2021/04/21 (水) 12:00 4
山田英明(38歳・佐賀=89期)の2021年は、2020年KEIRINグランプリ次点からの戦い。昨年11月GI競輪祭(第62回朝日新聞社杯競輪祭)を走り終え、最後の最後にその切符は手からこぼれ落ちた…。
「また来年も頑張ります。声、かけてください」。不退転の決意の挑戦も、届かずに終わった。
9月伊東で開催されたGII共同通信社杯の決勝は1着入線も失格。優勝ならばほぼグランプリ出場が決まるところだったが、そこでは決められなかった。1段ずつ階段を上がってきた雑草。その1段も着々と上ったのではなく、はいつくばって上がってきた。
でも、一番上が見えない…。
“KEIRINグランプリに出る。その舞台に立つ。赤いレーサーパンツを履く。”
心も体もボロボロ。2021年、戦えるのか。2月川崎のGI全日本選抜。初日特選で3着に入った後「やっと気持ちが入ってきました」と笑った。悲壮感はなく、もう一度何かを心に決めた顔だった。全日本選抜は準決勝で失格の憂き目に遭ったが、その決意の固さを示したのが、3月松阪のウィナーズカップだろう。
準決勝で厳しい展開から内を突いて3着に潜り込んだ。「ヒデちゃんの心は、死んでないぞ」。諦めない走りが“山田英明”を彩るようになった。これは、赤いパンツを履く資格につながるものだと思う。“”この男の走り”がある
A級からS級へ上がるのも順調とは言えなかった。伝説でもあるのはS級デビュー戦。
地元の武雄で「99失」。2006年1月の話だ。2011年4月、東日本大震災後の武雄共同通信社杯春一番の時には、場内で募金箱を持って立っていた。
GI決勝に勝ち上がるまでも一歩一歩。いろんな人にアドバイスをもらい、愚直に取り入れ、試行錯誤し、力をつけててきた。GIIIでも2015年8月の富山、決勝1着失格で泣いたこともある。
弟の庸平(33歳・佐賀=94期)もたくましくなった。昨年10月GI寬仁親王牌で兄弟同乗の快挙もあった。一つひとつはすべて今に生きている。
昨年12月佐世保F Iの決勝。中本匠栄(34歳・熊本=97期)が菅田壱道(34歳・宮城=91期)をマークし、松岡貴久(36歳・熊本=90期)が岩本俊介(37歳・千葉=94期)をマークするという並びがあった。九州、それも熊本2人が別線で、しかも他のラインの後ろとは…。「おやっ」と思われたので、競輪祭の時に中本に取材に行った。すでにその時、周りからも言われていたようだった。
中本は山田が1着失格した伊東共同杯の繰り上がり優勝者。何が求められていたか。「気の迷いでした…」。目を泳がせ、自分自身を責めていた。
「中本さんは、山田英明の前で頑張らないといけない選手だから、それを九州で一番期待されている選手だから、みんなもいろんなことを言うんだと思うよ」と話すと、「間違ってました…」とつぶやいた。
この武雄記念には中本はいない。相手は今を時めく強豪ばかりで、九州勢は劣勢ともいえる。そこを九州の選手たちの頑張りで山田がどんな結果を残すのか。
そして5月の京王閣ダービー(4〜9日)へ。
その時は今年、山田と中本の物語がどう進むのかを見ていきたい。コロナ禍は深刻度を増すばかりとなり、非常に不安だ。昨年は直前に中止となってしまった日本選手権だが、先手先手の準備を施し、開催につなげてほしい。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。