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佐藤慎太郎“101%のチカラ”

【佐藤慎太郎の展望】どんな時も“何を見つけられるのか”は未知数である

2024/11/30 (土) 18:00 16

今年ラストGIシリーズ競輪祭を走り終えた佐藤慎太郎(撮影:北山宏一)

 全国300万人の慎太郎ファン、netkeirinをご覧のみなさん、48歳になりました佐藤慎太郎です。競輪祭で今年のGI戦線を走り終え、残念ながらS級S班の座は守り抜けず。でも「佐藤慎太郎、失意の底に…!」みたいな感じではなく、冷静に色々なことを受け止めている。今月はそのあたりを取りとめもなく書いていく。

慎太郎ファンの声

 小倉の競輪祭に乗り込み1ミリも諦めずにレースを走っていたわけだが、慎太郎ファンのみなさんの声には存分に励まされ、支えられていた。その上、S班陥落が決定したその後も労いや激励の言葉を多数受け取っている。

 これを書き始める少し前にも選手会を経由して手紙が届いたんだが、『S班じゃなくても応援するからね』という内容の言葉が綴られていた。SNSでもそんな声掛けを頂戴した。本当に感謝しかない。そしてみなさんに感謝するのは当たり前の話であって、それと同じく、改めて競輪選手としての姿勢を評価してもらっていることに心が引き締まっている。

 どこで走ろうが“変えてはいけない姿勢”があるということ。どれだけ自分を高めていけるか日々追求することや最後まで諦めずにゴールめがけて突っ込んでいく姿勢。そういう姿勢、気持ちがいかに大事で、いかにみなさんに届いているのかを知る。競輪選手として本当にありがたいことだと思っています。

47歳として最後のシリーズ京王閣記念では2日目と最終日に1着、悪天候の中でもファンが駆けつけ激励する声や慎太郎を笑わせるような声が飛び交った(撮影:北山宏一)

 しかし、オレは勝負の世界に身を置いている張本人なので、姿勢を評価してもらうだけで満足してはならない。勝ちたいという気持ちや強くありたいという気持ちを忘れずに精進することがオレの商売だからね。格とかタイトルとか、そういうものが存在している以上は、そこにしっかりと向き合っていかなければ。そして結果で応えなくてはなるまい。

 まあ、慎太郎ファンのみなさんの声に支えられているわけで、「落胆してやる気が起きない」なんて事態にはならんのだわ。来年はより一層難しい戦いが待っていると思うが、みなさんに楽しんでもらえるように競輪を全うするからよ。引き続き応援のほどよろしく!

白旗は掲げられない

5年間S級S班に君臨した佐藤慎太郎が見ている“今の競輪”とは(撮影:北山宏一)

 さて、今年ここまでずっといい走りをしているわけでも納得して走っているわけでもなく、まだまだ自分に力不足を感じている。だが、このタイミングで言えば強がりに思われてしまうことを恐れずに踏み込んだ表現をすれば、オレの力は『そこまで落ちていない』んだよね。それでも成績の浮き沈みが激しくなってしまったのは周りの選手レベル、競輪のレースレベルが上がっていることに理由があると分析している。

 気持ちでカバーしてきたことが、気持ちでカバーしきれないと感じた場面もあったね。でもこれは敗北宣言ではなく、白旗を掲げるには至っていない。対応していきたいし、対応できる範囲にあるレベルだと考えている。決して威勢のいい強がりではない。だから、来年このままガタガタっと落ちていくのか、それとも踏み止まれるのか、S班というアドバンテージを失いながらもしがみついていけるのか。正直、楽しみではある。楽しみっつーか、新しい刺激に出会えそうだなって感じが近いのかな。

 気持ちでカバーしきれないなら、物理的にレベルアップしなければならないわけだけど、肉体的な超進化はさすがに求められない歳だ。自転車機材と向き合い、戦い方と向き合い、1レース1レース物凄い速度で進化する競輪に対応していくほかないだろう。限界はたしかに気のせいだ。だが気のせいで済まされない限界もあることは受け入れていく。いずれにせよ、トータルで自分の限界を引き上げて戦うしかねえってこと。白旗? そもそもどこ探したって持ってねーや(笑)。

競輪祭は2走目ゴール線付近で落車、3走目で勝ち上がりを逃すも、4走目も“変わらぬ格”を引っ提げて発走機へ。アクシデントにより完走はかなわなかったが、この漢の辞書に白旗の文字はない(撮影:北山宏一)

何を見つけられるかは未知数

 とはいえ、冷静に考えて失うアドバンテージは結構デカい。オレの場合、歳を重ねてからのS班ってのもあって、そこに助けられていた部分は相当ある。GIの出場権が確実に与えられることだったり、特選スタートでシリーズ入りできることだったり。“シード”的な制度の恩恵が受けられなくなるのは率直に難しいことになるだろう。この辺りは甘く考えず、不安に感じておくくらいがちょうど良さそう。どうやってトレーニングメニューを組もうかと考える時から予選が始まってるイメージ感だ。

 そういう難題に立ち向かうって意味では、今年は大事な収穫があった。オレはずっと自転車のセッティングに興味がなく、「自転車どうこうじゃなくて肉体が限界を超えればいい」という考え方だった。しかし、昨年ごろから一気に進化していく競輪界に身を置いたことで「自転車を気にかけて自転車が進むなら、それもやらなくてはいけないんじゃないか?」と自然に受け入れるようになっていった。もちろん、肉体を鍛えて、自転車にも意識を向けて取り組んだ方が走力が上がることなど、わかっていた。知識の上ではずっと前から理解していた。

レースを振り返り現場の記者陣と意見を交わしている慎太郎(撮影:北山宏一)

 でもこの1年、心からの実感を込めて、肉体の維持向上だけに取り組むだけではダメだと自然に認められるようになっていった。自転車を変えて、寸法を変えて、パーツを変えて。そこで発見できることにはいつも期待があった。

 来年のオレが何を見つけられるかは未知数だ。でも探していく。それがシード権のアドバンテージを埋めるものになるか、レベルアップのヒントが存在してるかすらわからない。でも未知数だからきっと面白い試行錯誤になるだろう。

 所属級班が変わろうが、競輪選手なので、どの立ち位置で走っても勝ちに向かっていきたい気持ちは何も変わらない。何を見つけられるかは未知数。どんな時もどんなこともやってみなくてはわからない。それが今言えるすべてじゃないかな。

可能性がある限りダメージを恐れずに勝利へ向かって突っ込んでいく(撮影:北山宏一)

さいごに

 S級S班佐藤慎太郎を応援してくれたみなさんへの感謝と未だ気持ちが折れていないことは伝えられたと思うので、今月のコラムは仕舞にする。最後に心配をかけているから、ケガの状況だけ報告しておく。「頸椎棘突起骨挫傷」という診断がつき、今も痛みが全く引かず。落ちた瞬間に首にダメージ負ったのは理解していたし、担架の上で手とか指とか脚とかしっかり動くことは確認したんだけど。やっば首はダメだったわ。

 一昨年は2回連続で意識やら記憶やらが飛んじまう落車したから、今回はオレの意識があるのを確認して、小松崎大地が「安心した」って言ってくれた。命をかけて戦うと決めて走った競輪祭。本当に危ない落車をしたと思う。今回ばかりは自分を過信せずに、ここまでずっと突っ走った分、しっかり療養しようかと。トレーニングも少しの間は休みだな。身体を労い、これからどう戦うか整理する時間に充てようと思う。何も終わってないので。以上!

何も終わらない、むしろ始まり(撮影:北山宏一)

【公式HP・SNSはコチラ】
佐藤慎太郎公式ホームページ
佐藤慎太郎X(旧Twitter)

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佐藤慎太郎“101%のチカラ”

佐藤慎太郎

Shintaro Sato

福島県東白川郡塙町出身。日本競輪学校第78期卒。1996年8月いわき平競輪場でレースデビュー、初勝利を飾る。2003年の全日本選抜競輪で優勝し、2004年開催のすべてのGIレースで決勝に進出している。選手生命に関わる怪我を経験するも、克服し、現在に至るまで長期に渡り、競輪界最高峰の場で活躍し続けている。2019年には立川競輪場で開催されたKEIRINグランプリ2019で優勝。新田祐大の番手から直線強襲し、右手を空に掲げた。2020年7月には弥彦競輪場で400勝を達成。絶対強者でありながら、親しみやすいコメントが多く、ユーモラスな表現でファンを楽しませている。SNSでの発信では語尾に「ガハハ!」の決まり文句を使用することが多く、ファンの間で愛されている。

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