アプリ限定 2022/11/17 (木) 12:00 9
いよいよ22日から「第64回朝日新聞社杯競輪祭(GI)」が小倉競輪場で開催される。そこで、この歴史ある大会の名勝負、名シーンを競輪記者たちに熱く語ってもらい、当時のレース映像とともにお届けする。記憶に残る競輪名勝負の数々を読めばもっと競輪が好きになる!?
専門紙『赤城』で記者をやっていた頃からだから、毎年のように競輪祭は取材している。ドームになる前の旧競輪場での取材はないが、大相撲の九州場所と共に、九州の風物詩であった。お相撲さんを競輪場や夜の繁華街で当時はよく見かけたものだ。1月開催に競輪祭がなった時期もあるが、やはり11月開催が一番似合う。そして、グランプリに向けて、最後の椅子を争う大会になったのも定着した。
僕にとっての一番の思い出は2004年の大会。今から18年前で小橋正義が優勝している。YouTube などにダイジェストが残っていないので、記憶との相違があるかもしれないが、佐々木則幸が「不運なレーサー」として、僕の中でイメージ付けされた。
メンバーは佐々木則幸に小川圭二、香川雄介の四国ライン。ここが一番自力を持っていた。岡部芳幸に佐藤慎太郎の福島・兄弟弟子コンビ。もちろん、岡部芳幸が兄弟子で慎太郎先生は弟弟子。優勝した小橋正義は単騎。小野俊之に池尻浩一の九州勢。岡山の友定祐己は「ノリさんの前で駆けても良い」と言っていたが、単騎で自力自在戦だった。
決勝並び
③佐々木則幸-⑨小川圭二-④香川雄介
①岡部芳幸-⑦佐藤慎太郎
⑤小橋正義
②小野俊之-⑧池尻浩一
⑥友定祐己
鬼のマーカーの小橋正義は当時37歳で脂が乗り切っていた。2年四ヶ月ぶりのタイトルだったが、通算7度目のG1優勝だった。すでに岡山から新潟に移籍していたが、評論家となった今と違い、誰も寄せ付けない雰囲気を醸しだし、“孤高の人”だった。小野俊之もイケイケの時代で28歳。この年の立川グランプリで優勝している。池尻浩一は引退したが、地元の町会議員を務め、温厚な紳士でタテがシャープだった。あの頃の岡部芳幸はギラギラしていた。捲り選手だったが、番手を回った時は容赦なくタテに踏むスタイル。今の競輪の、前を残すのが美学と言う競輪とは違った。岡部芳幸は2000年の千葉でダービー王になっている。慎太郎先生も前年の高知で全日本選抜競輪で優勝してタイトルホルダーになっていた。キャラは、今と変わらないが、現在の方が脚はあると思う。資料を調べていたら、決勝が終わり「あれで外行って伸びたら、何度でも獲っている(笑)」との談話を残している。岡部芳幸に乗って結果は届かずの3着だった。
レースは意外にも友定祐己が単騎で最終ホームからカマシに出る展開。これを佐々木則幸が追い掛ける形で、車間はかなり空いていた。現場で見ていたが、友定の大逃げが決まると思ったぐらいだ。佐々木則幸の後ろは大渋滞で、小川圭二、小橋正義、小野俊之で競り合い。これを岡部芳幸が最後方から捲り上げる展開だった。佐々木則幸が友定祐己を捉えるのだが、最後は小橋正義が僅かに伸びた。ただ、ここから小橋正義は長い審議の時間になる。そして2着の佐々木則幸と、優勝した小橋正義の着差は僅かタイヤ差だった気がする。つい最近の取材で小川圭二に聞いたが「G2はみっつ獲ったがG1には手が届かなかった。あのレースは3車で併走。自分が、もう少し抵抗出来れば、ノリの優勝だった。それは申し訳ない気持ち」。
今と違って中四国地区は不遇の時代。児玉広志さんとか、ゲリラ戦を売りにしていた。もし、今の時代に佐々木則幸、渡部哲男、堤洋、友定祐己が選手をやっていれば、間違いなくタイトルホルダーになっていたと思う。人間が良い佐々木則幸はガツガツしていなかったし、獲れそうで獲れない選手だったが、今では高知支部の選手会支部長を務めている。もし、小橋正義が失格だったら…、僅かのゴール前の勝負で我慢出来ていたら、佐々木則幸の競輪人生は変わっていたかもしれない。小橋正義と佐々木則幸の性格やレーススタイルは真逆だし、これが結果に出たかもしれない。“不運なレーサー”に世の不条理を感じるが、僕個人は人間的な愛着や魅力を感じる。
■熱き走りを映像で堪能しよう
(提供:公益財団法人JKA)
着順 | 車番 | 競輪選手名 |
---|---|---|
優勝 | ⑤ | 小橋正義 |
2着 | ③ | 佐々木則幸 |
3着 | ⑦ | 佐藤慎太郎 |
4着 | ④ | 香川雄介 |
5着 | ① | 岡部芳幸 |
6着 | ⑨ | 小川圭二 |
7着 | ⑧ | 池尻浩一 |
8着 | ② | 小野俊之 |
9着 | ⑥ | 友定祐己 |
netkeirin取材スタッフ
Interview staff
netkeirin取材スタッフがお届けするエンタメコーナー。競輪の面白さをお伝えするため、既成概念を打ち破るコンテンツをお届けします。