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車券“予報”師マキビの「わんだふる♡らいふ」

「お祭りだぞ!」気張っていた現役時代に言われたサマナイの思い出、元選手が読み解く“とぶ”可能性のある松戸バンクとは?

2024/07/11 (木) 18:00 28

6月に行われた今年2つめのガールズGI「パールカップ」は、高木真備さんの同期でもある石井貴子(千葉)選手が大ケガを乗り越えてGI初出場初優勝の快挙を達成。そのパールカップを振り返りつつ、間近に迫った「サマーナイトフェスティバル(GII)」について、注目選手や真備さん自身の思い出を語ってもらいます。またを初めてG3が開催されるミッドナイトや、夏のガールズの“メイク事情”についても…

高木真備(撮影:北山宏一)

注目した石井貴子と當銘直美が活躍したパールカップ

ーーまずはパールカップの振り返りからお願いします。先月の当コラムで注目選手として取り上げた、同期の石井貴子(千葉)選手がなんとGI初出場初優勝の偉業を達成しました!

 頑張って欲しいなとは思っていたんですが、まさか本当に優勝するとは…ビックリしました。参加前にも連絡を取っていて、『無理しないでね』と伝えたんですけど(笑)。しっかり決勝に乗って、優勝までして! いや〜、よかったです!

ーーまた名前を挙げていた當銘直美選手も大活躍。予選、準決勝はともに児玉碧衣選手の番手を確保して追い込み、連勝を飾りました。

成長を感じ、今後の走りがより楽しみになった當銘直美選手(撮影:北山宏一)

 オールガールズクラシックの動きを見て楽しみだなとは思っていました。

ーー連日の勝ちっぷりが評価されたのか、決勝でも人気の中心に推されました。

 結果は残念でしたが、レース後に當銘選手と話す機会があって、そこで彼女の成長をすごく感じました。

ーーどんな話をされたのですか。

 私は「パールカップ、決勝戦は残念だったけど、すごかったね」と声をかけたのですが、當銘選手は「自分に求められていたのは位置を取ることだったのに、それができなかった。お客さんは私が位置を取ることを期待して車券を買ってくれていたと思うのに。私が求められている走りというのがハッキリわかりました」と言っていました。悔しがるだけではなく課題を見つけていましたし、次にもう一度、同じような場面があったら今度は當銘選手らしい走りを見せてくれるのかなって、より楽しみになりました。

余裕がない自分に「今回はフェスティバルだぞ! お祭りだぞ!」

ーーそんなパールカップから1ヶ月。まもなくサマーナイトフェスティバルが13日に開幕し、今年で最後となる「ガールズケイリンフェスティバル」も豪華メンバーによって争われます。まず、真備さんが現役時代、ガールズケイリンフェスティバルはどんな印象がありましたか。

 一番相性のいい大会でした。

同期で同級生の清水裕友選手と表彰台へ(写真:本人提供)

ーー2020年のいわき平シリーズでは優勝もしています。

 あのシリーズは競輪選手生活の中で一番調子が良かったんです。行きの車の中でワクワクしている自分がいて「どこまでやれるのか楽しみだな」って思ったのを鮮明に覚えています。決勝戦の前には「ここで獲れなかったら一生獲れないだろうな」とふと思って、自分自身に期待するような気持ちになりました。結果的に優勝できて、(男子のサマーナイト覇者となった)同期で同級生の清水(裕友)君と一緒に表彰台に立てたのはすごくうれしくていい思い出です。

ーーではサマーナイトは大好きだった?

 めちゃくちゃ相性は良かったけど、とにかく「1年間で最も決勝に勝ち上がるのが大変な大会」という印象でした。

ーーどういうことでしょうか。

 私が現役の頃はまだGIがなくて、メンバーが濃い中、3R制で2日間予選を行い上位の7人が決勝にいけるという勝ち上がり方式はこのガルフェスだけでした。例えば3・3着で確定板に2日間入っても6、7番手でギリギリ決勝進出という状況だったり、初日に確定板を外すと2日目に1着を取っても周りの選手の着次第ではダメとか。ポイント制の良いところは初日に失敗しても2日目に挽回できるところなのですが、サマナイだけは違うよねと選手間でもよく話をしていました。体調良く臨めることが多かったので大会との相性自体はいいですけど、大変だったな、という思い出があります。

大変だったな、という思い出が強いサマーナイトフェスティバル(photo by Shimajoe)

ーー「フェスティバル」という大会名ですが、お祭り気分ではないですね。

 全くそんな余裕はありませんでした(苦笑)。ですが、いつかのサマーナイト開催中の食堂で、とある県の選手たちがお酒を飲みながらすごく楽しそうにご飯を食べていて…(※当時は食堂での飲酒が認められていた)。ビッグレースなのに珍しいと、その県のガールズ選手が「楽しそうでいいですね」と話しかけたら「今回はフェスティバルだぞ! お祭りだぞ!」と言っていて、あぁ、そういえばお祭りなのか、って。気を張ってばかりいたけど、もっとこの雰囲気を楽しんでもいいのかなって思ったことがありました(笑)。あの会話はすごく印象に残っています(笑)。

松戸バンクは一概に自力選手有利とはいえない!?

ーー(笑)。さて、今年の舞台は松戸競輪場です。3・3バンクで先行選手が有利というイメージがありますが、実際はどうなんでしょうか。

 機動力のある選手有利ではありますが、逆に自力があるからこそ“とぶ”可能性もあるのかなって。

自身が走った経験から「仕掛けどころが独特」と示唆する

ーー一概に自力選手有利とはいえない?

 3・3バンクは仕掛けどころが独特で、力が拮抗している時はほんの少しのタイミングのズレが致命傷になることもあります。例えばちょっとでも仕掛けが遅れるとまくりが3コーナーの壁に当たってしまい、そこで浮いてしまう恐れがあります。いつもより気持ち早めに踏み込むなどの対策をしないと、人気を集めている選手でも苦戦するシーンが出てくるかもしれません。

ーー車券戦術的には「松戸だからこそ追い込み選手も絡めた方がいい」?

 最短距離を真っすぐ走る追い込み選手が、膨れた自力選手に先着して2、3着に入る、というのは松戸競輪場なら十分に考えられると思います。そうなると高配当にもなりますし、「本命選手から人気薄になりそうな内を踏める選手」という車券は、押さえみてもおもしろいんじゃないでしょうか。

ーー注目選手を挙げるとすればどの選手でしょうか。

 うーん…。まだビッグレースを優勝したことがない選手に期待してみたいです!3・3バンクは波乱が起きやすいので、本命選手が後方に置かれる展開なら、前団にいた選手の大金星…!というのは十分にあると思います。あとはパールカップのあとに少しお話しできた當銘選手ですかね。パールカップの時は挑戦者の立場で、勝てば「金星」と言われていました。ただ前回いい結果を出したことで、今回は選手間からもファンからもパールカップとは違う目で見られると思います。かかるプレッシャーも大きくなるでしょうし、また決勝で悔しい思いもしたはずです。その経験を経て、今回どんなパフォーマンスを彼女が見せててくれるのか、すごく楽しみですし期待もしています。

「えっ!今ですか!?」ガールズ選手ならではのメイク事情

ーー真備さんはガールズフェスティバルをはじめ、比較的夏場に好成績を収めていました。夏はやっぱり好きですか。

 私は冬よりも夏の方が好きでした。暑いな〜って思うことももちろんたくさんありましたけど、なぜか走りやすかったし体調も毎年良かったんです。ガルフェスの伊東(17年7月初日)では9秒6のまくりが決まったこともありました。

ときには「ちょっとだけ待ってください」とメイク直しをすることも…(photo by Shimajoe)

ーーちなみにですが、暑い時期だとガールズは“メイク”についてもいろいろと考えることが多かったのではないですか。

 そうですね…たしかに大変でした。夏はたくさん汗をかくので…(苦笑)。もちろん人それぞれでしたが、私の場合はアイラインやマスカラなどは控えていました。黒いのがダラーっと垂れてこないように(笑)。

ーー写真撮影を頼まれることも多かったと思いますが。

 えっ、今ですか!? という時もありました(苦笑)。もちろんカメラマンの方も仕事として早く撮らないといけない事情があるのは理解しつつも、「すいません、ちょっとだけ待ってください」とお願いして少しだけ整えたりしました。でも、これも人によってですね。全くしないでいつでもすぐに応じる人もいましたし。化粧品も人によって、これは効果がある、これは効果がない、など個人差がありました。「〇〇はいいよ」とか「〇〇はちょっと汗かいても落ちないよ」などの情報交換はよくしていました。

とにかくミッドナイトのレースはキツかった…

ーーサマーナイト後には初めてミッドナイト競輪でGIII(佐世保)が開催されます。ちなみに真備さんは現役時代、ミッドナイトはいかがでしたか。

 イヤというか…。キツかったです(苦笑)。普段は寝ている時間ですし。あと、ミッドナイト開催が終わった後の体調管理も難しかったです。

保護施設の利用者さんと(写真:本人提供)

ーー現在、真備さんは夜勤もされているようですが、全然違う?

 全く別物です!!!(笑)。
 書類を書いたりという作業は、ハッキリ言って「絶好調」ではなくてもこなせます。深夜に調子のピークをもっていく必要もないですし、ある程度、頭が働いてちゃんと業務ができれば問題ありません。ただ競輪選手としてレースに臨む以上は「絶好調」に体を調整しないといけません。とはいえ、絶好調を目指しても普段は深夜に心拍数を上げることもないですし、実際にはなかなか難しい。もし1着を取れたとしても感覚は「悪かったなぁ」って思うことも多かったです。今の仕事で、夜勤を嫌だと思ったことは一度もありませんが、やはりミッドナイトは大変だったなと(苦笑)。

ーーそんなミッドナイトに平原康多選手をはじめ、トップ選手が参戦する。

 元選手の立場としては「すごいな、大変だろうな」と少し考えてしまう部分はあります。ただ一人の競輪ファンとしては、真夜中にトップ選手が走るレースというのはすごく楽しみでワクワクしています(笑)。



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高木真備

Takagi Makibi

元ガールズケイリン選手(106期)。2014年に奈良競輪場でデビューし、玉野競輪場で初優勝する。2016年のガールズケイリンコレクションでファン投票1位を獲得して、優勝。同年末にガールズグランプリ初出場を果たす。2020年には、特別競輪ガールズケイリンフェスティバル(いわき平)で完全優勝し、同年のガールズケイリンコレクション(伊東)も優勝した。ガールズケイリングランプリ2021で悲願の優勝を果たし、2022年4月に引退。現在は動物保護活動をしている。

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