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不屈の男・金子貴志の奮闘記 〜40代の挑戦〜

【金子貴志の出会いと別れ】一丸安貴さんの引退と弟子の悔し涙、“今”を生きる大切さ

2023/02/15 (水) 18:00 31

 netkeirinをご覧の皆さんこんにちは、金子貴志です。先日、愛知支部長も務めた一丸安貴さんが引退されました。今回は一丸さんとのエピソードを交えながら「出会いと別れ」をテーマに書いていきたいと思います。

競輪人生には出会いもあれば別れもある(撮影:島尻譲)

一丸安貴さんの引退

 私と一丸さんは年も近く、これまでお互いに切磋琢磨し、競輪のことも競輪以外のプライベートなことも、いつでも語り合ってきました。一丸さんは支部長として「もっと競輪界を良くしよう!」と改革に乗り出すような熱い人で、常に競輪界と選手たちのことを考えていました。

 私も「もっとたくさんの人に競輪の存在を知ってもらいたい」という希望や思想を持っているので、一丸さんと同じ気持ちで、数多くの意見交換をしてきました。今回の引退について聞いたとき、あまりに突然の話だったので、私はまったく実感が湧きませんでした。もしかしたら一丸さんの中で「50歳が区切り」と引退を決めていたのかもしれませんね。

選手思いの支部長だった一丸安貴さん

“伝説の投資家”

 一丸さんとは楽しい思い出がいくつもありますが、せっかくなので表に出ていない話を書きたいと思います。一丸さんは好奇心旺盛な人で、さまざまな情報を持っている人でした。

 面白いのが一丸さんの投資伝説です。かなり昔の話ですが、一丸さんが株式投資に興味を持ったことがありました。一丸さんが「この会社の株は上がるぞ」と注目すると、ほどなくしてその会社の株価が下落してしまうのです。そんなことが連続したので、老舗の一部上場企業だろうが新進気鋭のベンチャー企業だろうが、「一丸さんに興味を持たれると下がる」という法則が選手たちの間で広まりました。株式投資に興味のある選手は一丸さんの意見を聞いて行動するようになり、いつしか「伝説の投資家」と呼ばれ、周囲にいじられていましたね(笑)。

 ほかにも「金子! 今の時代は資産運用だ! 年金よりも堅いのがあるぞ!」と私だけにこっそり情報提供してくれたこともありました。後日詳しく聞きたくなって一丸さんに質問すると、「え? オレそんなこと言った? 年金より堅い資産運用があるの? そんなうまい話あるわけないだろ!」と完全に記憶からは情報が消し去られていました。一丸さんの『忘れるのも才能』はピカイチで、人生を生きていく中で「忘れることも大切」と教えられた部分でもあります(笑)。

第二の人生を応援したい

 ある年の競輪祭での“冷たい一丸さん”も印象的です。そのとき私は遠征続きで疲れていたせいもあるのか、変な夢を見ました。蜘蛛の巣に引っかかって、そこから落ちそうになっている不気味な夢でした。寝ている私はカーテンに必死にしがみつき、うなされており、ハッとする感じで目覚めました。

 私を見た一丸さんは優しく声でもかけてくれると思ったら「何やってんだ?」と冷たい視線を向けてきました。あの冷たい目は今でも忘れられません(笑)。私が「疲れのせいだと思うんですが、今不吉な夢を見ていて。蜘蛛の巣に引っかかって…」と夢の説明を始めると、「もういいから早く寝ろよ」と冷たくあしらわれました。他愛もない宿舎での一コマですが、こんな感じの一丸さんとの思い出が懐かしいです。

 そんな一丸さんですが、次の仕事も決まっていて、そのために日々行動しているそうです。頭の揉みほぐしで自律神経を整え、良質な睡眠をサポートするマッサージ店「頭揉みほぐし専門店 ぐっすり堂」をオープンするそうです。競輪選手時代に培ったノウハウも活かせるでしょうし、勉強熱心な一丸さんですから、必ず素晴らしいお店になるはずです。

一丸安貴さんは「ぐっすり堂」を開店する(写真:本人提供)

 私も疲れがたまって悪夢にうなされそうなときは、一丸さんの施術を受けに行こうと思います。その時はお客さんとして行くので、冷たい対応はしないで欲しいですね(笑)。もう一緒に走れないと思うと寂しいですが、一丸さんの『第二の人生』を思う存分に楽しんでもらいたいです。これからも応援しています。

涙の数だけ強くなれる

 競輪人生には別れもあれば出会いもあります。今年、日本競輪選手養成所の125期生に豊橋からは高野信元君が合格しました。一丸さんの引退を別れとするなら、新人選手のデビューは出会いです。これから5月には入所式、その後は養成所で厳しいトレーニングに取り組むと思います。初心を忘れずに頑張って欲しいです。

豊橋から125期生に合格者が出た(撮影:島尻譲)

 その一方で、私の弟子は不合格になってしまいました。報告をくれた時、1年間頑張ってきた分だけの大きなショックを受けたのでしょう。悔し涙を流していました。でもその悔しさがあれば、次の試験では必ず合格できると私は確信しています。

 私も悔し涙を何度となく流してきました。「涙の数だけ強くなれる」という有名な歌があると思いますが、私は本当にその通りだと思っています。悔しい気持ちはそれが大きければ大きいほど、選手を成長させてくれるものになります。回り道に無駄などありません。すべては自分を成長させてくれるものです。

 弟子は来年も挑戦することを決意しています。今回の悔し涙を共有することで、私も「これから1年間一緒に頑張っていこう」と熱い気持ちが込み上げてきました。来年は悔し涙ではなく、嬉し涙を流してくれることを楽しみにしています。

悔し涙は決して無駄にならないことを知っている(撮影:島尻譲)

やり残さないように大事に今を生きる

 4月になれば期待に胸を膨らませた新入社員が、社会人としての第一歩を踏み出します。私のいる競輪界では7月に新人選手がデビューします。そのタイミングで引退する選手もいます。毎年のように出会いがあり、別れを経験します。

 私自身も今後どのくらい選手として走れるのかはわかりません。でも心に決めているのは「選手の時にしかできないことをやり残すことがないように」ということです。まだやめるつもりもありませんし、何一つあきらめていません。やり残さない競輪人生にするために『一走一走』を大事に戦い粘り強く、この体が続く限り、頑張っていきたいと思います。

やり残しのない選手人生を駆け抜けていく(撮影:島尻譲)

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金子貴志

Kaneko Takashi

愛知県豊橋市出身。日本競輪学校75期卒。2013年には寛仁親王牌と競輪祭を制し、同年のKEIRINグランプリでも頂点に。通算勝利数は500を超え、さらには自転車競技スプリント種目でも国内外で輝かしい成績を収めている。またYoutubeをはじめSNSでの発信を精力的に行い、キッチンカーと選手でコラボするなどホームバンクの盛り上げにも貢献。ファンを楽しませることを念頭に置き、レース外でも活発に動く中部地区の兄貴的存在。

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