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「完全Vは偶然じゃない!」高木真備が読み解くサトミナの“レースメイク力”と女子オールスターの裏側

2025/08/20 (水) 18:00 24

先日行われた「第1回女子オールスター」は佐藤水菜選手が圧巻の走りで完全V。ガールズ初のグランプリスラムも達成しました。元ガールズケイリン選手・高木真備さんにシリーズのポイントを振り返ってもらいました!

女子オールスター競輪で開催された「ガールズOGトークショー」(撮影:北山宏一)

■圧倒的強さの秘密は“レースメイク力” サトミナが自ら引き寄せた完全V

ーー記念すべき第1回大会の「女子オールスター」は佐藤水菜選手の完全Vで幕を閉じました。

 いやぁ…。本当にビックリするくらい強かったです。

ーー2着に5車身差をつけた決勝だけではなく、予選、準決勝もいずれも着差以上の完勝でした。

圧巻の完全優勝を遂げた佐藤水菜(撮影:北山宏一)

 500バンクは仕掛けどころの難しさはあるけど、力の差が出やすいという意見が選手からはよく聞かれます。脚力上位と言われるサトミナが、500バンクにもしっかり対応して力を出し切ったことで、こういう結果になったのかなって思います。

ーー3日間の佐藤選手の走りを見てどのような印象を受けましたか。

 改めてサトミナはレースメイクが上手だなと感じました。競輪は「初日に勝ったら優勝」というわけではなく、シリーズを通して結果を出すというのが大事になります。なので本当は一番の得意戦法とか切り札は、なるべく決勝まで取っておきたいところなんですけど、ほとんどの選手はそこまで余裕がなく、勝ち上がるために一戦一戦自分の得意な形に持ち込んでベストを尽くします。ただサトミナは“初日がまくりだったから次は先行で長い距離を踏もう”といった走りができるのが大きな特長だと思います。今回の準決勝も、もし初日に続いてまくりで勝ち上がっていたら、決勝は違った展開になっていた気がするんです。

女子オールスター競輪 12R決勝で2着と5車身の差をつけ圧勝した佐藤水菜(撮影:北山宏一)

ーー“先行もある”と周りの選手に意識させたということでしょうか。

 はい。もしサトミナが2日間まくりで勝ち上がっていたとしたら“あの位置から仕掛けてくるだろうな”と予測して、それに対してどう対応するかを考えると思うんです。ただ2日目に先行を見せていたことによって“緩めたらカマされる”とカマシの警戒もしなくてはいけなくなりました。自力選手の気持ちとしては、もし緩めたところをサトミナにカマされてしまったら厳しいので“なるべくサトミナより前の位置にいたい”、“もしカマしてきたら飛びつけるようにある程度踏んでおかないと”考えるのではないでしょうか。実際に今回の決勝は最終ホームで(児玉)碧衣ちゃん、仲澤春香さん、太田美穂さんの自力選手3人が、それぞれ前に踏み込んでいました。その結果3人とも脚を削られ、隊列が短くなったタイミングを逃さなかったサトミナがまくって決着を付けました。でもこれは、たまたま展開が向いたのではなく、2日目に先行したことによってサトミナが自ら好展開を手繰り寄せたものだと思います。

ーー強い選手に展開が向く、というのはよく見る光景ですが、そういった心理も影響しているのですね。

児玉碧衣が3連覇を達成した平塚でのガールズグランプリ(photo by Shimajoe)

 ガールズグランプリを3連覇していた時とかの碧衣ちゃんがまさにそんな感じだったと思います。みんなが碧衣ちゃんの動きを意識しながらソワソワしてムダ脚を使ってしまったり、逆に無警戒だとカマされてしまったり。そして気付いたら碧衣ちゃんが仕掛けやすい展開になっていたということがよくありました。ガールズケイリンは本当に心理戦なので…。少し力の抜けた選手に対して落ち着いて対応できるか、でも落ち着きすぎてもよくない。そのあたりを上手にコントロールできるかが、今後サトミナ攻略のひとつのポイントになるかもしれません。

■存在感を発揮した柳原真緒の冴え渡るレース勘

ーー今大会で動きが気になった選手などはいましたか。

 柳原真緒選手のレース勘が良かったように感じました。

女子オールスター競輪で存在感を発揮した柳原真緒(撮影:北山宏一)

ーー柳原選手は今回も含めて今年のGI3回全て決勝に進出しています。

 今回は特に内容が良かったと思います。ヤナギは自力もあるしマーク戦も上手な選手です。なので、例えば今回の準決勝だったら、梅川風子選手や太田りゆ選手をマークするか、前々から先まくりを含めて自分でタテに踏む作戦っていう選択肢があったと思います。その中でヤナギは自らSを取って太田美穂選手を迎え入れる「前々勝負」に出ました。まくりの鋭い選手が後ろにいる中で先まくりを狙うというのは、飲み込まれてしまうリスクがありますし自信がないとなかなかできません。それでもヤナギは前の位置から組み立てて、それが結果的にアクシデントにも巻き込まれず1着につながったのかなと思います。レース勘や位置取りに対する自信はいつも以上によかったと感じました。

ーー確かに今シリーズの柳原選手は存在感がありましたね。

 今年に入ってからの柳原選手はGIで成績こそまとめていましたが、どちらかというと展開が味方していたり、誰かの仕掛けに乗ったりというものも多かった気がします。ただ今回は自らレースをつくったり、位置を取って勝負して自らつかんだ良い着順だったので、すごく価値のある結果だったのかなって思いました。

ーーあと太田美穂選手は今回でGI初優出を決めました。

GI初優出を決めた太田美穂の魅力は柔軟に攻められること(撮影:北山宏一)

 太田選手は先行を基本に攻めながらも、“何が何でも先行”という感じではなく柔軟に攻められるのが魅力かなと思います。初日に一車受けて番手まくりを決めたように、先行するつもりで踏みつつ、それを上回るスピードで来た選手に対してはそれを出して対処することができるのは大きな武器だと思います。準決勝も駆ける気持ちがあるからこそ前受けを選択したのでしょうし、後ろでけん制し合っているのを見て覚悟を決めて先行し、アクシデントがあったとはいえ、逃げてGIの準決勝を突破したのはすごいことだと思いました。

■盛り上げていたのは選手だけじゃない! 大集合した元ガールズ選手

ーー真備さんも大会中、CS放送の解説を務めたりと開催に携わっていましたね。やっぱり特別な思いはありましたか。

 そうですね。本当に感慨深いものがありました。私が現役の頃に単発レースとして始まった時は、男子のGI開催中に1Rだけ走らせてもらう感じでした。もちろん、その1Rに出させてもらうというのは特別感もあってうれしかったですが、こうやってガールズのためのGIができて、お客様もガールズケイリンを観るために本場まで足を運んでくださっているので、ありがたいですしすごいことだなと強く思いました。あと当時は格付けが「FII」だったんです(苦笑)。格付けでヤル気が変わるわけではないですが、それでも正直、時々「これってFIIなんだよね」って選手間で話すことはありました。でも今は立派な「GI」格になりましたし、ここまで大きくなったのかぁとうれしく思いました。

ーー真備さん以外にも多くの元ガールズ選手たちが女子オールスターを盛り上げていましたね。

(左から)高木真備、日野未来、石井菜摘、福田礼佳(撮影:北山宏一)

 はい、大会期間中にはたくさんのOGたちに会うことができて、それもうれしかったです。栃木でデビューした福田礼佳ちゃんや石井菜摘ちゃんにとっては地元の大会でしたし、礼佳ちゃんはインタビューも初めてと思えないくらい上手にやっていましたよね。他にも日野未来さん、山口真未さん、野原美咲ちゃんにも会えましたし、それぞれが活躍していてすごいことだなと感じました。元選手が大勢集まるというのも今までなかったので、私にとっても有意義な3日間でしたし、こうやってみんなでガールズケイリンを盛り上げていければいいなと強く感じました。

ーー最後になりますが、真備さんからお知らせはありますか。

 9月に入ったら「わんにゃんフェスティバル」を開催する予定です。ほかにも「やりたいこと」が少しずつ形になりつつありますので、詳細が決まり次第改めてお知らせいたします。みなさまぜひお楽しみに!

(※文中敬称略)



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高木真備

Takagi Makibi

元ガールズケイリン選手(106期)。2014年に奈良競輪場でデビューし、玉野競輪場で初優勝する。2016年のガールズケイリンコレクションでファン投票1位を獲得して、優勝。同年末にガールズグランプリ初出場を果たす。2020年には、特別競輪ガールズケイリンフェスティバル(いわき平)で完全優勝し、同年のガールズケイリンコレクション(伊東)も優勝した。ガールズケイリングランプリ2021で悲願の優勝を果たし、2022年4月に引退。現在は動物保護活動をしている。

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