2021/03/03 (水) 12:00 14
3月4〜7日、広島競輪場で「瀬戸の王子杯争奪戦in広島(玉野記念)」が開催される。玉野競輪場は現在、ホテルリゾートを含む複合施設の大改修中で、開催ができない。そのため、広島競輪場で代替開催を行う。“玉野記念”なので岡山の選手が主役になるが、今回ばかりはやはり松浦悠士(30歳・広島=98期)が中心だ。
松浦は2019年、2020年と2年連続でKEIRINグランプリに出場している。広島記念は12月開催が定着し、しかも下旬が多い。KEIRINグランプリを控える身、いろんなイベントもあり、出場がかなわない…。お好み焼きを食べて強くなった男が地元ファンの前で走れないつらさは尋常ではない。
2018年12月の大会で地元で記念初優勝を飾り、2019年4月に国際競輪のFIに出走。決勝はテオ・ボス(オランダ)-シェーン・パーキンス(ロシア)で先行。後方に置かれたが、目の前にいた古性優作(30歳・大阪=100期)が仕掛けた外を、直線追い込み勝負。10秒9のタイムで迫ったが、パーキンスには及ばず準優勝だった。松浦はそれ以来の広島出走になる。
記念初優勝を飾る一年前、2017年12月24日、松浦は泣いた…。
笑顔が似合う男で、そんなシーンはほとんど見せない。だが、嗚咽をこらえて泣いた。
23日の準決勝10レース、松浦は絶好の流れで直線に入ったがゴール直前で接触に巻き込まれ落滑入6着で決勝進出を逃した。
翌24日特別優秀11レースを勝ち、1着の選手インタビューで「優勝を…目指してきていたので」と悔し過ぎる涙を流した。
“それほどまでの思いだったのか…”と見ていて全身が硬直した。子どものように、こらえきれない涙を流す松浦。その後、あの涙を見て「松浦は本物だとわかった」と話したGIを3勝した元選手の方もいる。
その後の活躍は、もはや周知のとおりだ。
清水裕友(26歳・山口=105期)とは、川崎で開催された全日本選抜をともに戦ったばかり。清水の復活は今シリーズも大きな力となって、中四国の流れを生むだろう。岩津裕介(39歳・岡山=87期)、取鳥雄吾(26歳・岡山=107期)、河端朋之(36歳・岡山=95期)といった岡山の選手と強力結束。四国勢との別線がどうなるか、にまで盛り上がりは達するかもしれない。
佐藤慎太郎(44歳・福島=78期)、和田健太郎(39歳・千葉=87期)の2019年、2020年のKEIRINグランプリ覇者も顔をそろえるシリーズ。広島は追い込み選手の活躍の場面も多い特性を持つので、車券的にはひとひねり、気にしたいところだ。
各種ラーメン、ガーリックライス、ちらしずしなど以前の玉野競輪場の食堂は人気メニューが多かった。記者も食堂を利用することがあり、東から取材に訪れた私に「ドライカレーにカレーをかけるのが最高なんや! 」と普段、玉野で取材をしている記者が教えてくれることもあった。湯だめうどんも人気だった。
生まれ変わる玉野競輪場を楽しみに、今回の代替開催の熱い物語を待とう。当大会も無観客。ファンにとっては、“待つ”ばかりの日々が苦しいと思う。選手たちのもどかしさもあるし、今はすべてが苦しい。とにかく、画面からでも声援を送り、ネット投票での参加で今を乗り越えてほしい。
Twitterでも競輪のこぼれ話をツイート中
▼前田睦生記者のTwitterはこちら
前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。