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【日本選手権競輪】平塚ダービーの主役をさがせ! 2023年序盤戦が示す“今年の流れ”/吉井秀仁×鈴木誠スペシャル対談・前編

アプリ限定 2023/04/28 (金) 12:00 31

平塚GI・日本選手権競輪の開催を記念してnetkeirinコラムリストであり、ウマい車券の予想家としても活躍している吉井秀仁氏と鈴木誠氏のスペシャル対談をお届けします。今回は前編として「現在の競輪トレンド」をはじめ「勢いのある地区」などを語っていただきました。日本選手権競輪の優勝経験もある吉井氏と鈴木氏が、来たる平塚ダービーを占うべく、2023年序盤戦を“台本ナシ”でぶった斬ります。(取材日:2023年4月17日(月)/取材・構成:netkeirin編集部 篠塚久)

吉井秀仁氏×鈴木誠氏による日本選手権競輪展望

ーー吉井さん、誠さん、今回は日本選手権競輪(以下ダービー)の開催展望として、今年ここまでの振り返りや注目すべき選手、各地区の勢力などをうかがえたらと思います。ダービー優勝経験者のお二人による台本ナシの一発録り“スペシャル座談”をよろしくお願いします。

吉井 筋書きなしのフリートークで楽しんでもらえるか心配だが、今年ここまでを見て話せることは山ほどあるし、やってみっか。それはそうと優勝経験者と言ったってオレの頃と誠の頃と今とで競輪は違う。時代によって変わるからね。オレが見る限りの今年の競輪をああだこうだ言わせてもらう。誠、きょうはよろしくな!

 吉井さんよろしくお願いします。そうですね。トライアルレースで出場権利のポイント争いをしたり、それは廃止されたり。開催概要もラインの概念も戦法のトレンドも、競輪は時代とともに変化していますからね。今年には当然今年の競輪がある。ダービー前にいろいろと話をしてみたいと思います。

上位選手のラインに対する意識変化

ラインの価値が変化している(撮影:北山宏一)

吉井 今年ここまでを見ていて本当に「ラインの重み」を感じるレースが多い。そう思わないか? 誠はどう見てる?

 同じ感想を持っています。ライン連係の重要性--。これは今年ここまでのキーワードと言っても良いと思います。

吉井 速いタイムを出す選手は沢山いる。時代はスピード競輪。それに関連して『上位選手のラインへの意識』がより一層高くなっている気がするんよ。

 年々タイムが速くなっていると思うんですが、その流れがラインへの意識を高めてますよね。タイムを計算すれば脚力勝負できない選手も出てくる。脚力勝負できる選手もタイムだけの計算をしていたら抜けた存在にはなれません。そこで各選手は「ラインでどう戦うか?」を追求しているのだと思います。ひとり例を挙げるなら新田祐大。新田は「前を取って引いて7番手から行っちゃえ」みたいな走りが激減しています。タイム差を計算して作戦を練っていて、走りを変えてきていますよね。実力が拮抗している今の競輪に対策できています。

吉井 新田は本当にイン粘りなんかもやるようになっているよな。それだけじゃない。ラインの後ろの選手に「お前なら捌けるだろ!」って信頼のもと戦法を組み立てて走るようにもなっている。小田原の準決勝なんて「和田圭なら捌ける」と睨んで、ラインありきで得意のダッシュ勝負に打って出た。スタイルの幅を広げながら成長している。あの走りは渋いなって思ったよ。

新田祐大(撮影:北山宏一)

 小田原記念は全体的にラインの重みが色濃く出ているシリーズでしたよね。深谷も郡司も新田も眞杉も、全員調子が良かったように思います。そこで勝つためにはラインで戦うことが必要だったと思うんです。あのクラスの選手が全員調子いいと、それこそ実力が拮抗します。あの準決勝、新田は決勝を見据えていたところもあって「松井宏佑を勝ち上がらせない」の意識もあったように見えました。小田原記念だけではなく、今年の新田は本当にイメージが違います。

吉井 イメージが違うといえば渡邉雄太なんかもかなり良くなってないか? 深谷が移籍してから練習をともにして変化したのか、まったく走りの質が違う。これまでは「中団取って捲れるところで捲っていくか」といった競走が目立っていたが、「行くときは行くからな」という姿勢が見て取れる。これもラインへの意識変化、選手としての成長じゃないかと思う。

 南関の話で言えば郡司浩平もラインへの意識をさらに一段高めているような気がします。郡司の凄いところは強くなって地位があっても、「千葉の開催であれば千葉の選手のために、静岡の開催であれば静岡の選手のために」みたいな配慮ができるところ。今年の大宮で深谷の前を走った郡司は圧巻でした。大宮の500を最終ホーム手前から行くのは気持ちが入っている証ですよね。ラインのために、深谷のために、の意識が見えました。

吉井 郡司は去年よりもラインを強く意識してるよね。それは間違いないと思う。大宮記念の決勝だけではなく、番手を回るときのサポート姿勢も去年と違う。上位選手が本気でライン重視で戦うようになっているから、ダービーも番組が重要だし、誰が誰と連係するのかが勝敗を左右するだろうね。いつにも増して。

郡司浩平(撮影:北山宏一)

脇本雄太の存在と平塚のバンク特性

吉井 やっぱ「ラインの結束力」がシリーズの流れを決めるし、勝敗まで分けている。このトレンドはダービーでも顕著に表れるだろうな。

 そう思いますね。トレンドといえば『上位陣の脇本への意識』もより強くなっていますよね。脇本が「開催に出場しているのか出場していないのか、調子は良いのか悪いのか」に注意を向けている様子が見て取れます。昨年の「脇本一強」みたいな構図にどう立ち向かうのか? と上位陣は考えている気がします。これまでも警戒していたに違いありませんが、今年の雰囲気を見るにさらに警戒しているように思います。

吉井 だからこそダービーにおける脇本の腰の状態は気になる。高知記念の初日特選なんて強過ぎた。あのレースを見て脇本は完全復調じゃねえかと思った。だが、本人のコメントをチェックすると、まだ状態を戻し切れていない感じだし。脇本の調子ひとつでシリーズの動向は変化するだろうね。とんでもない存在だと思うよ。

 はい、“脇本の調子次第”で色々と変化があると思います。高知記念の初日特選の話でしたが、ダービー開催地の平塚も高知っぽいバンクですよね。カントの緩い平坦なお皿バンクは捲りが効きにくいから、脇本がどこまで調子を戻して出て行くかはキーポイントになりますよね。

脇本雄太(撮影:北山宏一)

吉井 そういや高知と平塚ってバンク似てるよな。高知の結果は平塚の予想の参考になるよ。

 バック過ぎ3コーナーで止まる感じとか似てます(笑)。捲りが効きにくいバンク特性で、吉井さんが注目している選手はいますか?

吉井 オレは新山響平かな。そもそもオレは新山推しみたいなところがある。今年序盤は初のSS班で気持ち的に違うものがあった気がするんよ。それが走りに出ちまってた。でも四日市では“新山らしさ”が戻っていて、長い距離を踏める能力を活かす走りができている。戻してきた新山と平塚バンク。おもしろいんじゃねえの!? 誠は誰に注目する?

 犬伏です。あのダッシュは楽しみにしちゃいますよね。あ、でも最近町田もいいんですよね。平塚の捲りにくいバンクだとタイムがものをいうことにもなると思うので、中四国の若手コンビにはどうしても期待しちゃいます。大垣記念決勝の犬伏はラスト1周のタイムが驚異的でした。

吉井 大垣記念の犬伏はタマゲタ!

「ラインの結束力」がダービーのキーワードになると思いますが、タイムを持っている選手の台頭、脇本の調子の良し悪しはシリーズ中にチェック必至ですよね。

新山響平(左)と犬伏湧也(photo by Shimajoe)

ダービーの中心になる地区

吉井 選手個人ではなく、地区で見たらどうよ? どの地区に勢い感じる? 中心軸は近畿と言いたくなるが、中四国にも勢いを感じる。南関だって互角かそれ以上だろう。そう思いきや、関東にもポテンシャルの高い若手選手がわんさか。とてもじゃないが侮れない。そのあたりの見解はいかがなものか? 『ラインの結束力が勝敗を分けるダービー』ならば、どの地区がどれだけの人数で勝ち上がれるかはかなり重要になるだろうよ。

 そうですね。地区という括りだと近畿は魅力ですが、やや脇本の調子次第みたいなところも見え隠れしていませんか? 中四国は異論なしです。本当に勢いを感じてます。ただ、ダービーだけを考えるなら、先行が抜群に揃っている南関勢力が厚いと思います。メンバーを見ても松井、野口、北井、深谷、渡邉雄太など気風のいい先行選手が目白押しです。中四国は今後化けていくことに疑いの余地ないですが、今年のダービーに的を絞れば南関が強い気がします。

吉井 地元地区の開催だし、オレたちのイチオシは『南関に分があり』って結論でいいかな。

 とにかく先行選手の強いのが揃い踏みですからね。勝ち上がり優勢と見て良いのではと思います。

深谷知広(撮影:北山宏一)

ダービー予想の面白み「負け戦もアツいんだよな!」

吉井 話は変わるが、ダービーの車券予想って全体的に負け戦が面白いと思う。誠もこの気持ちわかるべ? 誰がこの格式高いGIを勝ち上がるのかは当然面白い。でもレース予想に関しては負け戦にも絶大な魅力があるんだよな。

 わかります。ダービーともなると通常と違う選手心理が働きますよね。「誰が後ろにつくか」、「この選手はこの選手にライバル意識あり」とか、いつもよりも選手の気持ちが濃くレースに出ます。捲り中心で戦う選手が逃げるなんてこともあるし、追い込み選手だっていつもより派手にブロックにいったりする。「魅せる意識」が強まるんでしょう。何より現役時代の自分がそうでしたから。番組を見て「この番組は面白くなるぞ!」というのが必ずある。

「現役時代の気持ちと重ねて選手心理を考察します」と鈴木誠氏は語った

吉井 勝ち上がりを懸けた一戦はガチンコ勝負に決まってる。でも負け戦もガチンコなんだよ。観ているお客さんの数だって違う。観察されているライバル選手たちの目線だって違う。賞金だって違う。すべてが普通と違うのがダービー。たとえ勝ち上がりを逃してしまっても「ここでどんな走りを見せておくべきか」をしっかり考えて走る選手が次に繋がる糧を得られるってわけ。そういうことだよな?

 そういうことだと思います。個人的に読者のみなさんにおすすめしたいのはマーク屋の動向です。「オレはこんなことできるんだ!」って全国へ発信するアピールの場にもなるし、魅せれることで名前も上がる。マーク屋は大舞台で“技”や“姿勢”を見せることで評価される側面があるんです。そんなことを推理しながら予想をすると楽しいと思います。

吉井 選手心理を加味して荒れそうなレース見つけて車券予想するのが抜群に面白いんだよな、ダービーは(笑)。ウマい車券にも予想を出すつもりだから、読者のみなさんに利用してもらいたいね。余すことなくダービーを楽しみたい。

「穴予想にも気合が入るんよ!」と吉井秀仁氏は笑う

 元選手としては選手心理を読んだプロ予想を繰り出したいですね。吉井さん、ウマい車券も頑張っていきましょう!


 スペシャル対談の後編ではダークホースになり得る選手を挙げていただき、お二人の優勝候補を発表してもらいました。後編はダービー直前の2023年4月30(日)16時30分に公開を予定しています。

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