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S級S班特集

【入門】競輪界のスーパーヒーローS級S班とは何か?

2023/11/15 (水) 18:00 76

年末のKEIRINグランプリ出場権を争う最後の闘い「朝日新聞社杯競輪祭(GI)」が11月21日から26日にかけて行われる。グランプリ出場選手9人は競輪界最高ランクのS級S班に格付けされ、グランプリと翌年を走り抜く。約2300人もの競輪選手の中でS班とはどんな存在なのか? 4日間に渡ってS班を特集する。(取材・文=アオケイ/構成・編集=netkeirin編集部)

グランプリ出場権や優先シード…高額賞金獲得のチャンスが拡大

 長いこと競輪をやっているオールドファンはもちろん、最近競輪を始めたよというビギナーのファンでも、S級S班という言葉を耳にしたことがあると思うが、その歴史はそこまで古くなく、2007年からスタートした制度。今でこそグランプリ出場メンバーの9人がS級S班と呼ばれているが、発足当時は18人もいた。

 約2300人いる競輪選手の中でも9人しかなることができない、まさに、選ばれし者。野球で例えたら大谷翔平、サッカーならリオネル・メッシ、バスケットならレブロン・ジェームズ…ちょっと違うかもしれないがお笑いならダウンタウンみたいな感じで、その世界の絶対的なスーパーヒーローと言えるだろう。

 先ほども触れたように競輪という競技は2300人もの選手から成り立っていて、それぞれの力ごとにクラス分けされ、養成所を卒業した新人選手は皆A級3班格付けでプロデビュー。そこから結果を出すごとにA級2班→A級1班→S級2班→S級1班と上がっていって、その先の最終到達地がS級S班となる。

 S班の地位にたどり着くにはS級に在籍するのは当然のこととして、年間6つあるGIレースで優勝するか、賞金をコツコツ積み上げ上位9人に入り、年末に行われる「KEIRINグランプリ」に出場するのがマスト。脚力だけではなく、経験値や競輪力、勝負強さや時の運も必要と言われている(※GI優勝、賞金以外にオリンピックや世界選手権で活躍した選手が選ばれるレアケースもある)。

 S班になった選手のメリットと言えば、一番はやはり、その年のグランプリの出場権&高額賞金を手にするチャンスが得られること。次の年に行われる全てのGI・GIIも無条件で出場可能で、特選シードの番組がある場合は優先的にシードされたり、勝ち上がっていくのに有利な条件が揃っている。またトップレーサーは見た目も大事ということで、他の選手とは違う、赤地に黒いラインが入った特別ユニフォーム(通称、赤パン)を着用して走ることになる。

撮影:北山宏一

 今年のS班在籍者は古性優作、脇本雄太、新田祐大、新山響平、松浦悠士、郡司浩平、守澤太志、佐藤慎太郎、平原康多の9人。みんながみんな、選手のお手本という感じのナイスガイで、インタビューの受け答えなどレース以外のところも超一流。競輪場ではいつも圧倒的なオーラを放っているし、S班は違うな! 格好いいな! と取材をしていて毎回感じる。

 それでは、圧倒的多数を占めるS班以外の選手はS班をどう見ているのか。S級1班からA級3班まで6人に聞いてみた。

赤パンは戦闘力を高め、人として成長させてくれた

 まずは、日本選手権競輪(2010年松戸)、KEIRINグランプリ(2010年立川)、全日本選抜競輪(2014年高松)、寬仁親王牌(2019年前橋)のタイトルを獲得し、8年赤パンを履いたレジェンド・村上博幸(44歳・京都=86期/S級1班)。”S班の見えない力”を語ってくれた。

村上博幸(撮影:北山宏一)

「全国に競輪選手は2300人いるけど、S班の選手は9人しかいないから、全ての選手のお手本だと思う。脚力で言えば、頭ひとつ、ふたつリードしている。今、考えると、しんどい思いしかない。特にグランプリユニフォームを着ていた1年は、精神的にきつかった。結果を求められる立場だけど、自然と責任感も芽生えたのも確か。僕の場合は怪我も多かったから、隔年と言うか、ずっとS班を維持できていた訳ではない。全部で8年、S班に在籍していたけど、赤パンを脱いだ年は、もう1回、履こう!の気持ちでしたね。あのユニフォームと赤いパンツを履くと、人間を成長させるし、戦闘力を高める。不思議な魅力がありました」

 44歳になっても、S級上位選手として活躍して、先日の防府記念でも決勝進出。温厚な人柄だが、今でも近畿の精神的な支柱で、ドン的な立場。

「まだタイトルも諦めていないですよ(笑)。今は地区の勢いが左右されるし、先行選手、自在選手、マーク選手のバランスも大切。近畿は自力の脇本雄太、自在の古性優作と両巨頭がいる。彼らに負けないマーカーも必要だし、その位置にいたいと言う気持ちはありますね(笑顔)」

S班を熱望する犬伏湧也は「ここまできたらS班になりたい」

 現在賞金ランキング11位とボーダーに位置し、競輪祭でS班入りを決めたい犬伏湧也(28歳・徳島=119期/S級1班)は率直な思いを口にする。

犬伏湧也(撮影:北山宏一)

 

「デビューした当初は、S班について全くイメージも湧かなかった。雲の上の存在だし、別世界。だけど、ここまできたら、S班の選手になりたいと強く思う様になった。技術的にも一枚も二枚も上なのがS班の人達。あとは人間力も違うと思う」

 今年ここまで5つ行われたGIで決勝進出が3回。力はあるだけに運も味方に付けたいところだ。

ストレスは半端ないと思うけど、羨ましい

 先日の防府記念で準優勝、中国地区の先行選手として活躍中の取鳥雄吾(28歳・岡山=107期/S級1班)は、同級生で仲の良い清水裕友が昨年まで4年間S班だった。清水を通してS班について考えさせれたことがあったという。

「競輪選手の頂点だし、人としても選手としても、百点満点。今の自分の戦法(先行基本のスタイル)では、S班を狙うのは厳しい。自在に変わった時に、なれるかなれないかぐらい。裕友を側で見ていて、昨年はS班だったせいか、ピリピリしていた。今年はS班を降り、そう言うのがなくなった気がする(笑)。

防府記念6連覇を達成した清水裕友(中央)を祝福する取鳥雄吾(左)。右は松浦悠士(写真提供:チャリ・ロト)

 裕友もそうだし、松浦悠士さんもそうだけど、雰囲気を出していますよね。言葉では言えないけど、そう言うのがS班の選手だと思う。ストレスは半端ないと思うけど、羨ましいと思うし、肩を並べてみたい。同じ目線にならないと、見えない世界がありますから」

 現・S班の松浦悠士の事を、もう少し聞いてみると「突き放される事もあるけど、寄り添ってもくれる。松浦さん自体、動く脚があるから僕らの気持ちも分かってくれるので。中国地区にとって、あの2人の存在は大きいですよ」。どの選手に聞いてみても、脚力だけでないのがS班の選手達だ。

業界的にもS班の存在はプラス

「S班の存在は競輪界にとってプラス」と語るのは四国の川口雄太(27歳・徳島=111期/S級2班)だ。

川口雄太(photo by Shimajoe)

 まず、S班について聞いてみると、「憧れです。小倉(竜二)さんが競輪祭を獲った2年後にスタートした制度だから、小倉さんでもなったことがない。僕なんかいいなぁとは思うけど、到底届くようなクラスじゃないですよ。メリットはGIを含めて全てのレースで特選に乗れるのは大きい。競走得点も維持出来るし賞金も。デメリットは…プレッシャーじゃないですか? いつも人気になるし、それに応えなきゃいけない。そこは精神的にキツいと思いますよ。一年を通してずっと調子のいい時ばかりじゃないですからね」

 競輪界にプラスについては、「S班があって正解だと思います。上のクラスの選手のモチベーションも上がって、競い合って競輪のレベルが上がる。賞金でのグランプリ出場枠があるから、上の人たちの欠場も減って施行者さんや番組さんも助かる。興行的にもいいと思いますよ。S班になった人たちはS班だからこそやらなきゃいけない場面が出てくる。その求められるレベルが高いでしょ。僕らがチャレンジャーの立場で戦っているのとはワケが違う。常に勝って当たり前と思われているんですよ。人気を背負って、それに応えようと努力する姿は尊敬しますね」

一言で言うと”超人” 若手選手たちが見たS班とは

 デビュー1年〜2年目の若手選手たちはS班をどう見ているのか。2人の選手に聞いてみた。

安倍大成(photo by Shimajoe)

 今年デビュー2年目の安倍大成(25歳・埼玉=121期/A級2班)は「自分のイメージするS班は誰よりも競輪に向き合っているというか、向かい合わないといけない立ち位置ですよね。やっぱりプレッシャーは想像以上に凄いだろうし、そのプレッシャーをはね除けられる実力をつけないといけない厳しさしか感じない。あとは超人ですよね。この前の青森の古性優作さんのタテ・ヨコの動きは凄い。あんなのはS班というか古性優作さんしかできない走りです。やっぱり突出した物を持っていないとダメだろうし、あそこまでできないとS班にはなれないんでしょうね。

 そこまでの努力をしての神業。自分もあのレベルに行くのを理想にしたいですが、今は言うのも恥ずかしいレベル。本当に凄いとしか言えない。身近なところに同県の平原康多さんがいるけど、たまにバンク練習でお会いしますが畏れ多くて声を掛けられないですよ。オーラの出し方も違う。ただ同級生の眞杉匠君が今度S班になるので、そこは身近な目標として励みにはなります」

 今年本デビューの菊地圭(22歳・宮城=123期/A級3班)は、デビュー前とデビュー後で自身の見方に変化があったという。

菊地圭(撮影:北山宏一)

「高校一年生の時から自転車競技をやっていたのですが、その年のグランプリが2017年の平塚グランプリ。そこでSSの9人が走るレースを見て、とても印象に残っています。深谷さんが落車してしまったのですが、そこから再乗してゴールを目指す瞬間、凄い歓声の中をゴールして、メチャクチャ感動したのを覚えています。とにかくSSって凄い、グランプリって凄いなって印象でした」

 本デビューしてから4か月経った現在、S班の印象やイメージは変わったのだろうか。

「実際に選手になってレースを走ると強い人ばかりで…。こんなに強い選手がいる中で、トップの9人になるのって相当厳しいんだなって思いました。先月の地区プロで慎太郎さんや守澤さん、新田さん、新山さんなど北日本のSSの先輩達を初めてお会いする機会があって少しお話しました。自転車のポジションや細かい部分の考え方、もちろん脚力は凄いのですが、それ以外の部分でたくさん勉強になりました。SSの選手は考え方など含めて脚だけじゃないと感じました」

 格好良いポイントを聞いていみると、「走っているときの雰囲気ですかね。レース中に赤いパンツの選手がいると雰囲気出ますよね(笑)。あとは発走機に付いたときのオーラとか。強そうに見えるし独特な雰囲気を感じます」


 脚力はもちろん他の選手より秀でたストロングポイント、そしてプレッシャーへの対応。競走力と人間力を合わせ持ち、まさに競輪界を背負っているのがS班といえそうだ。

S級S班特集公開スケジュール

11月15日(水)【入門】競輪界のスーパーヒーローS級S班とは何か?
11月16日(木) 2023年S級S班激闘譜
11月17日(金)【経験者が語るS級S班】武田豊樹選手インタビュー
11月18日(土)【経験者が語るS級S班】和田健太郎選手インタビュー

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