2023/08/06 (日) 12:00 35
競輪界では知らない者がいないヤマコウこと山口幸二さんの予想コラム。元トップレーサーならではの鋭い読みは必見です。
富山競輪開設72周年記念瑞峰立山賞争奪戦GIII決勝メンバーが出揃いました。メンバー、ライン構成は以下の通りです。
①浅井康太(三重・90期)
③松浦悠士(広島・98期)ー⑧柏野智典(岡山・88期)ー⑦小倉竜二(徳島・77期)
④北井佑季(神奈川・119期)ー②郡司浩平(神奈川・99期)ー⑤佐藤慎太郎(福島・78期)
⑨眞杉匠(栃木・113期)ー⑥恩田淳平(群馬・100期)
連日の猛暑の中、走る選手も大変ですが外で声援を送るファンの方にも頭が下がります。顔を真っ赤にして、勝っても負けても声援を送る姿を見ていると、少しでもファンサービスをしてあげて欲しいなと思います。新山響平は調子は悪くなかったと思いますが、準決で叩きに来た相手が森田優弥(埼玉・113期)だったので、脚を休めるところがなかった。そこが敗因ですね。常に挑戦を受ける立場に変わったので、簡単に先行させてもらえません。決勝に乗れなかったのは残念でした。
勝ちっぷりが良かったのは④北井と⑨眞杉ですね。眞杉のレースはもう完成されています。無理に先行することもありますが、基本的に行けるところから仕掛けて着に残る。イン粘りを覚えただけで、これだけ戦法が広がりました。最終的に踏み合う形から中団を狙うこともあるでしょう。初日単騎で9番手捲り、二次予選、準決勝はホーム捲り、無傷で決勝に駒を進めました。
対して④北井も三連勝です。二次予選は突っ張り先行、準決勝はホーム捲りで郡司浩平を振り切りました。②郡司は多少甘めの差し脚だったとは思いますが、④北井は無闇に突っ張って末脚を欠くことなく、冷静に3番手を取り、ホーム捲りを決めたことはレース全体の流れが見えていたのだと思います。
④北井はオールドルーキーなので、残された時間は限られています。その中で、失敗を繰り返さないようにレースに取り組んでいます。例えば誘導待避線の問題。私はこのルール自体に問題ありだと思いますが、決まっている以上、限られたルールの中で戦わなくてはいけません。「今のレースは内枠が有利なので、誘導待避線を斬るスピードをもっと上げたい」と言っています。先行して逃げ切る脚力を追求するには、待避線のことまで気を配らないといけないのは少しかわいそうだと思いますが、「自分がされて嫌なことは相手がされても嫌だと思うので、考えたレースをしたい」とも言っていました。「それらをクリアしてもうひとつ上のステージに行ける」からです。
スタートは外枠の⑨眞杉が取って、中団④北井、後攻めが③松浦で考えます。この初手だと、③松浦は一度動いて④北井ラインの後ろを取ることができ、尚且つ④北井と⑨眞杉のもがき合いを誘発できます。
S.⑨⑥ ④②⑤ ① ③⑧⑦
←⑨⑥
2.④②⑤ ③⑧⑦ ①
←⑨⑥
H.④②⑤ ③⑧⑦ ①
もがき合えば③松浦が有利ですね。調子も悪くない上に、レースを読む力も長けています。⑧柏野が付いて行けないこともあるでしょう。
・本線
2=3ー157
④北井は⑨眞杉を出させて3番手捲りなら優勝の可能性があります。
・別線
4ー2ー1356
④北井は高松宮記念杯で新山響平に負けて、いろいろ得るものがあったようです。第二の故郷は富山なので、あっと驚く結果も期待したいですね。(スピードチャンネル専属解説者)
山口幸二
Yamaguchi Kouji
岐阜県大垣市出身。日本競輪学校62期卒業の元競輪選手。1988年9月に大垣競輪場でデビュー、初勝利。1998年のオールスター競輪で完全優勝、同年のKEIRINグランプリ'98覇者となる。2008年には選手会岐阜支部の支部長に就任し、公務をこなしながらレースに励む。2011年、KEIRINグランプリ2011に出場。大会最年長の43歳で、13年ぶり2度目のグランプリ制覇を果たし、賞金王も獲得した。2012年12月に選手を引退、現在は競輪解説者としてレース解説、コラム執筆など幅広く活動する。父・山口啓は元競輪選手であり、弟の山口富生(68期)、息子の山口聖矢(115期)・山口拳矢(117期)は現役で活躍中。