2024/06/20 (木) 20:00 49
全国300万人の慎太郎ファン、netkeirin読者のみなさん、佐藤慎太郎です。今回は前橋記念と岸和田GI高松宮記念杯を振り返りながら「競輪は噛み合わなければ勝ち切れない」ってことを書いていこうと思う。
レースの振り返りを書く前に感謝を述べたい。オールスター競輪は投票してくれたみなさんのおかげで7位。今年もドリームレースを走れることになった。今年前半をひとくくりに考えれば、無論芳しい成績ではない。だが、着がともなわなくとも最後まであきらめない姿勢で走っていた。そこを評価してもらえたのだと思うし、この結果を受けた時、どこか気持ちがラクになるようなポジティブな感覚があった。しかし、だ。
最近を振り返ればビッグレースで決勝にも乗れていない。評価してもらえたことに気持ちがラクになる一方で、「どうなのよ?慎太郎」みたいな気持ちだって当然ある。みなさんから受けた評価は気が引き締まる最高の励みにもなった。オレの“走り以外”に1票を投じてくれた人もいよう。そんな人にこそ、走りで魅力を伝えたい。何はともあれ、精一杯にドリームレースを走ります。投票してくれたみなさん、改めてありがとうございました。
それではシリーズを振り返っていこう。まずは前橋記念。決勝2着で終えたシリーズは上向いているコンディションを感じられたシリーズになった。“絶好調”と呼べる時は「万全だ」と断言できる状態であり、常にそういった感覚で自信を持って走ることができる時。今年はまだそこまでの状態を感じるには至っていない。いや、もうしばらくの間、絶好調とか万全だとか思えていない気もする。そんな中ではあるが、前橋では状態の良さを再確認できるポイントも多々あり、GI前に悪くないシリーズを過ごすことができた。
そして前橋と言えば新田祐大の復帰戦! 久しぶりに実戦で連係して、改めて新田の迫力を感じることができた。新田特有の爆発力、凄味、レース中に後ろの選手へ与えるプレッシャー。とにかくすべてにインパクトがあり、気合を入れなくては付いていけない緊張感がある。
「新田と連係あるかも」と思ってする練習は本当に身が入るし、限界を超えるための緊張感がある。今年の前半戦、新田がレースから離れていたことで、オレの緊張感にはリアル感がなかったんじゃねえか? それが前半の成績に現れたのかもしれねえ、って思ったな。たぶん、そう。新田がいなかったからだ。成績の不調は新田のせいにしておく(笑)。
そんなわけで自分自身のコンディションの良さや心強い新田祐大の復帰もあり、GI前の練習では納得できた。いい感じの仕上がりで岸和田へ向かったんだよな。なんとしてもシリーズを勝ち上がり優勝争いを、と意気込んで。だがGIは、競輪は甘くない。チャンスひとつ手にするまでに、さまざまなことが噛み合わなければ手にすることはできねえってこと。
高松宮記念杯は二次予選で手痛い勉強をすることになった。松坂洋平に内から隙を突かれ、オレの位置が狙われる事態になった。なんで内が空いてしまったか? とかも含めて、イレギュラーが重なったといえば重なったんだが。それでも不意に来られたにしても、追い込み選手として奪われてはいけないポイントだった。
ライン4車の優位性も活かせず、逃げた高橋晋也にも申し訳なかった。「なんて情けないレースだよ、佐藤慎太郎」って気持ちで走ることになってしまった。とにかくリカバリーに必死になり3着で走り終えたが、情けない以外の言葉はない。勝負所でのコース取りや最終直線の伸びも良く、勝ち上がりには達したわけだが、それとこれとは別。
今の競輪においては、タイミングを読みダッシュ力を使い、タテの意識から生じる競りにも対応しなくてはならない場面もある。このレースから重要な教訓を得ている。何よりGIという最高の舞台で、自分自身に情けないと感じながら走っているようではね。調子がどんなに良くとも“嚙み合わない”を生み出してしまう。
続いて振り返るのは準決勝。レースを走り終えて、さらにはシリーズを終えて、「絶対的な自信に溢れて勝負できていたか?」と自問自答している。勝ち上がりたい気持ちは当たり前のように持ち合わせていたし、新田と組んで走れるわけだからチャンスも感じていた。
でも結果的に勝ち上がりを逃した。何が悪かったのかを考えてみると、作戦を立てる段階から絶対的な自信を持って新田に声をかけていたか?ということが引っかかっている。新田も復帰2発目のシリーズだし、まだ実戦感覚はとても本調子ではなかっただろう。新田の気持ちまではわからないが、絶対的な自信がみなぎっているような感覚ではなかったかもしれない。
そんな状態だったかもしれないと感じれば感じるだけ、作戦を立てる段階から「どんな強烈なダッシュを繰り出されようがしっかりとついて行けるから大丈夫」と声をかけることができたのではないか、もっと一緒に覇気を出せたんじゃないか、と心残りがある。決勝の舞台で優勝争いできるほどの並大抵じゃない自信があったかと言えば、そうじゃなかったかもしれないと考える。終わった後にこの辺りが妙に引っかかっている。
ここまでの振り返りで書いてきたように、コンディションそのものはある程度勝負できる水準にある。しかし、前半戦で結果が出せなかったことで、無意識的に自信を削いでいるのかもしれないと思う。自分に衰えを感じても「全然ダメだ」とか「もうお手上げだ」ってあきらめの感覚はまったくない。これからの後半戦、自信に溢れて走るためには、少しずつ少しずつ毎日の自分の限界の少し上を目指して積み重ねていかなくてはならんな。心技体が噛み合わなくては、勝ち切ることができないだろう、競輪は。
今までやってきたことを守り続けていちゃいけない。手ごたえを感じても結果が出るか否かを見極め、次々に新しいことに挑戦しなくてはならないだろう。後半戦へと向かう中で、トライしていかなくては、の気持ちが強い。今、威勢のいいことを大声でいう感じでもねえから、限界を少しづつ塗り替えるための新しい挑戦を粛々と続けていくことを宣言するにとどめる。
そういや、先日オレの「限界?気のせいだよ!Tシャツ」が競輪アニメデビューを果たした(笑)。それがきっかけでオレのことを知ってくれたり、競輪のことに注目してくれたり、新しいお客さんの存在がある。こういう流れは本当に嬉しいわけで。
競輪って本当に複雑で難しい。だからこそめちゃくちゃ楽しい。少しでも興味を持ってくれた人がいるなら、突然深く知ろうなんて思わずに、浅く浅くでいいから長く見続けて欲しいと願う。「なんだ?今のレース不思議だな?」ってことがあっても、だんだんわかってくるからよ!
そしてオレは競輪選手だ。レースを見てくれる人の知識云々関係なく、浅く見てくれているファンにも魅せられるレースを、迫力のある走りを楽しんでもらえるように一生懸命にやる!ガハハ!
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佐藤慎太郎
Shintaro Sato
福島県東白川郡塙町出身。日本競輪学校第78期卒。1996年8月いわき平競輪場でレースデビュー、初勝利を飾る。2003年の全日本選抜競輪で優勝し、2004年開催のすべてのGIレースで決勝に進出している。選手生命に関わる怪我を経験するも、克服し、現在に至るまで長期に渡り、競輪界最高峰の場で活躍し続けている。2019年には立川競輪場で開催されたKEIRINグランプリ2019で優勝。新田祐大の番手から直線強襲し、右手を空に掲げた。2020年7月には弥彦競輪場で400勝を達成。絶対強者でありながら、親しみやすいコメントが多く、ユーモラスな表現でファンを楽しませている。SNSでの発信では語尾に「ガハハ!」の決まり文句を使用することが多く、ファンの間で愛されている。