところだ。
加えて、地元の深谷知広を筆頭に、中野慎詞、成田和也、山田英明といった実力派がズラリと顔を揃え、いかにも激戦の匂いが漂う。そして、忘れちゃいけないのが、このバンクと相性抜群の原田研太朗。まるで“台風の目”みたいな存在で、軽く扱うと痛い目を見るタイプだよ。
もはや“妄想枠外”の選手だろうが、125期の塩島嵩一朗はなかなか良い。4日間ずっと追いかけてみたくなる上昇気配を感じている。さらに高橋舜も、どこかでスパッと一発を決める可能性は十分。
地元勢では簗田一輝と格清洋介に注目だ。とりわけ簗田はキレ味申し分なし。人気に推されるだろうが、ここは狙う価値は大いにある。期末でもあるし、点数勝負に腹を括ってくる選手も少なくない。この時期は“背水の一発”を探して、大穴を狙ってみるのも面白い。
妄想になるかはわからないが、初日は3Rを狙っていくかね! まずは並びの整理から。初手は伊藤旭がスタートを取り、⑨東矢圭吾-②伊藤旭-⑥良永浩一の九州ライン、ここに三重コンビは⑧伊藤稔真-①伊藤世哉、後ろ中団は③原田研太朗-⑤北村信明の徳島コンビ、後方は北日本で④高橋舜-⑦五日市誠が構えて細切れ戦(⇐⑨②⑥・⑧①・③⑤・④⑦)となっている。
勝負どころで原田が押さえる。そこを高橋が叩いて主導権を取り(⇐④⑦・③⑤・⑨②⑥・⑧①)ってところだろう。この展開なら原田のまくり一発、北村の流れ込み③-⑤、五日市が切り替えての③-⑦、伊藤旭の強襲逆転まで③=②が本線か?
だが! 伊藤稔真がその上を叩きもがき合いなら、東矢が行って伊藤旭が抜け出す②-⑨もある。いや、ここが本線かも……! もう一捻りすれば高橋-五日市に続いて三重コンビ伊藤稔真-伊藤世哉が行ってしまうと、五日市の出番だね。高橋の残り⑦-④、伊藤稔真に乗る伊藤世哉への⑦-①。今回は困ったときの①②④⑦ボックスを妄想〆にしとこうかね。
さて、話を冒頭の旅の話に戻そう。いざ目的地の『知覧特攻平和会館』に足を踏み入れるとーー。口が動かなくなった。若くして国のために散っていった特攻隊員たち。その青年たちが家族へ、恋人へ、最後の思いを綴った手紙を読むと、胸が締めつけられる。
「この時代に生まれていたら、自分はどうしていただろうかーー」
そんなことまで考えさせられた。“人生の折り返し”をとうに過ぎた今だからこそ、『平和』という言葉が、ただの言葉じゃなく重みを持って沁みてくる。競輪を走ってきた人生も、こうして旅を楽しめる日常も、すべては平和の上に成り立っていると改めて実感した。先人たちのご冥福を祈りつつ、これからも穏やかな日々が続くことを願わずにはいられなかった。
吉井秀仁
Yoshii Hidehito
千葉県茂原市出身。日本競輪学校第38期卒。選手時代はその逃げるスピードの速さから「2週半逃げ切る男」と称され人気を集める。1978年競輪祭新人王戦を制し、翌年も小倉競輪祭の頂点に立つ。1980年の日本選手権は完全優勝、1984年オールスター競輪でも覇者となり、選手としての一時代を築き上げた。現役引退後はTV解説者やレポーターとして活躍、競輪場での予想会イベントやYoutubeのライブ配信なども精力的におこなっている。ファンからは「競輪客のような解説者」と親しまれており、独特のひらめきによる車券戦術を数多く披露している。
