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【未来の競輪スター候補】“超逸材×サラブレッド”が抱くオンリーワンの夢「憧れているからこそ絶対に超えたい」/市田龍生都候補生

アプリ限定 2024/06/07 (金) 18:00 24

『競輪選手になるために、そして夢を叶えるために』今年は第127回生として男子72名、第128回生として女子21名の候補生たちが日本競輪選手養成所に入所し、2025年のプロデビューを目指している。この時期、“未来の競輪スター候補”と題して毎年お届けしている本シリーズだが、今年は7名の注目候補生へインタビューを実施した。今回は127期市田龍生都(いちだ・りゅうと)候補生を紹介する。(取材・netkeirin編集部)

“不死鳥”市田佳寿浩氏を父に持つ127期・市田龍生都候補生

 大学時代はインカレでケイリン、1kmTTで3連覇、2023 全日本選手権トラック(エリート)でも1kmTTのチャンピオンになっている市田龍生都候補生。父・佳寿浩氏への思いやデビュー後の夢などについて話を聞いた。

ーー幼少期に父・佳寿浩さんの選手としての姿を見て、競輪はどのように映っていましたか?

 最初は「父の仕事」という認識しかありませんでした。お客さんが観戦しているところでレースを走る職業、という感じで(笑)。観ているままの映り方でしたね。

ーーなるほど(笑)。特別な見え方ではなかったのですね。

 はい。父がレースで勝つ姿を見てかっこいいなと思ったりはしました。でも当時を今思うと運動会を応援する感覚に近かったような気がしますね。

ーーお父さん以外の選手で気になる選手はいましたか?

 いえ、父以外の選手を全然知りませんでした。村上義弘さんや博幸さんたちが宴会をしている場所に父と一緒に行ったことがあるんですが、当時は「テレビで走っている人」のようなイメージしかなかったです(笑)。父の周りにいる選手のみなさんがとても優しくしてくれたことを覚えています。

ーー市田候補生は高校卒業後、大学に進み自転車競技に打ち込みました。この時プロに進む選択をしなかった理由はあるのでしょうか?

 この時期に父から競輪選手になる覚悟を問われたことがあるんです。「プレッシャーに耐えられるのか」とか「落車やケガの危険だってある」とか「選手になって成功することができるのか」とか色々な問いかけがありました。

 その時に「やれる!」という自信もありましたが、同時に、本当にわずかですがどこか臆するような、迷うような気持ちもあったんです。加えて僕は自転車競技で1kmTTに打ち込んでいたのですが、この競技が好きでもっと高みを目指したい気持ちもありました。

 総合的に考えて、もっとフィジカルを磨いたり、自分でやっていく力をつけたりすべきだと考えて、大学の道に進もうと決めました。

ーーなるほど。覚悟の部分、競技への思いからタイミングではないと判断したのですね。

 はい。

高校卒業時、競輪の世界に飛び込む覚悟を問われてわずかに迷いを感じたと話した

ーー大学時代はインカレ1kmTTで3連覇を果たすなど輝かしい実績の数々を残しました。さきほどの話で「プレッシャー」という言葉が出てきましたが、“市田ジュニア”に加えて“超エリート”といった視線も集めていますが、重圧はありますか?

 全然エリートだなんて思っていません。まだまだです。“市田の息子”みたいなプレッシャーがないわけではないんですが、それと同じくらい誇りとか尊敬の気持ちも感じている状態です。それに父は憧れの選手のひとりではありますが「僕は僕」とも思っているので、ネガティブな感じはまったくないです。憧れの選手だからこそ、追いつきたいし越えていきたいという気持ちは強いです。絶対に越えたい。

ーー絶対に超えたい、の言葉に力が込められています。

 はい、僕の夢のひとつです。GIやKEIRINグランプリに出て優勝したいとか、選手になる上でいろいろあると思うんですけど、そういうのとは違うベクトルで思っていることなんです。

ーー市田候補生にしか持てないオンリーワンの夢ですね。応援しています。

 頑張ります。

ーー市田候補生はタイムを見てもすべての能力に長けていると思います。ひとつ誰にも負けないという部分を挙げるとすれば、どこでしょうか?

 ライバルたちはみんな強いです。みんなに負けたくない気持ちがあります。人とちょっと違うのかもと自信を持って言えるところは、分析とか考察の部分かなと思います。

ーー分析や考察に自信…? どういうことでしょうか?

 同期の人達と「体のどの部分に意識を置いて自転車に乗ってる?」とか意見交換をすることがあるんです。「ケツとハム(ストリングス)を意識して乗っているよ」みたいにやりとりします。そういうやりとりの中で1つ2つ僕の考察が多く、深いことがあって。そういう考える力に自信はあります。

ーー成長・進化する上で大きなアドバンテージになりそうです。

 延々と考えていられるんです。ケツとハムは意識しているけど、その際の体幹や腕の引きなども重要とか、それでも足りない部分はどこか?それをどう補うか?みたいな“付け足し”をしながら、繰り返し延々と自問自答し続けられます。

ーー目指している戦法・レーススタイルはありますか?

 今はまったく考えていないです。自在性を持っていつでも飛び出していけるような父のようなスタイルもできるようになりたいですが、それは後々の話と言うかまだ先の話と思います。最初のうちは先行して活躍してレースを覚えることに集中したいです。

ーー少し話を変えて、市田候補生の趣味とか娯楽について聞いてもいいですか?

 料理が好きです。大学を卒業して養成所に入るまでの準備期間は、練習あがってから家族の昼ご飯を僕が作っていました。やっていくと結構楽しくて。夜に自由時間を必ず設けるんですが、料理本を読んでレシピを学んでいました。

ーーご家族からの評判はどうでしたか?

 正直に言ってくれと感想を聞いて「味が薄い」とか言われることありましたね(笑)。

ーー自由時間を必ず設けているんですね。

 はい。一日のうちにやるべきタスクを出して、それを一気にやるようにして、夜の2時間前後くらいは自由時間にしていました。料理以外だと「モンスターハンター」というゲームをやり込んでいました。

ーー何も考えずにやる趣味よりも追求型の趣味を好む感じがします。市田候補生の性格でしょうか?

 たしかに追求が好きかもしれないですね。昔から集中したら止まらないと周囲にもよく言われます。面接や作文などで長所を書く欄があると思うんですが、「集中力」と書いています。

ーー今日はたくさんの話をありがとうございました。最後に養成所生活の意気込みをお願いします。

 養成所は厳しい部分もあると思うんですけど、楽しく競輪を学ぼうという一心です。何が大事なのかをしっかりと見極めて、立派な競輪選手としてデビューできるように頑張っていきます!

インタビュー取材翌日、市田候補生(右)はゴールデンキャップを獲得した。写真左は丸山留依候補生(写真提供:公財JKA)


 第1回記録会でゴールデンキャップを獲得しただけでなく、200m、400m、1000mのタイム計測で一番時計を叩き出した市田候補生(400mは養成所記録更新タイム21秒84)。夢と語る“親父越え”を将来どう成していくのか?デビューがとにかく楽しみになる完全に“規格外”と表現すべき逸材だ。

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