2023/02/26 (日) 12:00 6
現役時代はKEIRINグランプリを優勝するなどトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は高知競輪場で開催されている全日本選抜競輪の決勝レース展望です。
今年初めてのGIとして開催される【全日本選抜競輪】。高知競輪場での開催は2003年以来、20年ぶりとなります。
その時にGI初制覇を果たしたのが、今大会にも出場していた佐藤選手です。2着は小野選手で、自分は前の2人と捉え切れずに3着でしたが、落車しながらのゴールとなっただけに強く印象に残っています。
今年の1月に改修工事が終わり、とても色鮮やかな綺麗なバンクになりました。ただ、お皿型で直線が短いという、バンクの特徴は当時と変わってないですね。
500バンクの割には先行選手も残りやすく、3コーナーでの捲りは決まりにくいので、早めに叩くか、3コーナー過ぎから仕掛けていくのがセオリーと言えるでしょう。
決勝にはSS班から脇本選手、古性選手、新田選手、守澤選手の4名が駒を進めてきました。その中でも注目していたのが、昨年のグランプリ覇者である脇本選手でした。
2日目のスタールビー賞は先行を見せたものの、2コーナー過ぎで新山選手に叩かれて後退。9着に敗れています。ただ初日の特選では、新山選手の捲りの更にその上を乗り越えながら、上がり13秒6を記録しています。
また準決勝でも早めの仕掛けで、眞杉選手を叩くと、古性選手、浅井選手の2人を引きつれて、ラインでの上位独占を果たした走りも見事でした。
この決勝では準決勝と同様に脇本選手-古性選手で並んだだけでなく、3番手を【春日賞争覇戦】で完全優勝を果たした三谷選手が固めたことで、更に盤石のラインとなった印象があります。
この近畿ラインに対抗できそうなのが、新田選手-守澤選手-成田選手の北日本ライン。また混成ラインとなるのが吉澤選手-香川選手の並びですが、この2人は過去にも連係実績があったようです。準決勝では近畿ラインの2人の後ろにつけた浅井選手ですが、今回は単騎を選択しました。
実質、近畿ラインと北日本ラインの二分戦となった決勝ですが、先行意欲が強いのは脇本選手だと見ています。
スタートを新田選手が取った場合、脇本選手は4番手からのレースとなります。この決勝でも7番手まで下げての先行がセオリーかもしれませんが、後ろにいる浅井選手と吉澤選手が切り替えてくれるのを想定した上で、抑え先行もありえるかもしれません。
脇本選手が先行した場合に、優勝に最も近いのは番手を回っている古性選手です。
今大会の古性選手は出来の良さだけでなく、スタールビー賞で切り替えていった走りにも証明されているように、勝負勘の良さも抜群です。
新田選手が先行して、脇本選手が捲りに切り替えたとしても、ゴール前での接戦に持ち込めるのは古性選手以外にいないでしょう。
また新田選手が先行した場合には、番手を回っている守澤選手も怖い存在となります。また、準決勝でバースデー勝利も飾った成田選手も今大会は調子がいいだけに、3番手と言えども侮れません。
新田選手ですが【鳳凰賞典レース】で、5車で並んだ南関東ラインを相手に、スタートを取ってからのイン粘りで松井選手の番手を取り切って優勝を果たしています。
ここで古性選手を相手にイン粘りはしてこないと思いますが、三谷選手の後ろを取り切れるようだと、レースが俄然面白くなってきます。
吉澤選手はこの2人を相手に先行は無いと思うだけに、イン粘りをするか切れ目を見つけての捲りとなるでしょう。浅井選手はこのメンバーを相手に単騎だと、さすがに苦しいのではないのでしょうか。
いずれの展開になったとしても、優勝に最も近いのは古性選手だと思います。実力的にもグランプリの9名に入ってくると思いますが、ここで権利を取ることによって、脇本選手を始めとした近畿の選手たちの機運も更に盛り上がってくるはずです。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。