アプリ限定 2022/09/11 (日) 18:00 48
昨年は山口拳矢選手が優勝するなど、若手の登竜門とされる「共同通信社杯(GII)」。16日から名古屋競輪で開幕を迎えるにあたって、netkeirinでは現在先行で売り出し中の若手4選手のインタビューを公開致します。第1回は119期最強と謳われ、グレードレースでの存在感が増してきた犬伏湧也選手。SNSをざわつかせたあの事も語ってくれました。(取材・文=アオケイ 梅田浩行)
ーー今年ここまでを振り返ってみてどうですか?
犬伏 大宮記念で初のGIIIを走って手応えを感じ取れました。その後も何度かFIを優勝する事が出来たけど、松戸記念がダメでしたね。人気していたのに…。7月の地元小松島記念も自分じゃ納得出来ない部分が多かった。もっと安定してGクラスで準決勝に乗れるようにしないと。タイムも出ているし、レースの流れを大事に、組み立てを巧くやれば通用すると感じています。
ーー今年のベストレースを選ぶとしたら?
犬伏 ベスト…。サマーナイトの準決勝ですかねぇ。松浦(悠士)さんと決まったやつ。もう作戦は全て松浦さんに任せていました。僕は自分の力を出し切る事に集中して。あれが僕自身の初の3着だったんです。あんな強い相手に3着に残れて。人生初の3着は良い3着でした(笑)。次の日も松浦さんのサマーナイト連覇に貢献する事が出来た。松浦さんが優勝してくれて嬉しかったですね。僕もこれからの戦い方を見つける事が出来たし、通用することも分かった良いレースだったと思います。
ーー近況は先行と捲りの決まり手が48%と52%でほぼ同じですけど、基本的には先行しようとレースに挑んでいますか?
犬伏 そうですね。自分が先行してハイラップで回れるのが理想です。先行逃げ切りって気持ち良いんですよ(笑)。それにオグさん(小倉竜二)と阿竹(智史)さんにも「若いうちに風を切っとけ」って言われています。僕も若い今しか出来ないって分かっているんで、そうしています。まぁレース本番では相手も居るので自分の理想通りには踏ませてもらえないんですけどね。でも相手に先行させないように自分が早駆けすれば、捲りやすくなるし戦法のレパートリーも増えます。先行していれば戦い易くなるのも大きいですね。
ーー先行の難しさってどこにありますか?
犬伏 相手も居るからタイミングですね。自分の持つ距離から仕掛けないと最後はタレて沈んでしまうし、流れを読んでしっかり仕掛けないと。ムリヤリだとラインが崩れて相手に嵌まられたり、タイミングが大事だと思います。
ーー後ろに付いてくれて走り易かった選手って居ますか?
犬伏 オグさん、阿竹さん、松浦さん、小川(真太郎)さん…。みんな信頼出来るし、心強いですよ。特にオグさんは、まだ2回しか連係したことないですけど、絶対に仕事して残してくれるってイメージがあります。
ーー先日、小松島の道場で太田(竜馬)選手や小川(丈太)選手が居て話を聞いていたら、本気で犬伏選手が踏んだら付いて行けるのは太田選手しか居ないんじゃないかって言ってて、太田選手もタイミング次第では不安って言ってましたよ。
犬伏 それはないでしょ(笑)。オグさんも、小川(真太郎)さんもみんな練習で付いてきますよ。ただ、本番になると相手も居るからタイミングをズラされる。変なところで僕が行くから離れるんですよ。
ーー練習はバンク中心ですか?
犬伏 バンクと街道が半々くらいですね。街道では軽ギアで回転を意識してやっています。バンクは周回とモガキですね。
ーー練習とオフの配分ってどのようにやっていますか?
犬伏 レースの間隔にもよるんですけど、例えば2週間練習できるんだったら、4日か5日やって2日休むって感じですね。初日に午前中バンクに入って、昼からウェイト。2日目にバンクか街道に行って昼からウェイトって感じで4日か5日やったら、丸々2日休みます。
ーー自転車に全く乗らなかったら感覚が鈍ったり、違和感を覚えたりしませんか?
犬伏 ちょっと変な感じはしますね。それが嫌な時は軽くローラーに乗ったりしています。
ーー2日休むって筋持久力とか心肺機能が落ちたりとか心配になりませんか?
犬伏 僕の場合は1日じゃ疲れっていうか疲労が抜けきらないんですよ。そのまま練習したら出し切れずに終わってしまう。それが嫌なんですよね。練習する時は1本、2本で全て出し切りたい。パッとやって休む。量より質が大事だと思っているので、そうしています。
ーーウェイトは部位を分けてですか?
犬伏 そうです。身体の部位をローテーションさせてやっていますね。
ーー犬伏選手に刺激されて他の徳島勢もウェイト練習に力を入れだしたのかなって感じたのですが?
犬伏 僕じゃないでしょ。みんな前からやってましたよ。
ーー太田選手もレッグプレス買ったみたいだし。
犬伏 太田は早くから買っていましたよ。使っていたかどうかは知らないですけど(笑)。
ーー島川将貴選手とかは?
犬伏 たしかに。力を入れてやりだしましたね。最近はますます野人化してきましたね(笑)。
ーーオフの日はどう過ごしていますか?
犬伏 ゴルフが好きなんで。ゴルフに行ったりしていました。今は妻が妊娠しているのでゴルフはあまり行ってないです。涼しくなってきたら、また行きたいなと思っています。今は妻と買い物に行くくらいですね。
ーー対戦したい・負けたくない選手って居ますか?
犬伏 う…ん? 対戦…。居ないですね。Gクラスだと周りは強い選手ばかりだから。どんな相手でも目の前のレースに集中して全力を注ぐだけですね。
ーー大宮記念で深谷選手とのもがき合いが印象に残っています。タイトルホルダーとやり合った事でファンも犬伏選手の本当の実力を知ったと思うんですが?
犬伏 あれは自信になりましたね。力で真っ向勝負して、タイトルホルダーの深谷選手とここまでやれたんだと。決勝には行けなかったけど、負けたからレベルアップ出来る。僕めっちゃ負けるのが嫌いなんですよ! だから負けた直後は落ち込んでるんですけど、帰って練習を再開した時に、次は絶対にやり返してやるって練習に打ち込める。負ける事で練習の質が上がるんですよ。
ーー犬伏選手のストロングポイントってどこですか?
犬伏 ストロング…。何かあったかなぁ?気持ちですかねぇ。負けん気が強い!そこが原動力だと思います。
ーーダッシュ力とかは?
犬伏 僕はそんなにダッシュないですよ。太田君とか一歩目からドンッとかかる。僕はジワジワとあとがかりなんですよ。
ーーそんな事言ってますけど、スプリンターですよね? 以前、阿竹選手に話を聞いたら太田選手は一歩目で諦める。犬伏選手は3歩目まではチャンスあるかなって思うけどムリって言っていましたよ。
犬伏 (笑)。まぁ太田君が特別なんですよね。
ーー一歩目の強化って考えていますか?
犬伏 今は考えていないですね。それよりもペースでジワジワ踏み上げる脚が競輪には必要だなって感じています。その方が相手も捲りにくいでしょ。まぁそうするには前に出切るスピードが要るんですけどね(笑)。ハイペースでそこからもう一段階、踏み上げる事が出来ればって考えています。
ーー先輩に貰ったアドバイスで心に残っている、響いたってありますか?
犬伏 特にコレってのはないですけど、オグさん、阿竹さん、小川(真太郎)さんみんな良いアドバイスをくれます。でも、具体的に分かり易く教えてくれるのは松浦さんですね。
ーー全国の競輪場に走りに行って好きなバンクってありますか?
犬伏 高知ですね。単に成績が良いってだけかもしれませんけど(笑)。
ーー阿竹選手も高知が一番好き、ドル箱バンクって言ってましたよ。モニターで後ろの動きが確認できるし、カントもなくサイクリングできるって。
犬伏 確かに(笑)。師匠と一緒ですね。あのモニターの存在は大きいです。後ろの動きを確認して、来たのに併せれば良いだけですから。あと400だと名古屋も走り易かったです。
ーー開催に行く前や走る前にやっているルーティンってありますか?
犬伏 ないです。ってか嫌いなんですよね。ルーティンを決めてやっちゃうと、それをしないと不安になったりしそうで。だから決めてないし、やっていません。
ーー犬伏選手のターニングポイントってどこでしたか?
犬伏 やっぱり蒋野翔太君の一言じゃないですか。僕がジムのトレーナーやりながら養成所の試験を2度、失敗し落ち込んでいた。その時はオグさんに面倒見てもらってたんですけど。同級生の蒋野に電話したら、「技能で落ちたんなら適性で受けてみれば」って。あの一言で養成所に合格、苦しい1年を経て今がある。蒋野は師匠みたいなもんです。
ーー犬伏選手は大学まで野球をしていて、自転車のフォームは誰に教わったんですか?
犬伏 誰だろ? 教えてくれたかな?…。教えて貰ってないですね。自転車にまたがって一番楽な姿勢を保つ事を意識して。
ーーサマーナイトで松浦選手が犬伏選手の後ろで新しいフォームのヒントを貰ったって言っていましたけど。あれは自然体?
犬伏 そうですね。どうやったら楽に乗れるかって自分で考えて。自然体。そこだけですね。
ーーセッティングも?
犬伏 僕はセッティングが全然、分からないんですよ(笑)。全部、阿竹さんにお任せです。ある程度やってくれたら微調整くらいですね。自分でやるのは。開催中も色んな人にセッティングを聞くし、いじってもらう(笑)。完全に人任せです。
ーー阿竹選手とは脚質が真逆だと思うんですが、セッティングは一緒なのですか?
犬伏 師匠のセッティングが一番しっくりきますね。阿竹さんセッティング上手なんですよ。
ーー野球という技術のスポーツから、もろにタイムで結果が出る自転車に転向し、調整は出来るようになりましたか?
犬伏 F1クラスまでなら何とかなっていましたけど、Gクラスになると調整が必要だし、難しいですね。S級に上りたての頃は初日は全然、踏めなくて2日目からようやく上がってきたってのが、しょっちゅうありました。今はだいぶピークの持って行き方が分かってきました。
ーー小倉選手や阿竹選手にアドバイスは貰いましたか?
犬伏 聞きました。二人がやっている調整方法を足して2で割ったくらいが、僕のちょうど良い所でした。
ーーオールスターで落車していましたが、ケガの状況はどうですか?
犬伏 ほぼ治っていますよ。練習も10割の力でできているし、サマーナイトの時くらいには戻せています。共同通信社杯の時には万全の状態で行けますよ。
ーーオールスターの落車で師匠の阿竹選手がTwitter等で叩かれていましたけど見ましたか?
犬伏 めっちゃ叩かれてましたね(笑)。師匠あんまりSNSとか見なさそうだし、知らないかも(笑)。
ーー記者目線で言うと最後の直線は阿竹選手が犬伏選手に“どいてくれ”ってやさしい頭突きの合図に見えたのですが?
犬伏 そうですね。あれは僕が悪い。僕も一杯だったし、僕の組み立てミスのせいですからね。
ーーファンの間ではTwitter等でも阿竹選手を悪く言う人と擁護する人で言い合っていたり、反響が大きい出来事でしたが、その後も師弟関係は変わりなく?
犬伏 もちろんですよ。僕が一方的に思っているだけかもしれませんけどね(笑)。あの日、師匠は失格で帰宅し、僕はまだポイント制でチャンスがあったので走ろうって決めていました。でも、頭を打ってたので医務室で安静に寝てたんです。翌日になっても気分が悪くて、これじゃファンのみなさんに100%のパフォーマンスは見せられないと当日欠場を決めました。悔しかったですけどね。
ファンのみなさん、師匠を悪く言わないで下さいね。師匠は悪くないですから(笑)。番組さんとかも変な気を遣ってバラバラとかやめて下さいよ。僕は師匠と早く連係し、リベンジの場を作って欲しいんですから!
ーー共同通信社杯は自動番組です。初めてですよね?
犬伏 凄い組み合わせになりそうですよね。メンバーも良いし。でも、楽しみもあります。今まで連係した事のない選手と一緒になって、どんなレースになるのか。強い選手が後ろに付いてくれたら心強いですしね。
ーーラインが出来れば、いつも通りのレースを?
犬伏 そのつもりです。今まで通りの僕のレースをして、後ろの人の期待に応えられるように全力で挑みます。
ーー共同通信社杯の目標ってありますか?
犬伏 まずは準決勝まで上がりたい。もし決勝まで行けたら狙います!
ーー最後に、タイトルを獲るって目標はいつ頃までにと考えていますか?
犬伏 …5年。5年以内!GIクラスでも通用するって手応えは掴んだし、5年以内には!
第2回 町田太我選手インタビューは9月12日(月)18時公開予定です。
netkeirin特派員
netkeirin Tokuhain
netkeirin特派員による本格的読み物コーナー。競輪に関わる人や出来事を取材し、競輪の世界にまつわるドラマをお届けします