2023/09/13 (水) 18:00 68
元グランプリレーサーで競輪評論家の加藤慎平さんがビッグやグレードレースで推したい注目選手を紹介。競走データからは見えてこない選手の特徴を解説します。今回は「共同通信社杯(GII)」に出場する新山響平選手です。
今回紹介するのは、昨年の競輪祭を制しS班として活躍する新山響平選手(29歳・青森=107期)。
新山選手といえば、前受けからの突っ張り先行が板に付いているイメージだ。残り2周をもがき切る突っ張り先行は、玉砕覚悟な戦法と言えるし、逃げ切るのは至難の技だと思われてきた。そうした超強気な戦法を、結果が求められるS班になっても貫き、今年、記念優勝はないものの、賞金ランキング8位(9月13日時点)とグランプリ圏内。級班問わず、突っ張り先行が増えてきたのは、新山選手の影響が大きいと見ている。
しかも、新山選手は捲りに徹することもできる。ただ、自身の抜きん出た先行力を磨くために、あえて先行するスタイルを徹底しているようにも映る。
その突っ張り先行を可能にしているのが、トップスピードの高さ、トップスピードに到達するまでの速さ、スピードを維持する持久力。ハイレベルでバランスの取れた脚力だ。他のラインは、まともに戦ってもダメージが大きいので、隙を見つけてのゲリラ戦を挑まざるを得ない。それが新山選手の最大の強みと言えるだろう。
※突っ張り先行…他の選手が先行するために上昇してきても、内側から先行し続け先頭のポジションを譲らないこと
先行選手は1つのラインだけではなく、第2、第3ラインへの対応が必要。複数のラインが動き、展開はレース終盤にかけてめまぐるしく変化する。新山選手のウィークポイントは展開への対応力だと見ている。
その一例が、前場所の立川記念(GIII)の初日特選。残り2周で犬伏湧也選手と清水裕友選手が早めに捲ってきた展開となったが、その時にスッと引いたのは完璧だった。しかし、その後さらに眞杉匠選手がカマし、清水選手が眞杉選手を飛ばして、入り乱れた展開になった時に、3番手をキープできなかったのは痛かった。危険を感じ、ラインの切れ目を探そうというマインドに変わってしまった。一瞬ひるんだタイミングで、ライバル選手に付け入る隙を与えてしまう脆さはある。
勝ち上がりが関係ないレースでは、ライバルも玉砕覚悟で新山選手を叩いてくることも多い。逆に勝ち上がりが必要な場面では、ライバルも慎重になるため主導権を取りやすい。立川記念でも、着順は9・2・3・7着。勝ち上がりが必要な二次予選や準決勝では堅実に3着以内に入ってくるが、それ以外だと着順が大きくなる傾向にある。
幸いにも、今開催の共同通信社杯は、特選が行われず全レース勝ち上がりが必要な状況となる。新山選手にとっては追い風となるだろう。
メンバー構成を見ても、北日本勢は選手層が充実している。佐藤慎太郎選手をはじめ、和田圭選手、成田和也選手など、協働してくれる選手も多い。3車のライン構成になる局面も多そうで、新山選手にとって勝ち上がりは圧倒的に有利と見る。ただ、決勝に近づくにつれ、新田祐大選手や小松崎大地選手など、同地区の自力型と同乗する確率も高くなる。そうなると責任感の強い新山選手なだけに、ラインを引き出すようなレースをして、着順が大きくなる可能性も高くなりそうだ。
車券としては、1着を新山選手の番手選手に据えて、2〜3着に新山選手を置くのがおすすめだ。あとは新山選手に玉砕覚悟で挑むラインがありそうな時は、第3ラインの自力型を狙うのも得策だろう。
新山選手にとっては地元青森での特別競輪。カントが立っていて捲りやすいイメージがあり、逃げ切りが難しい青森でどこまで存在感を発揮できるか注目したい。
新山響平選手3行メモ |
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主戦法は前受けからの突っ張り先行 |
相手が慎重になる勝ち上がり戦は車券に入れる |
特選や決勝戦近くは番手、もしくは第3ラインの自力型が狙い目 |
加藤慎平
岐阜県出身。競輪学校81期生。1998年8月に名古屋競輪場でデビュー。2000年競輪祭新人王(現ヤンググランプリ)を獲得した後、2005年に全日本選抜競輪(GI)を優勝。そして同年のKEIRINグランプリ05を制覇し競輪界の頂点に立つ。そしてその年の最高殊勲選手賞(MVP)、年間賞金王、さらには月間獲得賞金最高記録(1億3000万円)を樹立。この記録は未だ抜かれておらず塗り替える事が困難な記録として燦々と輝いている。2018年、現役20年の節目で競輪選手を引退し、現在は様々なメディアでMC・解説者・コメンテーター・コラムニストとして活躍中。筋トレ、サウナ、ゲームなどに造詣が深い。
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