2021/02/27 (土) 09:30 9
2月26、27日の2日間、日本競輪選手養成所で卒業記念レースが行われている。第119回生、第120回生(ガールズでは10期)が養成所生活の集大成を見せる場だ。2020年に引き続き、無観客。家族や友だち、師匠や苦楽をともにした練習仲間も養成所に見に行くことはできない。
2020年の卒業記念レースも無観客。
報道陣は現地に行き、優勝者や在所1位の候補生など、ごく限られた人数を取材する形式だった。今年はリモートでの取材。これからデビューし、選手となる人間の表情を“見ること”、“感じること”に卒業記念レース取材の意味があると思っているので、この現状は何とも歯がゆいものがある。
ただ昨年現地に出向き一番気になったのは、家族にその姿を見てもらえない“候補生の胸中について”だった。お世話になった人たちに、晴れの場を見てほしい…。身につまされる思いがあった。だが、ライブ配信などのために撮影された個人の自己紹介の模様を見ると、彼ら、彼女らがいかに懸命に何かを伝えようとしているかが分かった。
男子は在所1位の犬伏湧也(25歳・徳島)、女子も在所1位の吉川美穂(28歳・和歌山)が初日の2走は抜群で、最終日(27日)は午前の準決、また予選3回戦を終え、決勝での戦いに注目が集まる。もちろん、どの候補生も養成所最後となる27日のレースに燃えているだろう。
117期として2020年5月にルーキーシリーズに登場、7月に本デビューしたばかりだった成清龍之介さん。2月24日に練習中の事故により21歳の若さで他界した…。あまりにもつらいニュースで、同期を中心に選手たちやファンの声がSNS上にあふれ、追悼の言葉が続いた。
2020年の卒業記念レースでは直接取材する機会もなく、デビュー後もその機会には恵まれなかった。覚えているのは、2019年2月13日。千葉競輪場が解体される前、最後の練習をみんなで行うというので取材に行った時のことだ。
選手の乗車フォームについてなど、まるで分からないが、龍之介さんの父である成清貴之(46歳・千葉=73期)になんだか似た背格好で、しなやかに自転車に乗っている選手がいた…。
その時はまだ選手ではなく、入所前のアマチュアだった。千葉競輪場が生まれ変わるタイミングに「これからはこうした若い選手が頑張っていくんだ! 」と思った。
悲痛な思いばかりあふれるが、、事故後に成清龍之介さんの同期や同府県の千葉の選手が頑張っている姿を見ると、下だけは向いてはいけないのかと背中を押される。
競輪のレースでも、落車だけはないようにといつも思う。だがそれを避けられない戦いに選手たちは挑んでいる。練習にしてもそうだ。さまざまな環境の中、ケガや事故のリスクから逃れられない。
今、卒業記念レースを走っている候補生が無事に大活躍するように。また選手の方々に改めて敬意を表すとともに、成清龍之介さんのご冥福を心からお祈りいたします。
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前田睦生
Maeda Mutuo
鹿児島県生まれ。2006年東京スポーツ新聞社入社、競輪担当として幅広く取材。現場取材から得たニュース(テキスト/Youtube動画)を発信する傍ら、予想系番組やイベントに出演。頭髪は短くしているだけで、毛根は生きている。