2022/12/26 (月) 18:00 50
28日から平塚競輪場でグランプリシリーズが行われる。競輪界の頂上決戦「KEIRINグランプリ2022」は30日に開催。中川誠一郎は同シリーズ内の「寺内大吉記念杯競輪」(FI)にこっそりと出場する。ここでは恒例企画「2022年・極私的10大ニュース」と題して、波乱に満ちた1年を振り返ります。【構成=塩次洋太(九州スポーツ)】
ーー高松記念から日程が空きました。ここまで、どのような日々を過ごしていましたか。
何もすることが無いからヒマで、合志(正臣)さんが釣ってきてくれたカツオを見よう見まねで三枚におろしたりとか普段しないことをして、あとはひたすら飲んでいました。
ーー先月のコラムのアクセス数が20000 view を超えました。ご覧になりましたか。
もちろん『netkeirin』アプリを入れているので、くまなくチェックしました。賞金明細をアップしただけでこんなに数字が伸びるとは。津田三七子さんばりに、みんなおカネが好きなんですね。
ーー反響は。
高知の友達の話を読んだ共通の友人が連絡をしてくれて、このコラムが高知まで届いたみたい。20000 view もあるなか、その2人にしか刺さらない話で盛り上がれたのには、何かホッコリきました。
ーー今年も昨年と同様に1年をニュース形式で振り返っていただき、10個のニュースをピックアップしてもらいます。まずは10位からいきましょう。
やっぱり、ロシアのウクライナ侵攻は外せないでしょう。国内では原油高の影響で値上がりした商品も増えたり、円安にもなったり…。
ーーまた、昨年と同じ流れですか。そういうのはしかるべきメディアがやりますので、個人の10大ニュースを選んでください。
ーーサウナの話はこれまで聞いたことがありません。好きだったのですか。
今、競輪場のサウナはコロナ感染予防対策の一環で使用できないんです。昔は毎日入っていて。月2本のあっせんだとしたら、だいたい月に6〜8日ぐらいか。
ーーかなりの頻度ですね。
それだけ入るとサウナ欲が満たされるんです。だから以前だと休みの日、たまに近所のサウナに行く程度だったのですが、今は競輪場で入れないから無性に行きたくなるんですよ。
ーーミーハーな中川選手だけに最近のサウナブームに乗ったのかと思いました。
いやいや、ガチですよ。オレは元々、流行りに乗っかる側の人間なんです。でもサウナだけは別。ブームになる前から、もう20年以上はコツコツと入っています。
ーーそこまで好きなのですか。
仕事でだいたい月に10日間は競輪場に拘束されるので、残りの20日間で行き倒さないと物足りなくて、今は2、3日に1回ぐらいのペースで通っています。だけど、近所にあった行きつけのスーパー銭湯が3月に閉店してしまったんです。
ーー近所に無いと不便ですね。
最近は行きつけを作ったり、サウナのためだけにジムの会員になったりしています。ちなみにそのジムは昔、アマ時代の山田(和巧)さんがインストラクターで働いていました。
ーー最後の情報はかなりマニアックです。
師匠の(仲山)桂さんとそこで知り合って、山田さんの競輪人生が始まったんです。このエピソードはさっきの高知の友達の話じゃないけど、桂さんと山田さんの2人にしか刺さらないですね。
ーーちょっと、意味がわかりません。
登録をして不要品を売ったり買ったりっていうのが「メルカリ」です。今年、デビューしました。
ーーいや「メルカリ」の意味はわかりますが、何の話でしょうか。
オレって自転車人生の終わりが近づいているじゃないですか。だから選手終活の一環で。昔、おばあちゃんが終活で要らないものを捨てたりしていたんですよね。
ーーたった3年前にGIタイトルを2つも獲った人がもう終活を始めるとは。
体力の衰えって、じわじわ来るものだと思ったんです。でも、ここ3カ月ぐらいで急に来た。9月の落車のせいでしょうね、一気にガクっときました。
ーーかなり急激ですね。
休養中にやることも無いしヒマだったから、何かもう荷物を整理しようかってなった。
ーー整理したのは競輪関係のアイテムですか。
そうです。自転車の部品とかがやたらとあったんです。フレームや車輪なんかは鉄なのでリサイクルセンターで買い取ってくれるから、せっせと持って行きました。
ーーその流れで「メルカリ」ということですか。
どうせ要らないんだったら出してみようかと。リサイクルにもなるし、捨てるよりも使ってくれる人がいたらいいじゃないですか。
ーー最近はアルバイトをしていないから、小遣い稼ぎの意味合いもありますか。
いやいや、おカネが欲しいとかじゃなくて、使う人がいればタダ同然でもいいやと。取りに来てくれる人がいたらあげたけど、誰もいなかったので大量に処分しました。
ーーどんな感じで出品したのですか。
激安で出したらどうなるかなと思って相場を調べました。送料はかかるので上乗せしたけど、それでも相場の半額ぐらいで出しましたね。そうしたらバンバン売れるんです。
ーーそれはそうでしょう。
中には新品の部品もあったし、出して1分ぐらいで「ピコーン」って売れた通知が来た品物もありました。
ーー購入者はお得でしたね。
何だコイツ、値打ちを知らねえなって感じだったでしょう。自転車に乗っている若い人や選手を目指す人が気づいて買ってくれたと信じたいです。
ーー今も出品をしているのですか。
めぼしい物はほぼ処分したので、もうやっていません。あとは近所で自転車の出張買取をしていたからいろいろと持って行き、車輪とかシューズが全部で1万円ぐらいになったんです。あれはうれしかった。あ、飲み代が出た! って。
ーーやっぱり、小遣いを稼いでいるではないですか。
そうしたら、買い取り中に店員の人がオレに気づいたんです。「中川さん、何しているんですか?」みたく。
ーーかなり痛いですね。そういう場合はどのように対応するのですか。
その店員さんは以前に自転車に乗っていたそうで、オレが競技時代の映像を YouTube で見ていたとか言っていて。「オリンピック出ましたよね?」とか。あれは相当こっ恥ずかしかった(笑)。
ーーこれは一般的なニュースですね。
9月後半にマッチの退団のニュースが流れたんです。もう衝撃的で。村上(義弘)さんの引退もほぼ似たタイミングでした。
ーー昔から福岡ソフトバンクホークスのファンだったのですか。
小学生のころは秋山(幸二)さんのファンでした。だから西武ファンですね。でも秋山さんがダイエーに行ったので、そこからホークスファンになりました。
ーー秋山さんは同郷になりますが面識は無いのですか。
秋山さんは遠いですね。伊東勤さんは森内(章之)さんや島田(竜二)さん経由でお会いしたり、ロッテの監督時代に試合に招待してくださったり、対談をしたことがあります。
ーーさっきから競輪の話がまったく出てきませんが…。
3、4年前からハマっていて、熊本でライブがあったから子供と行ったんです。特に「貴方解剖純愛歌〜死ね〜」って歌が大好きで、ライブで聞けたんですよね。生で聞けたのが衝撃的で本当は1位にしたいぐらいの出来事でした。
ーーテレビでは見たことは無かったのですか。
まさか歌うとは思わなかったので親子で感激していました。グッズも買い込んで、いい息抜きになりました。
ーー青森の小原佑太選手が10月にフランスで行われた「世界選手権」で中川選手が持っていた記録を更新しました。
小原(佑太)君に前橋(寛仁親王牌)で会ったら「やっと抜けました!」って喜んでいました。
ーー中川選手が記録保持者と知っていたのですね。
これでもオレ、日本記録を3個持っていたんです。高校の総体や国体のプログラムとかにも「1km日本記録、中川誠一郎」って書いてありますから。ここ10年ぐらいなら、プログラムを開いた人たちは知っていると思います。
ーー3つも持っていたとは驚きです。
あとは200mスプリントのハロンとチームスプリントです。それも1個ずつ更新されて、最後まで大事に持っていた1kmの記録がとうとう破られた。とても喜ばしいことです。どんどん日本の選手が強くなっているってことですから。ちょっと上からですけど(笑)。
ーー支部の役員ですか。あまりそういうのに興味が無いタイプですよね。
選手生活も20年を超えたし、ガラにも無いけど選手会への恩返しと奉仕的な意味合いもあってアルバ…いや支部の公務に携わることにしました。
ーーどんな仕事をしているのですか。
肩書は「技能訓練指導員」って言います。主に月に2回ある訓練日に来た選手たちの出席を取ってスタンプを押す役。選手たちは年間5回、絶対に出席しないといけないので、スタンプの鬼と化して、選手会の事務所で門番みたく待ち構えています。
ーー訓練指導員はバイク誘導をしたり、練習に立ち会ったりと忙しい印象があります。
今は熊本バンクが工事中だから本来の仕事ができないんです。それに、そもそもオレ、バイクの免許を持っていないから乗れないし(笑)。
ーーそんな訓練指導員でいいのですか。
ほかには保育園で餅つきをしたり、競輪場の草を刈ったり、サテライトでトークショーをしたりとか公務はいろいろと忙しいんです。だけど、主な仕事は徹底してスタンプを押すこと。とんだスタンプ野郎です。
ーーこれは盛り上がりました。
今年、最後の輝きが7月の佐世保記念でした。バンクレコードを更新して、バンバン先行して。決勝じゃ(山田)庸平の前で発進までしましたから。
ーー自分の記録を自分で更新するって只事では無いですよ。しかも1年の間に。
レアっちゃレアですよね。1月なんてあのクソ寒い重走路でしたから。7月の記念は庸平が記念初優勝だったので思い出に残る記念品をくれました。大事に使っています。
ーー脇本(雄太)選手とプロ雀士の方々と麻雀をしていました。
あれからタッキーさん(滝沢和典)や木原(翼)君らとLINEのやり取りをさせてもらっていますが、佐世保のバンク更新によって異変が起きました。
ーーいったい、何がありましたか。
タッキーさんがLINEのオレの名前を、以前は「中川先生」と登録していたのですが、「ブブカこと中川先生」に格上げしてくれました。
ーー滝沢プロ、反応が早いですね。
この間、図書館へ行ったらタッキーさんの若いころの本があって。表紙の写真が結構シコっていて(熊本弁で「カッコつけている」の意味)思わず笑ってしまったんですよね。
ーーそういうの、怒られますよ。
プロ雀士の皆さん、その節はお世話になりました。ワッキー(脇本雄太)と共にまた遊んでくださいって謝っておきます(笑)。
ーープロ雀士の方々と麻雀をした話を知った合志選手が嫉妬したと聞きましたが。
合志さんは昔から麻雀が大好きで、人生で会いたい人ベスト3の1人が(二階堂)瑠美さんなんだそうです。
ーーそこまで! 残り2人が気になります。
1人は忘れましたが、あとは大谷翔平選手だと。それぐらい憧れの方なんです。
ーー合志選手にとっては偉人クラスなのですね。
合志さんとはもう20年以上の付き合いですが「初めてお前をうらやましいと思った」と言われました。
ーー中川選手は「人生で5、6回しか麻雀をしたことが無い」超初心者ですよね。
だから申し訳なくて「何か、すいません」って意味も無く謝りましたよ。そんな人がオレなんかのために卓を囲んでくれて、しかも振り込んでくれたんですから(笑)。
ーー3月に当コラムで対談を行いました。
そのあと、玉さんが熊本に仕事で来た際、飲みに誘ってもらいました。寿司屋さんへ行ってから(井手)らっきょさんのスナック、あと何件かハシゴして夜中の3時ぐらいまで飲みました。
ーー酒豪の2人がそろったら量もすごそうですね。
焼酎から始まって日本酒だとかあらゆる酒を飲んで…。ゆっくり飲ませてもらい楽しかったです。東京へ行った折には、また赤坂のスナックにもうかがいたいです。
ーーこれが1位ですか。別に珍しい感じでもありませんが。
寛仁親王牌はオレが1日で帰ったので、競輪祭で久しぶりに会えました。ある日、こっちがアップを始めようとしたらフラフラと現れて、オレの顔を見るなり「コーヒー飲む?」みたいなジェスチャーをしてきて。
ーーアイコンタクトで察する、とは何か想像がつきますね。
「んっ? 淹れてくれるならもらいますよ」って感じでコーヒーを飲んでいたら、リラックスをしすぎてしまいアップの時間に遅れました。
ーーそういうときはどのような話をするのですか。
あの日は「こうやってどんどん落ちて特別戦線に出られなくなっていくんだね…。全日本選抜もダメだったし」ってワッキーにボヤいたんですよ。
ーー脇本選手、大変ですね。
そのあと、準決でワッキーが飛んだんです。そうしたら今度は「オレ、傷ついていますよ…」と愚痴ってきたので、すかさず「オレはお前の200倍は傷付いている」と返しました。
ーー脇本選手、かわいそうですね。
たった準決を飛んだぐらいで何だと。アイツは年末にはグランプリが控えていて、来年はS級S班でバラ色の競輪生活が待っているんですよ。だから「オレは来年の上半期のGIにぜんぶ出られないぐらいの傷付き方だ。お前とオレの差は非じゃない」と言ってやりました。
ーー居直り方が半端ないですね。
そうしたら「そんな寂しいこと言わないでくださいよ〜」って急にこっちに寄り添ってきた。でも「オレも今年の上期のGIはダービーしか走れなかったけど、優勝しましたよ。だから頑張ってください」って。
ーー脇本選手なりの慰め方だったのでしょうか。
そんなのぜんぜん慰めになっていないでしょ。ただの自慢ですよ(笑)。そんなムダ話をしながら、ダラダラとコーヒーを飲んでいました。
ーー2人のときはマジメな競輪の話をしないのがわかってホッとしました。
この写真が好きなんです。ワッキーが熊本に合宿に来たときのもので「頼もしいです、この背中」ってウリ坊(瓜生崇智)が撮影してくれたんですよ。こんな感じで来年もワッキーとたくさん遊びたいですね。
ーー10個のニュースが出そろいましたが、今年一番の出来事だった「体調不良と落車、骨折」はどこへ行ったのでしょうか。
もう、ここで散々と話したし振り返りたくもないからいいでしょう。何か8〜10月の記憶が無くて…。オレ、何かしていましたっけ。今年はマヤ歴ぐらい短かった。
ーー260日しか無かったと。
間違いなく今年の1年は365日も無かったです。来年はしっかりと365日を過ごしたいですね。皆さま、事故と体調不良にはお気を付けいただき良いお年をお迎えください。
【大募集】
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中川誠一郎
Seiichiro Nakagawa
中川誠一郎(ナカガワセイイチロウ)。熊本県熊本市出身。日本競輪学校第85期卒業。日本競輪選手会熊本支部所属。師匠は従兄の瀬口慶一郎。 実妹の中川諒子は女子競輪選手、義弟の吉成晃一も競輪選手。2000年8月15日、ホームバンクの熊本競輪場でデビューし1着。後2日間も勝利し、デビュー場所で完全優勝。2016年日本選手権競輪(静岡)、2019年読売新聞社杯全日本選抜競輪(別府)、高松宮記念杯競輪(岸和田)を優勝している。好きな食べ物は寿司。