2022/11/05 (土) 12:00 31
競輪場は今、全国に43場ある。どこも基本的に競輪の開催をするためにあるわけだが、各種自転車競技の大会や、地域のフリーマーケット、場所によってはライブ会場となるなど、その活用方法はいろいろと存在する。
“競輪場があると治安が悪い”と言われがちだが、現在をもって、もうそんなことはない。施設整備も急速に進み、また昭和の雰囲気を残しつつ、直言すれば“子宮”のような居心地のよさを与えてくれる。
そんな子宮から生まれそうなものがある。9月川崎、10月京王閣でガールズケイリンの選手だった高木真備さんが主催する「わんにゃんフェスティバル」が開かれた。競輪場のあり方を根こそぎひっくり返すような、つまりは「鉄火場からリラクゼイションルームへ」という雪崩式ブレーンバスターのような転回だ。
コペルニクスのようにロジックを持って行うのではないが、「競輪選手だったからこそ、競輪場で」というシンプルな組み立てから、高木さんの活動がある。競輪場もまた、地域に根差すものを目指す中、考えの一致からこのイベントは開かれている。
「できるんじゃん!」
なにか、競輪場でイベントを行うというとハードルの高いものという気がするものだったが、わかりやすく「何でもできる」を証明してくれたように思う。
競輪場には可能性、ポテンシャルがまだまだあって、その扉を開ける活動だ。そう感じたのは、イベントに集まった人たちを見たからだ。既存の競輪ファン、マキビファンが保護犬、保護猫の活動を自然と学び、また地域の家族連れなども、犬や猫がいると思うとそこに溶け込んで遊んでいた。
これまで競輪場は家族連れや若い女性、子どもたちのいる空気ではなかった。ただし、競輪場はどこもそれなりの規模の敷地を持っている。勝負師の熱気に満ちるゾーンもあれば、のんびり誰もが過ごせるスペースも共存できる。
15年ほど前から私は「競輪場に血圧を測れる部屋を作って、老人が病院に行かず、競輪場に行くようにすればいい」と訴えてきたが、それはかなり視野の狭い考えだった。
古臭く、年寄りばかりが集まるところ、という概念は捨てよう。実際に現地には若い人たちも多く、何より「どの競技より、競輪が一番面白いでしょう!」と断言する若者がいたことも事実。何十年も若い人たちに伝えることにかまけていたメディア側の過失もはっきりいって…ある。
しかし今はWebも発展し、多くの情報が手に取りやすくなっている。競輪場は本場入場者数が減り続け、あり方が問われている。高木さんの活動は、くしくも、まったく違う方向からそのあり方に一石を投じるものだった。いや、石ではなかったか。レーザービームだ。
これが真の“マキビーム”だった。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。