2022/05/17 (火) 15:00 15
競輪界では知らない者がいないヤマコウこと山口幸二さんの予想コラム。元トップレーサーならではの鋭い読みは必見です。
函館競輪開設72周年記念五稜郭争奪戦決勝メンバーが出揃いました。
2次予選1着を取った佐藤慎太郎が、1着インタビューの時にファンの野次に反応する場面がありました。「(初日特選)地元の菊地圭尚を飛ばすのはけしからん」と言う野次でした。慎太郎は「別線で走る以上仕方ない」と説明しましたが、心中穏やかじゃないはず。私も同じことをしたと思います。誰もが脇本雄太のようなレースができればいいですが、体力には限界がある。その殻を打ち破るために、追い込みや位置取り、横のテクニックを磨いて優勝を目指す訳です。自らが優勝するためにラインがあり、ラインに縛られ勝利を逃すのは「ライン戦」を履き違えていると思います。
現役だった2011年福井記念決勝、私は金子貴志(愛知・75期)の番手、村上義弘(京都・73期)は地元の脇本雄太(福井・94期)ー市田佳寿浩(福井・76期・引退)と別線で走りました。レースは、脇本の先行、金子が8番手からカマして不発。浮いた私は4番手の村上の所に降りました。そこを堪えて村上は4番手3角捲り、番手から出た市田と私と村上で直線勝負。1/8輪差で市田優勝(2着ヤマコウ、3着村上)で終わりましたが、3角から捲る村上はガチで捲りに行きました。
レースが終わった後、村上は「幸二さんが全力で決めに来たことは嬉しかった。そこで遠慮したら僕は怒ります」と晴れやかな表情で話したことを覚えています。村上も真剣勝負で脇本ー市田と戦いました。遠慮したら市田は喜ぶでしょうか。そうじゃないと思います。2角で飛ばされた圭尚も「やっぱり慎太郎さんは違うな…」と逆に敬意を抱いたと思います。私は、慎太郎が他の地区に付いて何が悪いのか分かりません。むしろラインに縛られて優勝する機会を逃すことの方が「プロじゃない」と思います。ラインは仲良し学級会ではなくプロの集団であること。慎太郎は、圭尚が付いた時にまた頑張ればいいだけの事だと思います。
①小松崎大地(福島・99期)ー⑨佐藤慎太郎(福島・78期)ー⑦守澤太志(秋田・96期)
③郡司浩平(神奈川・99期)
④佐々木豪(愛媛・109期)ー②清水裕友(山口・105期)ー⑧瓜生崇智(熊本・109期)
⑥山本伸一(奈良・101期)ー⑤稲川翔(大阪・90期)
先行意欲が非常に高いのが④佐々木です。3番手が同期の⑧瓜生なので、「同期とラインを組めたので嬉しい」と言っています。3人とも歳が近いので吹かす(先行)でしょう。対して⑥山伸、①小松崎の理想は佐々木ラインの4番手、単騎の③郡司は、位置取りで脚を使うより前団の動きをみて仕掛けると思います。枠的に不利な⑥山本ラインが前受け、①小松崎が中団、④豪くんが後ろ攻めです。
S.③ ⑥⑤ ①⑨⑦ ④②⑧
④豪くんの動きに合わせて①小松崎が動きます。
打鐘.←④②⑧ ①⑨⑦ ③ ⑥⑤
4番手を取った①小松崎は、後ろの動きを見て仕掛けを判断すると思います。地元ダービーが不完全燃焼で終わった分、優勝したい思いは強いでしょう。いつも前で頑張る①小松崎ですから⑨慎太郎も⑦守澤も、獲るレースを受け入れると思います。
絶好の展開は②清水、7番手の③郡司、8番手の⑥山本もバックで仕掛けると思います。
←⑥⑤
←③
←①⑨⑦
B.④②⑧
併せて②清水が出るので優勝のチャンスが1番近いと思います。
・買い目
2ー8ー9735
穴目は、捲る③郡司と②清水のマッチレースです。2=3ー8975
④佐々木という最大の援軍を得た②清水が、有利にレースを運ぶことでしょう。
山口幸二
Yamaguchi Kouji
岐阜県大垣市出身。日本競輪学校62期卒業の元競輪選手。1988年9月に大垣競輪場でデビュー、初勝利。1998年のオールスター競輪で完全優勝、同年のKEIRINグランプリ'98覇者となる。2008年には選手会岐阜支部の支部長に就任し、公務をこなしながらレースに励む。2011年、KEIRINグランプリ2011に出場。大会最年長の43歳で、13年ぶり2度目のグランプリ制覇を果たし、賞金王も獲得した。2012年12月に選手を引退、現在は競輪解説者としてレース解説、コラム執筆など幅広く活動する。父・山口啓は元競輪選手であり、弟の山口富生(68期)、息子の山口聖矢(115期)・山口拳矢(117期)は現役で活躍中。