2023/02/19 (日) 12:00 7
現役時代はトップ選手として長く活躍し、現在は評論家として活動する鈴木誠氏の競輪予想コラム。今回は伊東温泉競輪場で開催されている施設整備等協賛競輪の決勝レース展望です。
S級S班不在の開催となった【施設整備等協賛競輪】ですが、決勝戦の上位3名には【競輪祭】の出場権が与えられます。
G3大会での初優勝は勿論のこと、【競輪祭】への切符を得るべく、若手の先行選手を中心に白熱した戦いが繰り広げられています。その中でシリーズリーダーの名に恥じないレースを、連日に渡って見せているのが山口選手です。
初日は接触で車体故障のアクシデントに見舞われましたが、二次予選を快勝すると、準決勝での上がりタイムは9秒4を記録。これは準決勝3レースの中では最速となっています。
一方、隅田選手は坂本選手と石塚選手の捲り合戦の更に上を捲っていきながら勝利。青野選手も先行を見せて、ラインでの上位独占を果たすなど、各レースで自力型の見せ場がありました。
決勝の並びは2車となったものの、準決勝と同じ前後となったのが、山口選手-川口選手の岐阜コンビ。そして青野選手-竹内選手-佐藤選手の東日本ラインもまた、準決勝と同じ並びとなりました。西日本ラインで一つとなったのが、阿部選手-隅田選手-久保田選手で、石塚選手は単騎を選択しました。
ラインができた3人の中で、先行意欲があるのは阿部選手と青野選手です。ただ、阿部選手は準決勝でも、前受けした山口選手のインを切ったものの、後方から動き出した齋木選手を先に出しました。
この決勝でも車番的に前受けをするのは山口選手、中団が青野選手となるでしょう。後方となった阿部選手は一度、山口選手を抑えにいくものの、最終的には青野選手にバックを取らせて、その後ろに控えると思います。
後方となった山口選手ですが、早めには捲ってこないので、その前に阿部選手は前をとらえにかかるはずです。もし、かかりきった青野選手をとらえ切れなかった場合でも、そこから番手捲りをしてくるのが隅田選手です。
ダッシュ力に優れる隅田選手はこのメンバーでも抜けた存在です。また、青野選手の番手となった竹内選手の番手捲りは考えにくいだけに、隅田選手は準決勝と同じようにバンクの高い位置から東日本ラインを一蹴して、そのままゴールまで押し切ってしまうはずです。
スピード勝負に持ち込みたい山口選手は、青野選手と阿部選手がもがき合い、ラインが短くなった時にチャンスが生まれてきます。その機会を見逃さずに動き出して行けるかが、勝敗の分かれ目となってきます。
初日に車体故障を起こした山口選手ですが、落車もせず、そして破損した車輪が前輪だったのは幸運でした。
初日の後のコメントでは気になる点もあったようですが、それでもレースごとに修正できているのでしょう。むしろ、動力がかかる後輪のトラブルの方が厄介だったはずです。ちなみにスポークの張りを硬くすると、脚への疲労やダメージは蓄積されますが、その分、一瞬の踏み込みは鋭くなります。
自分の現役時はスポークを硬く固定するために、はんだでとめていました。こうすれば何らかの理由でスポークが2、3本折れたとしても、推進力にさほどの問題はなくなります。
山口選手も検車場でスポークを硬くしたり、もしくは緩めたりと、この二日間で調整してきたはずです。借り物の車輪といえども、決勝当日は更に自分の脚にフィットした走りを見せてくれると思います。
鈴木誠
千葉県市原市出身。日本競輪学校第55期卒。千葉経大付属高校の頃から競輪に没頭し、吉井秀仁氏に師事。現役時代はすべての戦法を完璧にこなし、「本物の自在型選手」と評されるほど多彩なストロングポイントを武器に、引退するまで長きにわたってトップ選手として君臨した。現役時代は通算3058戦665勝、優勝109回(うちGIは競輪祭新人王を含め4回、GP1回)、年間賞金王1回、通算獲得賞金は17億を超える。18年7月に、ケガのため惜しまれつつ引退。引退後は選手経験を生かし、解説者として活躍。スピードチャンネルなどの番組にも出演している。