2023/11/14(火) 12:19
JBCFロードシリーズの最高峰リーグであるJプロツアーは10月22日、かすみがうらロードレースで2023年の最終戦を迎えた。
コースは、前日の個人タイムトライアルでも使用した、霞ヶ浦湖畔部分をベースに構成されている。1周4.8kmの中、ほぼ平坦ではあるが、コース幅の急激な変化や、直角コーナーの連続などが盛り込まれ、ショートサーキットを回る中で、選手たちは周回ごとに、頻繁に減速と加速を強いられる。集団が引き伸ばされると、後部の選手たちは、集団の分
断で取り残されるリスクも負ってしまう。コース終盤には、斜度が急激に立ち上がる登坂が含まれ、集団の分裂を誘発させる要素が点在する走りにくいコースと言えよう。昨年は、完走率の低いサバイバルレースとなった。この日は、このサーキットを23周する110.4kmの設定で競われた。
霞ヶ浦湖畔をベースに設定された4.8kmのショートコース
最終戦。最前列には、個人総合首位の中井唯晶(シマノレーシング)が赤いリーダージャージで、U23首位の岡本勝哉(チームブリヂストンサイクリング)が白のリーダージャージで並んだ。
二人のリーダージャージとチーム最上位のシマノレーシングのメンバーを先頭にラインナップする選手たち
スタートすると、レースは早くも1周目から激しい展開に。
リアルスタートを迎えると、選手たちは道幅いっぱいに広がって臨戦態勢に入る
チームブリヂストンサイクリングがペースを上げ、集団を長く引き伸ばして2周目に入る。この動きにリーダーを擁するシマノレーシングも同調。この動きで集団が分裂し、淘汰され、3周目までに13名の先頭集団が形成される形になった。
ペースを上げるチームブリヂストンサイクリング
シマノレーシングも同調し、ペースアップ
ここには、チームブリヂストンサイクリングから4名、シマノレーシングから6名、弱虫ペダルサイクリングチームから2名、シエルブルー鹿屋から1名が入っており、この日、出走した主要チームの主要メンバーがほぼ入っているとも言える構成になっていた。
13名の先頭集団が形成された
この集団のペースは衰えず、メイン集団は長く引き伸ばされ、分裂していく。
秋晴れでにぎわう公園の横を進む集団
チームブリヂストンサイクリングが先頭を固め、ハイペースをキープ
30秒ほどの差で10名の第2集団、50秒から1分差で20名ほどの第3集団が続くが、その後もタイム差はじわじわと拡大していく。
湖畔をゆく集団
しびれを切らせた金子宗平(群馬グリフィンレーシングチーム)らが追走集団を作り、先頭を追い始めた
前日のタイムトライアルで優勝した金子宗平(群馬グリフィンレーシングチーム)を含む5名が追走集団を形成し、合流を目指したが、30秒前後の差を維持するのが精いっぱいで、終盤にかけて差は1分以上まで開いてしまい、合流の可能性は極めて低くなった。
事実上、勝負は先頭集団の13名に絞られた。
16周目、上り区間で先頭集団が分裂した。6名が先行し、残る7名との差を広げていく。
先頭から6名が先行
残り3周となる21周目、霞ヶ浦の湖畔へ向かう平坦区間で寺田吉騎(シマノレーシング)がアタックし、松田祥位(チームブリヂストンサイクリング)が追う。
寺田吉騎(シマノレーシング)がアタック
寺田の後ろにぴったりと付き、マークする松田祥位(チームブリヂストンサイクリング)
この2名を追って山本哲央(チームブリヂストンサイクリング)が単独追走し、残り2周で合流。最終周回には兒島直樹(チームブリヂストンサイクリング)も追いついて4名となる。圧倒的に、チームブリヂストンサイクリングにとって有利な展開だ。
山本哲央、兒島直樹(以上、チームブリヂストンサイクリング)が合流、ブリヂストンは3対1の有利な展開に持ち込み、寺田を揺さぶる
残り1kmを前に、多勢となったチームブリヂストンサイクリングの3名が代わる代わるアタックを繰り返し、寺田を揺さぶりにかかるが、寺田は食らいついて離れなかった。
攻撃と牽制を繰り返しながらフィニッシュに向かう。先頭4名を追うメンバーも遠く離れてはいない
残り100m、フィニッシュ前に先頭で現れたのは山本だった。ガッツポーズでフィニッシュラインに飛び込み、2021年5月の「群馬CSCロードレース5月大会」以来約2年ぶりのJプロツアー勝利をあげた。
山本が仕掛け、単独でフィニッシュラインを越えた
松田が3位、兒島が4位となり、上位をチームブリヂストンサイクリングが占める結果となった。
優勝した山本、検討した寺田、松田の表彰台。チームブリヂストンサイクリングの完勝だった
優勝した山本は「チームメイトがとても強くて、最初から最後まで、しっかりとまとめてくれたことに感謝したい」と語った。「今シーズンは序盤に鎖骨を骨折し、辛い日々もあったが、最後に優勝でまとめることができてよかった」と喜びを語った。
この最終戦をもって、2023年Jプロツアーの年間ランキングが確定。
個人ランキング1位は、中井唯晶(シマノレーシング)。U23ランキング1位は岡本勝哉(チームブリヂストンサイク
リング)、チームランキング1位はシマノレーシングとなった。
今季の総合優勝を確定させ、祝福するサポーターとハイタッチしながらフィニッシュする中井唯晶(シマノレーシング)
総合優勝とU23の優勝を確定させた中井と岡本勝哉(チームブリヂストンサイクリング)
今年度のチャンピオンとなった中井は「総合優勝できてホッとしている」とコメント。「昨年はチームの成績も芳しくなく、悔しい思いをしたが、今年はチーム全体としても強くなり、自分もレベルアップしているのを感じる」とダブル優勝の喜びを語った。「レースを開催してくれた皆さん、活動を支えてくれた関係者の皆さんに感謝したい」と語るとともに、体調管理などで支えてくれた妻への感謝の言葉で、インタビューを締めくくった。
このレースで、2023年度のJプロツアーはすべて終了となる。
チーム総合優勝を勝ち取ったシマノレーシングのメンバー
50年の歴史がある強豪チームながら、ここ7−8年は若手の育成チームという位置づけになっていたシマノレーシングが、育ててきた選手たちが成長し、再び「強いシマノレーシング」という位置づけになり、マトリックスパワータグが連覇を続けてきた総合優勝を奪取したのは、大きなニュースと言えるだろう。
キナンレーシングチームなど、Jプロツアーへの参戦を再開したチームもあり、若手選手の成長も著しく、リーグのレベルも上がって来た感がある。来季は、よりいっそう見どころの多いレースが期待できることだろう。
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【結果】
かすみがうらロードレース(110.4km)
1位/山本哲央(チームブリヂストンサイクリング)2時間31分48秒
2位/寺田吉騎(シマノレーシング)+3秒
3位/松田祥位(チームブリヂストンサイクリング)+11秒
4位/兒島直樹(チームブリヂストンサイクリング)+13秒
5位/内田宇海(弱虫ペダルサイクリングチーム)+26秒
<Jプロツアー2023 年間総合順位>
【個人総合】
1位/中井唯晶(シマノレーシング)2827p
2位/石原悠希(シマノレーシング)2261p
3位/孫崎大樹(キナンレーシングチーム)2100p
【個人総合(U23)】
1位/岡本勝哉(チームブリヂストンサイクリング)1874p
【チームランキング】
1位/シマノレーシング 7954p
画像提供:JBCF(一般社団法人全日本実業団自転車競技連盟)
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