2023/07/25 (火) 12:00 57
競輪界では知らない者がいないヤマコウこと山口幸二さんの予想コラム。元トップレーサーならではの鋭い読みは必見です。
福井競輪で開催中の「福井競輪開設73周年記念 不死鳥杯(GIII)」決勝メンバーが出揃いました。ライン構成は以下の通りです。
②佐藤慎太郎(福島・78期)
③清水裕友(山口・105期) - ⑤柏野智典(岡山・88期)
⑦古性優作(大阪・100期) - ⑨稲毛健太(和歌山・97期)
⑧藤井栄二(兵庫・99期) - ①脇本雄太(福井・94期) - ⑥鷲田幸司(福井・92期)
④河野通孝(茨城・88期)
⑧藤井の後ろに④河野が競りに行きます。①脇本にとっては試練の決勝となりそうです。逆に他のラインの自力選手(③清水と⑦古性)はチャンスが広がりました。①脇本は、位置取りを考えなくても勝てるほどの脚力を有しています。気持ちは分かりますが、ラインや後輩を重視することで優勝のチャンスが遠のいた印象です。「藤井、後ろ付いとけ!」でもいいと思いますが…。
競りに行く④河野も、地元の①脇本に競るのでそれなりの覚悟があってのことでしょう。よく「今のスピード競輪に競りは流行らない」と聞きますが、それは昔も流行らないし今も流行りません。昔も競りは大敗が伴うことを覚悟して番手に攻め込みました。流行る流行らないの問題ではなく、攻めることで他の選手にプレッシャーを与えるのです。
カマシや捲りが主体の現代競輪はダッシュが全て。付いて行くだけでも大変なのに、並走で脚を使って付いて行くのは至難の業なのは分かります。しかし、レース形態は変わっても人間の本質は変わりません。
つまり、嫌なことをする選手は警戒されます。どこかに懐刀を持っていない選手は軽く見られます。
その意味では④河野は流れ込みを狙ってどこにいたか分からないレースをするより、攻めることで存在感を示そうとしています。これが大切です。普段から攻めるレースをしている選手とそうでない選手。前を走る選手に気持ちの変化があるのは当然だと思います。攻めることをしないで中間着だけを狙い、点数を上げて番手を回ろうとする選手が多すぎる。④河野は「追込み選手はただ付いて行くだけではない」とアピールし売り込んでいるのです。面白い競輪とは何か。なぜ9車の競輪の売り上げが伸び悩んでいるのか。国際規格に近づこうとすればするほど競輪の面白い部分が希薄になり、レースを分かり辛くしているからです。
⑧藤井の番手を回る①脇本ですが、昨年の西武園オールスター競輪決勝のように連結を外しても捲る脚力があります。後攻めだと③清水も絡んでくるかもしれないので、前受けして突っ張るのが最善でしょうね。後ろになる⑦古性が動いてレースが始まります。
④ ←⑦⑨
S.⑧①⑥ ② ③⑤
⑧藤井に突っ張られて⑦古性は後退して体勢を立て直します。番手は④河野になるでしょう。
⑦⑨
打鐘.←⑧ ④ ①⑥ ② ③⑤
←① ←③⑤ ⑦⑨
B.⑧④ ⑥②
・本線
①ー③⑦ー②③⑦⑤
①脇本が3番手から捲る展開になるかどうかは③清水が鍵ですね。①脇本が捲る前に3番手が取れたら①脇本は苦しい展開になると思います。
⑧④ ③⑤ ② ⑦⑨
H. ①⑥
←③⑤ ⑦⑨
B.⑧④ ② ①⑥
・別線
③ー②⑤⑦ー②⑤⑦
「餅は餅屋」「適材適所」という言葉を、①脇本がはねのけることができるのか興味津々の一戦となりました。
山口幸二
Yamaguchi Kouji
岐阜県大垣市出身。日本競輪学校62期卒業の元競輪選手。1988年9月に大垣競輪場でデビュー、初勝利。1998年のオールスター競輪で完全優勝、同年のKEIRINグランプリ'98覇者となる。2008年には選手会岐阜支部の支部長に就任し、公務をこなしながらレースに励む。2011年、KEIRINグランプリ2011に出場。大会最年長の43歳で、13年ぶり2度目のグランプリ制覇を果たし、賞金王も獲得した。2012年12月に選手を引退、現在は競輪解説者としてレース解説、コラム執筆など幅広く活動する。父・山口啓は元競輪選手であり、弟の山口富生(68期)、息子の山口聖矢(115期)・山口拳矢(117期)は現役で活躍中。