2022/11/02 (水) 12:00 20
防府競輪場で「開設73周年記念 周防国府杯争奪戦(GIII)」が3日、開幕する。地元の清水裕友(28歳・山口=105期)が自身が持つ大会連続優勝記録の更新に挑む。5連覇。とてつもない数字だ…。
清水自身も「5連覇を狙っていきますわ」と宣言している。“防府だけ”は違う。普段から穏やかな物言いの男だが、防府に関することになると変わる。人として魅力あふれる性格や思考を持つが、その奥には何があるのだろう。
「へへっ、なんにもないっスよ!」
ヒロトはそう答えそうだが、多くのファンが感じているものが奥にあると思う。
“度胸”。この男を作り出しているのは、この言葉に尽きると思う。ゆらゆらと深海を泳ぐ大魚のよう。
プロ野球の福留孝介が先日、引退した。中日ドラゴンズファンのヒロトなので、そのショックは大きかったという。そして引退記事にあった言葉が胸に刺さった。
「不確定な未来を考えてもしようがない」
落ち着いていることを鹿児島弁で「ジッとしている」という、「じっと見つめる」「じっとしていろ」のようなイントネーションではなく、ジ、が強い。「ジッとしちょっでな」。落ち着いた態度でいる人間に対し、一目置くような語感がある。
鹿児島出身の福留の態度はまさに「ジッ」としているものだ。共感するものがあったのだろう。KEIRINグランプリの賞金争いに追われる日々もある。元来が落ち着いた男だが、もう一つ上が見えたのだ。
しかし、このヒロトが動揺したレースが1年前にあった。昨年大会の準決だ。任せた町田太我(21歳・広島=117期)が巻き返し、まだ余力がありそうなところを、焦って内からまくりに行ってしまったのだ。ヒロトは1着で決勝に進出したが、悔いしか残らないレースだった。
防府だからこそで起こった動揺だった。貫禄しか感じないヒロトでもまだ若い。あれから1年たった今の成長した姿を今回、見せてくれるだろう。
その時、5連覇はとてつもない記録でも、ヒロトにはただただふさわしいものでしかないだろう。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。