2023/05/01 (月) 12:00 30
平塚競輪場で「第77回日本選手権競輪(GI)」が2〜7日の日程で開催される。武雄記念の準決で落車した平原康多(40歳・埼玉=87期)が欠場になり、ムードが変わる。関東の大黒柱が抜け、一昨年の「高松宮記念杯競輪」が思い出される。
高松宮記念杯競輪は川越工業高校のジカの後輩にあたる宿口陽一(39歳・埼玉=91期)の優勝だった。まさかといっていいGI初制覇。平原の欠場から、の関東のストーリーだった。宿口はS班として戦った昨年は苦しみ抜き、今年はそうした圧迫感から逃れて走っている。「今回も頑張らないと」の気持ちだろうが、一番期待がかかるのは吉田拓矢(27歳・茨城=107期)だ。
“平原の後を継ぐもの”として期待されながら、平原がやってきたことを上回れず苦しんでいる。そうはいっても関東を引っ張り続けたきたのは事実で、この男がなんとかしないといけない。平原が落車したレースで前を回っていたことも、責任を負う理由になる。
脇本雄太(34歳・福井=94期)は武雄記念を完全Vで仕上げた。決勝は2段駆けの上をまくる新山響平(29歳・青森=107期)のさらに上を飲み込むものだった。悪魔的。“魔王”と呼ばれる最近の強さが存分に出ていた。
持病の治療を行いながら、になっても最低限の力を出せる状況には戻ってきた。それでももちろんワッキーも人間だ。波がある状態の中で武雄を走ったことでダービーに向けて、を確認できたことが大きい。
3回目の“ダービー王”へ。3月別府競輪の「ウィナーズカップ(GII)」では古性優作(32歳・大阪=100期)の後ろを回って感じたこともあるだろう。
見えていなかったもの、見えづらかったものが見えたワッキーは“大魔王”への道を突き進む。
懐かしいのが写真のシーンで、稲垣裕之(45歳・京都=86期)が優勝した脇本に「まあまあやな」と渾身のボケをかましたところだ。村上義弘さんはおそらく人生で一番あきれた表情でため息をつくと「お、ま、え、は!」と稲垣にツッコんでいた…。
小田原記念での南関結束が大きな潮流を生む。主役は郡司浩平(32歳・神奈川=99期)。演出家ともいっていいのが深谷知広(33歳・静岡=96期)だ。小田原で身をもって示した南関への意志は、南関の選手全員をそそり立たせる。
全国を制圧できるメンバーがいるはずの南関。立ち遅れている今の座から脱却する。
中四国勢にもそれは言える。松浦悠士(32歳・広島=98期)を支えつつ、やはり清水裕友(28歳・山口=105期)の大復活があってこそ、だ
近畿と北日本が席巻する今を、変えられるのは誰なのか。九州・嘉永泰斗(25歳・熊本113期)の名前は挙げておきたい。
野口諭実可(30歳・大分=102期)がガールズケイリンの意義を示す。ガールズ1期生の二次試験を競輪学校(現養成所)に取材に行った時が思い出されてならない。まさかガールズケイリンコレクションに出場することになろうとは…。夢にも思わなかった。
1期生の試験には自転車競技の経験者の他、多種目で活躍したアスリートが名を連ねていた。そんな中、野口は特筆する運動歴のないただの女子高生だった。
「野口のような自転車経験のない人でも活躍できれば、将来的に多くの人に選手を目指そうと思わせることができる」
ゆえに大事な挑戦だという記事を書いた。あの当時、おそらく最も弱く、最も不安だった野口。「クビになると思ってました」と振り返るほど苦しみながら、自分の力で手にしたガールズコレクションの出場権。強い走りを、見せてくれるはずだ。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。