2024/02/27 (火) 18:00 42
みなさん、こんにちは松浦悠士です。今回は岐阜で開催された「全日本選抜競輪(GI)」と高松で開催された「玉藻杯争覇戦」について書いていきます。2つのシリーズを振り返りながら自分の状態なども詳しく綴っていこうと思います。
まずは全日本選抜ですが、前走の川崎記念よりも状態の良さを感じながら入ることができました。フィジカル的には物足りなさがあったのですが、感覚の面で補えるものがあったというか。初日の特別選抜予選を一走してみても不安な点はなく、「戦えそうだ」と手応えがありました。レースでは感触の良さも確認できましたし、勝負所では余力もありました。タイミングを見て仕掛けたかったですが、慎太郎さんにうまくフタをされる形になってしまい抜け出せず。結果4着でのスタートとなりました。
そして2日目、状態面に初日ほどの良さが感じられませんでした。バンクの重さや風が気になり、加えて、自分が経験している過去のGI二次予選の中で、一番「キツイ」と感じたメンバー構成でした。いざレースでは連係した雄吾が頑張ってくれましたが、僕らの後ろ3番手を北井さんに取られる苦しい展開になりました。
レースが終わってから、もう少しうまい走りはできなかったか?と自問自答しましたが、『そもそも北井さんが強かった』という事実にインパクトを感じました。自分が重いと感じたバンクコンディションの中で「こんなにスピードが出せるのか…」と正直驚きましたし、同時に自分の弱さに情けない気持ちになりました。
当り前ですが、タイトルを獲るためには勝つことが前提で、ステージを上げて戦わなくては優勝争いすら叶いません。二次予選敗退という結果は非常に悔しく、情けなく、落胆も大きかったです。ただ、そんな心境でもシリーズは続きます。「まだ今年は始まったばかり」と頭を切り替えて、引きずらないように心がけました。
3日目は太我と一緒で、あまり多くを考えずに走れるレースだったので、レースに悪影響が出ず良かったです。でも3日目の1着もまだまだ納得できない部分があり、「1着は獲れたけど…」と釈然としない気持ちでしたし、2人で決められなかった点には課題を感じました。ただ最終日は自力の番組でしたから、しっかり自分の走りをして帰ろう、と気持ちを入れて臨みました。
迎えた最終日、バンクコンディションも重く、ホームも強い向かい風。バック過ぎの追い風を受けながら踏んで行きたいとは思っていました。レースは松井君と脇本さんが意識し合い、二人のスピードが合う感じになったので、展開が僕に向く感じでしたね。自分が仕掛ける余力があるか否かといったレースになりました。実際のところ、余力はそこまでありませんでしたが、園田さんとワンツーを決める形でシリーズを終えることができました。
ただ、目標にしていた優勝はおろか、優勝争いもできなかった事実は受け止める必要があります。これが今の実力ということ。「ひとつひとつやって行くしかない」と切り替えて過ごせたものの、シリーズが終わっても悔しさは消化できませんでした。今後も次に向かってやるべきことをやるだけなんですが、ダービーでは勝ち上がりを逃さず、絶対にタイトル争いをしたいと強く思っています。
GIが終わり、高松記念に参戦しましたが、シリーズ全体を振り返ると初日が良くて2日目以降の感覚が悪かったです。お客さんからは見えない部分というか、1着を獲っても僕自身の中ではイメージ通りに行かないことも多かったシリーズだったんです。
2日目二次予選は僕と犬伏君の車券がかなり売れていましたが、展開によっては抜けないこともあるかもしれないと気を引き締めていました。今回犬伏君とは作戦を特に立てず、「お客さんがワクワクできるような“魅せるレース”をして欲しい」と話していました。
犬伏君は2周ぐらいをハイスピードで行けるところだったり、純粋なダッシュの強烈さだったりが持ち味じゃないかなと思います。僕としては一番後ろまで下がって一気にドカーン!と仕掛けていった時にお客さんが「ワー!」ってなるのを想定していました(笑)。実際のレースでは展開的にそうはなりませんでしたけど、そこは犬伏君の好判断。落ち着いてレースを作ってくれました。
結果として僕は犬伏君を差して1着。人気に応えることができました。ただ、「ギリギリだった」というのが正直なところで、「状態は悪くないのに物足りなさを感じる」というのがまさにこういったところです。
残りの距離と余力から計算して、ゴール線上のイメージを想像して走るのですが、とてもイメージ通りではないんですよね。今回は「ちゃんと車輪ひとつ出るように」差しに行っています。でも実際はギリギリ。それは準決勝もそうでした。太我が良い走りをしてくれてラインでワンツースリーを決められたのは良かったのですが、差していく時に想定するイメージよりもギリギリになってしまっている感覚が2日目、3日目と続きました。
そんなズレを感じながら迎えた決勝。僕ら中四国ラインが一番想定していた作戦は前受けからの突っ張り。ただ下げてからの打鐘前ガマシのプランも準備していたので、太我と「早めに抑えてくるようなら下げようか」と話をしていました。レースは太我もしっかりと自分のタイミングで仕掛けていましたし、菊池君の後ろにハマる形になりました。ただ後ろについてからの菊池君のペース配分や蛇行する感じがうまく、太我も僕も脚を削られてしまいました。
これが効いたのか準決勝の感じとは違い、出て行ってからすぐに太我のスピードは失速気味でしたね。「後ろから誰も来ないでくれ!」と願いましたが、振り返ると浅井さんが…。そこで僕も踏まざるを得ない状況になり、最終的には僕が押し切るか交わされるのかという勝負になりました。結果は“あと一歩”及ばず。2日目、3日目でイメージよりもギリギリで差している“感覚のズレ”が、この“あと一歩”にも現れてしまったと思います。
決勝は悔しい結果になったのは間違いないですが、同時にとても糧になったレースだと思います。「菊池君の後ろが競り」という所から不確定要素がありましたし、菊池君のフタをし続ける気持ちの強さも想定以上のものがありました。僕らから見ればイレギュラーの連続でした。
こういったレースはライン先頭の自力選手の太我はもとより、番手・3番手・4番手の選手同士の経験値も増やし、深い学びが得られるレースです。単に勝てばいいレースではなく、太我にとっては菊池君への特別意識もあったはず。赤板めがけて仕掛ける太我の走りには熱い気持ちを感じましたし、だからこそうまく援護したかった。やりたいレースはできませんでしたが、必ず次に繋がるであろう、繋げなくてはいけないレースだったと振り返っています。
今年ここまでを振り返ると、各地区同士の力がとても拮抗しているように感じています。強い選手もどんどん出てくる状況ですし、僕ら中四国も底上げをしていかなくてはと思います。全日本選抜でも高松記念でも感じたんですが、強い自力選手がひとりいるだけで地区の流れが変わります。例を挙げるなら北日本の新山君、南関東の北井さんという感じで。
ここに意識を向けてやっていかなければいけないし、自分がラインの先頭で柱になることを目指していかなくてはと感じています。「マーク戦なら結果が出る」ではダメで、脚力向上に気持ちを向けることが本当に重要になっています。いつも番手を回れるわけではないですし、タイトルを意識するなら自力・タテ脚を磨かなくては…! 全日本選抜の決勝で、同型の裕友の走りを見て改めて自力の大切さを感じました。裕友のレースは自分の中にすごく熱いものを流してくれたし、気合が入りました。
さいごに自分の状態を詳しくお伝えしてから筆を置こうと思います。昨年、鎖骨・肩甲骨を折ってから、マーク戦に関しては80%〜90%くらいの力で戦えるようになってきました。ですが、自力・タテ脚の部分だけで評価すれば50%程度の感覚で、復帰してから納得できる自力を出せていません。
ここに“物足りなさ”の原因を見つけていますし、マーク戦と自力戦の感覚の違いには戸惑う部分もあります。でも次走の玉野記念ではメンバー的に自分が自力を出す流れもあるかもしれません。もしもその場面がきたら、しっかりと納得できる走りを求めて地元に貢献しなくてはと思っています。3月は比較的練習時間も多く確保できそうなので、その先のウィナーズカップも見据えながら、精一杯体を作り、結果を求めていきたいと思います。
それでは今月も質問に答えていきたいと思います!
ーーガールズケイリンは観ますか? レースを参考にすることはありますか?
はい、観ています。同県の吉岡詩織のレースなんかはよく見ます。自分の単騎戦をイメージしながら見たり、ラインの先頭で番手・3番手に飛び付く感じなんかは参考にできる走りもあります。特に目が行くのは「位置を取って捲るような選手」ですかね。
ーー松浦選手がグランプリを優勝して両手でガッツポーズする姿を見ながら家族で喜んでました。そのとき孫が手放しで走行する姿を見て「ラーメン一杯食べながら自転車に乗れるのかなあ」と言っていました。くだらない質問ですが、どうでしょうか?
グランプリの応援ありがとうございます! いや、さすがにラーメンは厳しいですね(笑)。できる可能性があるなら古性優作君でしょうね。
ーー自転車以外のスポーツなら何のスポーツをやりますか? 子どもの頃はカープの選手になりたかったですか?
もちろん子どもの頃はカープの選手に憧れてました。緒方孝市選手が大好きで、競輪選手になってからお会いする機会があり、「選手やってて良かった〜」となりましたね(笑)。自転車以外のスポーツはフィジカルに恵まれているわけでもないので、個の力で戦うものは選ばないですかね。それに僕は戦略的なものを好むので団体競技・チームスポーツを選ぶと思います。でも考えられないんですよね。
僕の場合、本当に競輪が天職です。フィジカルが弱くても自転車を扱うことで肉体的な要素以外に強さを生み出すことができますし、そういった面が本当に自分に合っているように思います。裏を返すとどんなにフィジカルが強くても自転車にうまく力を伝えられなくては、競輪選手としてはなかなか強くなれません。そこに戦略や分析といった自分の好きな要素が加味されるので、つくづく天職だなあと思いますね。
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松浦悠士
Matuura Yuji
広島県広島市出身。日本競輪学校第98期卒。2010年7月熊本競輪場でレースデビュー。2016年の日本選手権競輪でGⅠ初出場、2019年の全日本選抜競輪では初のGⅠ決勝進出を果たす。2019年の競輪祭でGⅠ初優勝を飾り、同年KEIRINグランプリにも出場。2020年のオールスター競輪では脇本雄太との死闘を制し、優勝。自身2つ目のGⅠタイトルを獲得した。ファンの間ではスイーツ好き男子と知られており、SNSでは美味しいスイーツの数々を紹介している。