アプリ限定 2025/01/03 (金) 18:00 18
2025年1月4日、松戸競輪場で行われる「オッズパーク杯(FII)」でデビューする通算5人目の早期卒業生・市田龍生都。タイトルホルダー・市田佳寿浩氏を父に持つサラブレッドであり、2025年からスター街道を爆走する可能性がきわめて高い“超ド級”の逸材だ。今回は市田へのインタビューとともに、過去4人の早期卒業選手との在所中のデータ比較をお届けしたい。(取材・構成 netkeirin編集部)
2024年12月23日、日本競輪選手養成所では市田龍生都の早期卒業証書授与式が行われた。同日午後にはJKA本部にて会見が行われ、デビュー戦が松戸開催に決定したことが発表された。会見終了後、市田に話を聞いた。
ーー早期卒業おめでとうございます。
市田 ありがとうございます。
ーー今どんな気持ちですか?
市田 養成所の生活が楽しかったので、仲間と離れてさみしいです。強い候補生たちと鍛えることができて、HPD(ハイパフォーマンスディビジョン)の良い環境でトレーニングに対する考え方も良い方向に変化しました。本当に良い毎日を過ごせたなあと思っていて。だから今の気持ちはさみしいです。
ーー養成所生活は厳しいと聞いていますが、楽しかったのですか?
市田 はい。特定の出来事がどうのってわけではなく、日常生活が本当に楽しかったです。日常と言っても“何もない日常がない”という感じで。苦楽をともにするメンバーと毎日自転車の話で高め合い、テレビや新聞を見て世間話をして。仲間と過ごした毎日は最高でした。
ーー(力を込めて“楽しかった”という姿を見て)有意義だったことがすごく伝わってきます。
市田 そんな毎日の中で早期卒業を決めたので、127期の先頭に立って走るつもりで頑張っていきたいです。
ーー養成所で培ったものは?
市田 自分は1kmTTを専門にしていて、大学時代は好タイムで走れていました。だから入所してすぐの頃を思えば「難なく先行できるだろう」と考えていたんです。でも競走訓練では簡単にはいきませんでした。いろいろな“プロ選手”と走る上で、各選手さまざま考えることがあると思いますが、先行して勝ち切るためには考えを深めていかなければならないことを学びました。競走訓練でどんな先行をすればいいのか、どんな先行をすれば勝てるのかをたくさん考えました。このあたりを深く考える経験がデビュー前にできたことは本当にデカい学びだったと思います。
ーーなるほど。
市田 教官から『自分が思っている以上に脚はあるから、自信を持ってやりたいことをひとつ決めて、それをしっかり突き通せるような考えでやってみろ』と言われたんです。具体的にいえば「縮こまったレースではなく思い切ったレースをやってみたら?」という意味合いでかけてもらった言葉です。これは心に残っています。
ーーデビューが年明け4日からの松戸開催に決まりました。
市田 精一杯走ることを心がけたいですね。早期卒業の市田龍生都だぞ、というのを見せつけるようなデビューがしたいです。
ーーどんな走りを見てもらいですか? ご自身の武器を教えてください。
市田 トップスピードに達してからの中高速域の持久力を見てもらいたいです。ジャンから出て行って速いペースを保ちながらゴール線を駆け抜けて押し切れるようなレースを目指しています。そういうポイントを見てもらいですね。
ーー長い距離を踏み上げる先行スタイル、楽しみにしています。
市田 期待が7で不安が3です。いや、8対2くらいかな。だいぶ期待の方が大きいです。でも10ではない感じです。
ーーいよいよプロ選手として「賞金」も手に入れます。使い道とかは決めていますか?
市田 いえ、決めてないですね。でも1発目の賞金は親への恩返しに使いたいと考えているので、相談して何かを贈りたいと思っています。初戦の松戸、頑張ります。
ーーデビュー以降、将来的な展望はありますか?競輪選手になって楽しみなことはなんでしょう?
市田 どれくらい強くなれるのか、ですね。自分が成長していくことが楽しみです。近畿地区の先輩たちは強い選手ばかり。先輩達からも学びながら走っていきたいですし、その中で成長していきたいです。
ーー早期卒業も名前が刻まれるひとつの「記録」だと思います。今後レースを走る上で記録への意識などはありますか?
市田 ありません。結果や記録よりも自分の成長に意識を向けています。昔から自分がどうあるべきかを考えて、いつも成長を望んでいます。そうやって行動すれば自ずと結果がついてくるという考え方をするので。だから本当に「記録を作るぞ、結果を出すぞ」と思っていなくて、「もっと強くなるぞ」という意識でいきます。
ーー父・佳寿浩氏とはお話できましたか? 何か言葉をかけられましたか?
市田 「頑張れよ」と言われました。競輪に関することはサポートするから、という言葉をかけてもらいました。
ーーさいごに競輪選手として成し遂げたい目標を教えてください。
市田 競輪選手の父に憧れて選手を志しました。目標は父を超えることです。自ずと「グランプリ優勝」がこれからの競輪人生の目標になっていくと思います。その目標に近づくためにも早くS級に昇級して多くのことを学びたいと考えています。
インタビューでは真っすぐに前を向いてハキハキと応じてくれた市田龍生都。その語り口からは今後の競輪人生への期待と自信にみなぎっていた。松戸のデビューが楽しみでならない。最後に市田龍生都の在所時データをこれまでの早期卒業生(菊池岳仁、寺崎浩平、中野慎詞、太田海也)のものと比較して、今後について考察する。
選手名/種目 | 200m | 400m | 1000m | 3000m | 現所属級班 |
---|---|---|---|---|---|
寺崎浩平 | 10秒33 | 21秒99 | 1分7秒53 | 3分48秒00 | S級1班 |
菊池岳仁 | 10秒56 | 21秒88 | 1分4秒05 | 3分39秒43 | S級1班 |
中野慎詞 | 10秒69 | 22秒23 | 1分5秒93 | 3分47秒58 | S級2班 |
太田海也 | 10秒52 | 22秒08 | 1分5秒37 | 3分41秒03 | S級2班 |
市田龍生都 | 10秒61 | 21秒84 | 1分5秒49 | 3分42秒09 | A級3班 |
上記の表は養成所記録会のタイム成績である。市田龍生都は400mTTで養成所の歴代記録を打ち出している。これまでの早期卒業選手と全体比較して見ると200mは4位、400mは1位、1000mは3位、3000mは3位という成績である。 全体比較ではなく市田と各選手を比較したものをまとめる。
・寺崎浩平には200mで劣り、400m・1000m・3000mで優る
・菊池岳仁には200m・1000m・3000mで劣り400mで優る
・中野慎詞にはすべて優る
・太田海也には200m・1000m・3000mで劣り400mで優る
在所時のタイム記録であり、レースの強さを表すものとイコールにはできないが、すでにS級選手としてGI戦線で活躍している過去の早期卒業選手たちと同等のポテンシャルということは容易に読み取ることができる。寺崎、菊池、中野、太田らのデビュー後の動向から、市田の初期段階の活躍を想像してみたい。
選手名 | |
---|---|
寺崎浩平 | デビュー戦から18連勝でS級特別昇級 S級優勝の最速記録(デビュー79日)を樹立 |
菊池岳仁 | デビュー戦から13連勝 1年8か月でS級初優勝 ヤンググランプリ2022優勝 |
中野慎詞 | デビュー戦から18連勝でS級特別昇級 5か月でS級初優勝 デビュー戦から30連勝の歴代記録を樹立 |
太田海也 | デビュー戦から11連勝 10か月でS級初優勝 ヤンググランプリ2023優勝 |
いずれの選手もデビュー後すぐ頭角を現し、トップ戦線へものすごい速度で上り詰めている。市田龍生都もデビュー後しばらくは無傷で連勝していくことだろう。“超ド級”の逸材の2025年から目が離せない!
netkeirin特派員
netkeirin Tokuhain
netkeirin特派員による本格的読み物コーナー。競輪に関わる人や出来事を取材し、競輪の世界にまつわるドラマをお届けします