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松浦悠士の“真っ向勝負!”

【松浦悠士の復調】まだまだタテで動けることを実感して“やっと楽しくなってきた”オールスターはできる限りの走りをしたい

2024/07/31 (水) 18:00 30

 netkeirinをご覧のみなさん、こんにちは松浦悠士です。今回のコラムはサマーナイトフェスティバルと別府記念の振り返りを書いていきます。今月はやっと「楽しくなってきた」そんなコラムが書けそうです。それにしても、とにかく今年は暑いですよね。広島もめちゃめちゃ暑いです(苦笑)。身体を壊さないように練習メニューにも配慮しながら取り組んでいます。

サマーナイトフェスティバルに臨んだ松浦悠士(撮影:北山宏一)

準決勝、脇本さんに付けなかった理由

 はじめにサマーナイトの準決勝を振り返ります。去年のサマーナイト決勝で連係しているので、「脇本さんと一緒に」という番組だったと思います。でも、最近は僕の中で“新たな覚悟”を決めたところだったので、脇本さんには断りを入れて、自分でやる選択をしました。

 僕が今のスタイルのままであれば、「裕友の前で自力」とは言えないと考えました。裕友は中四国以外の選手には付きません。また、裕友に限らず、ですね。中四国で連係をする際に前を任せてもらう立場になった時、普段自力でやっている選手が気持ち良く回れるのか? と自問自答しました。「付けられるから番手で」ではあまり良くないと思いました。それがどれだけ魅力的な脇本さんのような選手であっても。

結果は悔しいが…やっと思うように乗れるようになった

 準決勝のレースですが、「北井さんを駆けさせたら苦しい」という前提がありました。特に松戸の33バンクですし、北井さんに先行させたくないわけです。でも僕は単騎。誰かに自分の考えを汲み取ってもらえないと厳しい戦いになります。そんな中、伊藤颯馬君がある程度汲み取ってくれたようなタイミングで動きました。

個々の思惑や双方の利害関係が複雑に交錯する競輪のレース(撮影:北山宏一)

 ただ、打鐘過ぎに伊藤君の落車があり、僕は咄嗟に外へ避けました。準決勝のポイントはあの場面です。あそこで勝負権を失ったと振り返っています。脇本さんみたいに圧倒的な脚力があれば話は別ですが、あの場面はリスクを冒してでも内に避けるべきでした。僕の脚力ですと、少しでも距離を走り過ぎないように考えなくてはうまくいきません。バック手前でも慎太郎さんの“あおり”を受け、かなり苦しくなりました。「落車を内に避けるか、外に避けるか」、敗因を探ればそれがすべてでした。

 ただ、しっかり体を動かせている感覚はありました。本調子かといえば、まだ練習量が不足していますし、脚力不足は否めません。でも、レースの中でようやく自分が乗りたいようには乗れるレベルになってきた実感があります。久留米記念以降、どんどん調子を戻している感覚です。

 前回のコラムでも書きましたが、宮記念杯は「悪くない」と思ってシリーズ入りし、競走で体がうまく使えないことがありました。でもその時とは違い、良くなっている兆しをはっきりと感じられました。その点を確認できたことはこの苦しい時期に大きな収穫だったように思います。また、最終日も嘉永君に突っ張られる可能性もある中で、しっかり踏んで出て行けましたし、思い切ったレースができました。

最終日、勇気を持って自分のやるべき走りを全うした(撮影:北山宏一)

 ただ、志田君がカマしてきた時に浅井さんが少し遅れて来る感じで、タイミングが取りにくかったです。バックを踏んで車間が空いてしまったし、最終局面では浅井さんの“あおり”も効きました。バックを踏んだ分、最後の余力にも影響しましたね。

 また、当日お腹の調子が芳しくなく、あまり体幹に力が入らなかったのも要因のひとつです。サマーナイトの結果は悔しいものになりましたが、次に繋げるための材料も発見しました。帰って調子をしっかりと戻して別府記念に備えました。充分な練習で思うように詰めていくことはできませんでしたが、別府記念はだいぶ手ごたえを感じながら走れたシリーズになりました。

一戦一戦に糸口を見つけ進んでいる(撮影:北山宏一)

同期で同学年の武藤君との連係

 別府記念の初日は同期で同学年の武藤君との連係でした。普段連係することはありませんが、連係したい選手のひとりでした。古性君もいる中、僕との連係を選択してくれたのは嬉しかったです。「バックは先頭で通過したい」と思ってレースを走りました。

 展開が向いたとはいえ、しっかりタイミングを逃さずに動けたかなと思います。自分が前回りでバックを取ったのはかなり久しぶりです。(※2023年の高松宮記念杯2走目以来)。一番の好メンバーが揃う初日特選で車券に貢献できたのも良かったですし、逃げて確定板に残れたという内容は自信になりましたね。シリーズを走る上で精神的にかなり楽になった感覚がありました。

レース後、武藤龍生は「松浦君は同期の英雄、全部が勉強になった」と語った(写真:チャリ・ロト提供)

戦いながらの調整がうまくハマった

 2日目はスタートでタイミングが取れず、出遅れる形になりました。号砲が経験したことのない早さで対応できませんでした。スタートの号砲については明確なルールもないため、すべて発走員のタイミングによるものです。当然、各競輪場によって“クセ”はあると思います。今節のタイミングはちょっと難しかったですね…。

 レースは後ろ攻めにはなりましたが、早めに動いてのリカバリーを考えました。吉田君か木村君がカマしていく展開になると思ったので、しっかりその後ろに付いていくプランで組み立てました。最初に位置を取れず苦しくはなりましたが、レースでは気づきもありました。準決勝はだいぶ良くなっていきましたね。

シリーズ中に見せる表情にも充実の色がうかがえた(写真:チャリ・ロト提供)

 準決勝当日、指定練習で思いつくことがあり、急遽ハンドル周りをいじりました。今節はハンドル周りをずっと試行錯誤してましたね。初日と2日目の指定練習は1周カマしたりしていましたけど、3日目は自力はやらず、風を切らないようにしました。普段は周回したり、ダッシュしたり、バラバラです。今回、セッティングも指定練習も、両方考えて変えたことがハマり、うまく調整できたと思います。

常に自転車を厳しい目で気に掛けている※写真はサマーナイト前検日のもの(撮影:北山宏一)

 実際にレースを走った感触も申し分なかったのですが、内容に反省が残ります。本当なら2コーナーで仕掛けなくてはいけないレースでした。ただ、周りがよく見えていたし、セッティングによって体をうまく使えている感覚もありました。3番手に飛び付くつもりはなかったのですが、地元ラインの動向を気にしていましたし、1車でも前にいなければならない中で、吉田君のダッシュが良かったので、踏み遅れないようにしていました。

 そんな流れで3番手の佐藤さんとちょうど合ってしまいました。下りられてかなり苦しかったのですが、なんとか凌ぐことができました。急遽の判断で反応しているので、このあたりの状況把握はよくできていたと振り返っています。

都度判断が功を奏したが、2コーナーで仕掛けたかったと振り返った(写真:チャリ・ロト提供)

 レースのことではないですが、3日目といえば雷の影響で8Rが中止になりました。僕は近くに雷が落ちた時にちょうど外にいたので、めちゃくちゃ怖かったですね。今開催のように選手紹介が一礼で終わったのは福井記念で経験がありましたが、それにしても開催中にあそこまでの雷に遭遇した経験はなかったです。とにかく怖かった…。

“楽しみになってきた” 次はオールスター!

 決勝も感触はすごく良かったです。2つの3車ラインは両方ともスタートが早いです。ケガをしてからスタートで出られないといったことがあるので、後ろ攻めになる可能性を十分に考えて臨みました。「引いてくれるかな」と考えて早めにフタをしに行きましたが、意外にも引いてもらえず。伊藤君も後ろを見ていて、切らせてもらえない感じだったので、ヨコに隙があった近畿ラインをキメに行きました。押し込むと同時に内が空いたので入って行けましたね。

 しかし、伊藤君はカカリもダッシュもすごく良かったです。そして優勝した阿部君は強かったし、何より冷静でした。僕のことを見てなかったと思いますが、阿部君はしっかりと前に踏んでいました。走る前から「状態も良さそうだし阿部君に出られたら厳しい」と思っていて、出る前に仕掛けないといけないと考えていましたし、阿部君がこっちを見ていなかったのでチャンスだとも思ったんですが…。3コーナー過ぎでは松谷さんにもいいのをもらっちゃいました。

 着に絡めなかったことは残念です。でもかなりカカっている相手に臆さず仕掛けることができたし、「まだまだタテで動ける」と自分の中で最確認できたことは本当に大きいです。

最後まで勝機を探り勝負した別府記念、決勝5着(写真:チャリ・ロト提供)

 体調面も4日間通して良かったですし、何より自転車に気持ち良く乗れている感覚がありました。現状の僕にとってベストに近いセッティングに合わせられましたし、このセッティングを基本にして、着実にトレーニングを積んでいこうと前向きにシリーズを終えることができました。やっと「楽しみになってきた」というのが正直なところで、優勝こそできませんでしたが、自信を感じられた良いシリーズになりました。

 次はいよいよオールスターです。僕にとってオールスター競輪は相性がいい大会で、今の状態の中、できる限り良い走りができるように準備していきます。感謝の気持ちを持って走っているのは決してオールスターだけではありませんが、オールスターは「ファンあっての競輪」というものが顕著に出る開催です。

 ドリームレースに選出されると、シリーズの勝ち上がりを考えてもアドバンテージがあります。そのアドバンテージを生かせるように頑張ります。そしてオールスター後は小田原記念なので、神奈川開催が続きます。この暑さですから体調管理に気を付け、しっかりと戦えるように気合を入れていきます。みなさん応援よろしくお願いします!

読者の方から寄せられた質問に答えます

 それでは今月も質問に答えていきたいと思います!

今回は3つの読者質問に真っ向勝負!(撮影:北山宏一)

ーー松浦選手は夏のレースが得意な印象があります。食事などに気を付けていますか?夏には「これを食べる!」といったスタミナ食があれば教えてください。

 もちろん食事には気を付けています。食べる量も、時間によって食べるものも、栄養面もかなり意識していますね。1年中気を付けています。スタミナ食ではないですけど、夏は冷たいうどんやそばをよく食べますかね。あとはメロンが好きなので、エネルギー源になっています。これはスタミナ食とは呼べないかもですが(笑)。

ーーレースの作戦ですが、「戦略家」と言われる松浦選手が主に立てているのでしょうか?連係する選手たち同士で意見が食い違うことはありますか?

 自分が前の時は自分で決めたいし、自分が後ろの時は前の選手に決めて欲しいと思っています。相談をされればアドバイスをする感じです。今回コラムで書いた同期同学年で連係した武藤君は「全部お任せ」とのことでしたし、自分が決めました。レースが終わって「失敗した」と考えることはありますが、作戦段階で食い違うことは基本的にはないですね。特別競輪に出ている選手で作戦の考え方を聞いて「え?何それ」となることはあんまりないです。

ーーラインを組む選手と「意思疎通がうまくいった」という言葉がコラムにありました。これはどういう意味でしょうか? レースが展開していく中で選手同士がお互いに相手が思うように動く状態ということでしょうか?

 これはちょっと難しいですね(笑)。例えば作戦を勘違いしているパターンがあるんですよ。「意思疎通できなかった」としているレースは、自分が思っている走りと前の選手が思っている走りが違ったり、自分が前の時、後ろの選手と考えていることが違ったりする状態です。

 レースは相手がいるので、事前に思い描いたプランの通りに運ばないことの方が多いです。結局はレース中の判断になってきます。そのレース中の判断で先頭と番手できちんと理解し合えているかどうか? 咄嗟の判断の時にいい連係ができたか? 「意思疎通がうまくいった」と表現しているのはそのあたりの話ですね。

 ちなみに競輪の面白いところですが、三分戦で“圧倒的に強いラインが1つある時”です。そこを倒さないことにはレースにならないって場面。こういった時に残り2つのラインで1番強い選手を後方に置き、2つのラインで走ってしまおうと考えたりします。そんな利害関係から「本来は敵同士」との意思疎通もあったりします。相手のラインをお互いに利用し合う形にもなるので、自分の味方のラインだけじゃなく、敵とも「意思疎通」は必要です。正直、このあたりは考えることが多くて大変です(笑)。

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松浦悠士の“真っ向勝負!”

松浦悠士

Matuura Yuji

広島県広島市出身。日本競輪学校第98期卒。2010年7月熊本競輪場でレースデビュー。2016年の日本選手権競輪でGⅠ初出場、2019年の全日本選抜競輪では初のGⅠ決勝進出を果たす。2019年の競輪祭でGⅠ初優勝を飾り、同年KEIRINグランプリにも出場。2020年のオールスター競輪では脇本雄太との死闘を制し、優勝。自身2つ目のGⅠタイトルを獲得した。ファンの間ではスイーツ好き男子と知られており、SNSでは美味しいスイーツの数々を紹介している。

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