2025/10/31 (金) 08:00 6
寛仁親王牌は嘉永泰斗の初優勝で幕を閉じた。『タイトルを取るにはライン戦!』これを見事に覆し、単騎で挑んだ結果だもの! 立派だし、価値があるよ。これで堂々、グランプリ出場の切符を手に入れたわけだ。素直に「おめでとう」と言いたいし、正直ちょっと羨ましい。
それにしても今回の寛仁親王牌で改めて思ったのは「高速バンク+小回り」ってやつは、スタートで勝負の半分が決まっちまうってこと。初手の位置取りがすべてとまでは言わないけど、割合はかなり高い。ラインの攻防は迫力満点で見ごたえがあったけど、後手に回ると万事休す。
「まだ展開の妙はあるんじゃないか」と期待しても、気がつけば虚しさだけが残る。レースを観ながら思わず「なにか秘策はないのか?」なんて独り言。だけど結局、答えは見つからないまま。むしろ単騎で一発狙いが決まったりして、たまげたよ! 残るGIは小倉競輪祭。グランプリ出場をかけた最後の椅子をめぐり、修羅場のような戦いが待っている。
さて、その前に四日市記念だ。S班は古性優作、眞杉匠、岩本俊介、松浦悠士、犬伏湧也。そこに深谷知広、寺崎浩平、浅井康太、山口拳矢、嘉永泰斗…。いやもう、これだけ並ぶと「スター大集合」と言いたくなる。四日市の街が一気に華やぐね。GI後につき、コンディションを整えるのは容易なことではない。現状維持がやっとだろ!
だが、そこはトップレーサーたち。確実に調整しているはず。手の内はお互いわかりきっている面々だし、最後は意地と意地のぶつけ合い。シンプルなガチンコ勝負だ。中でも注目は嘉永泰斗と犬伏湧也に……! 嘉永はタイトルホルダーとして追われる立場だし、存在価値を示すレースになる。そこを意識し過ぎると裏目になるが、果たして。
一方で犬伏は、親王牌の悔しさをここでぶつけ、憂さを晴らすしかない。ガツン! と意地を見せてもらいたいね! さて、舞台となる四日市バンクは、見なし直線62.4mの長さを誇る。これがまた曲者でね。追い込み陣にとっては「ようやく俺の出番だ!」とニンマリできる舞台。差し・まくりからの大外強襲、一発逆転のチャンスが広がる。「あぁ! 来るぞ来るぞ!」と立ち上がる瞬間が見られるはずだ。
攻略を考えると…確実に妄想枠とは言えないが河端朋之と鈴木竜士には注目したいね。スピードとダッシュ力を武器に大外を一閃! 想像しただけでニヤけてしまう展開だ。星野洋輝の自在戦もここでは面白いし、坂本和也の切れ味ある差し脚も不気味な存在。
そして忘れちゃいけないのがベテラン勢。五日市誠に山下渡。「まだ俺たちは終わっちゃいない」と言わんばかりの一発を秘めている。こういったベテランの存在が、レース全体に奥行きを与えてくれるんだ。結局のところ、四日市記念は長い直線をどう攻略するかに尽きる。誰がどう仕掛けるか、誰がコースを見極め突っ込むか。そこに選手の性格や気持ちがにじむ。だから競輪はやめられない。
山下が絡む4Rをピックアップしておこう。まずは、いつものように並びの整理からだね。①橋本優己-⑤上田国広-⑨伊藤世哉の中部ライン、③中島詩音-⑦山下渡-④吉田勇人の関東勢、⑥鈴木陸来-②竹村勇祐-⑧安部貴之の混成ラインとなっている(⇐①⑤⑨・③⑦④・⑥②⑧)。
ここは橋本が力でねじ伏せる形が妥当。中部の3車で好機に仕掛けて決着とみていい。展開はこうだ。橋本がスタートを決めて枠なり、鈴木、中島の順。後方から中島が押さえ、そこへ鈴木が叩きにくる。橋本はその動きを見ながら中島をけん制、一度突っ張って鈴木を受ける。これなら橋本の射程圏。中島に合わせて先まくりに出れば、上田との直線勝負で①=⑤、鈴木に乗る竹村の①-②も十分。同じ条件で山下との①-⑦までが本線だろう。
 さて、ここからが“妄想タイム”。中島が橋本を押さえ切って、鈴木を出させる展開。橋本は後方7番手で腹をくくる。中島がタイミングよく仕掛けていけば、山下とのゴール勝負で⑦=③。だが、竹村のブロックで中島が浮いたら話は別だ。山下がコースを見極め、タイミングよく強襲して頭まで突き抜ける。そのときは⑦-④⑤②⑧あたりで決まるだろ。これを妄想の〆にしようかね。
吉井秀仁
Yoshii Hidehito
千葉県茂原市出身。日本競輪学校第38期卒。選手時代はその逃げるスピードの速さから「2週半逃げ切る男」と称され人気を集める。1978年競輪祭新人王戦を制し、翌年も小倉競輪祭の頂点に立つ。1980年の日本選手権は完全優勝、1984年オールスター競輪でも覇者となり、選手としての一時代を築き上げた。現役引退後はTV解説者やレポーターとして活躍、競輪場での予想会イベントやYoutubeのライブ配信なども精力的におこなっている。ファンからは「競輪客のような解説者」と親しまれており、独特のひらめきによる車券戦術を数多く披露している。