初開催!湧水の郷しおやクリテリクム

2021/11/13(土) 18:32

初開催!湧水の郷しおやクリテリクム

今季誕生した三菱地所JCLプロロードレースツアー2021もいよいよ終盤戦に突入した。直前に栃木3戦の開催が発表され、栃木県塩谷町でこの3戦中の初戦にあたるクリテリウムが10月31日に開催された。


美しい田園風景の中で開催された湧水の郷しおやクリテリクム

この湧水の郷しおやクリテリクムは、道の駅「湧水の郷 しおや」周辺の田畑を縫うように設定された2.8kmの特設コースを使用する。選手たちはここを30周回走り、84kmの設定で競い合う。ゆるやかなアップダウンに加え、道幅の変化や複合コーナーなど難しいポイントが含まれ、短いコースではあるが、クリテリウムとしては、設定距離は長い部類に入るだろう。
全国の新型コロナウィルスの感染状況は落ち着いてきてはいたが、このレースでは事前申し込みをした先着100名のみが会場で観戦することができ、原則的には、YouTubeでのライブ配信での観戦が推奨される形となった。

JCLのレースとしては、9月の秋吉台カルストロードレース以来の開催だが、個人総合リーダーのイエロージャージは10月のおおいたアーバンクラシックでJCLポイントを獲得した山本大喜(キナンサイクリングチーム)が着用し、U23首位のホワイトジャージは本田晴飛(VC福岡)がキープしている。スプリントリーダーのブルージャージは小野寺玲(宇都宮ブリッツェン)が、山岳賞のレッドジャージは山本元喜(キナンサイクリングチーム)が着用する。

各賞リーダーたちを最前列に、栃木に本拠地を置く宇都宮ブリッツェンが前方に整列した。午後1時に、スターターを務めた塩谷町の見形和久町長の号砲でスタートした。


リーダージャージの選手たち、宇都宮ブリッツェンを先頭に一斉にスタート

序盤からアタックの掛け合いとなり、ハイペースでの展開に。付いていかれない選手が早々に脱落し始め、集団は早くも人数を減らして行った。不安定な状態のままレースは推移していく。


冒頭からアタックの掛け合いが続く。ペースが上がり、一列に伸びた集団

9周目になって、ようやく逃げが形成された。吉岡直哉(チーム右京相模原)、阿部嵩之 (宇都宮ブリッツェン)、小野寛斗(スパークルおおいたレーシングチーム)、花田聖誠(キナンサイクリングチーム)、柴田雅之(那須ブラーゼン)がメイン集団から抜け出したのだ。ここに渡邊諒馬(ヴィクトワール広島)が合流して、6人の先行集団が形成された。

10周目の周回賞はこの先頭集団の中から、スプリンターチーム、スパークルおおいたの小野がきっちりと獲得した。


増田成幸(宇都宮ブリッツェン)を加えた7名の先頭集団

10周目。この6名に東京五輪でも日本代表として出場した実力のベテラン増田成幸(宇都宮ブリッツェン)が後方から単独で追い付き、7人の集団となった。宇都宮ブリッツェンとしては、「逃げ職人」とも呼ばれる阿部に増田が加わり、一気に有利な状況に持ち込んだことになる。
逃げ集団はメンバー間の足並みが揃わないものの、この2.8kmの小周回の中でメイン集団から30秒以上もの差を開き、逃げ切りの可能性も見えてきた。


先頭に2名を送り込み宇都宮ブリッツェンは絶好の展開に。逃げ切りに向け全力で走る


集団の先頭には那須ブラーゼンが集まり、追走の準備を始めた

この逃げ集団に選手を送り込めなかったチームや、選手を送り込んでいながらも分が悪いと踏んだチームはメイン集団の前方に上がり、追走への準備を始めた。


メイン集団の牽引にキナンサイクリングチームも加わりベースアップ

リーダージャージを着る山本大喜を抱えるキナンサイクリングチームも、山本のポイント加点を狙い、先頭集団を捉える動きに加わる方向に転じた。一方、思惑が一致しない逃げ集団は、逃げ切りに向け、ペースを上げることができない。宇都宮ブリッツェンの2人の健闘も虚しく、23周目についにメイン集団に吸収されてしまう。


振り出しに戻り、メイン集団は一つになった。ゆさぶりをかけるべく、次々と攻撃が仕掛けられ再びハイペースに

これまでの動きで、消耗された選手が脱落し、メイン集団自体も30名ほどに人数を減らしていたが、振り出しに戻り、ここからフィニッシュに向けてのせめぎ合いが始まることになった。残りはあと7周だ。


ゴールまでの距離が刻々と減り、緊張感が高まる。集団のペースも上がり、サバイバルの様相を呈した

選手のふるい落としや逃げ出しを狙い、次々とアタックがかけられる。だが、動きはすぐに飲み込まれ、強者たちのみが残った集団は、揺さぶりの動きにも耐え、集団は分断されず、一つの集団のままで周回を重ねていく。

残り周回が減り、脱落する選手が出て、最終周回に入ったときには、集団は25名ほどまで絞り込まれていた。


谷順成(那須ブラーゼン)、宇賀隆貴(チーム右京相模原)ら多くの選手がアタックを試みるが、すぐに捕らえられ、ゴールに向かう決定的な動きは作れない

最終周回に入っても、谷順成(那須ブラーゼン)、山本元喜(キナンサイクリングチーム)らが次々と渾身のアタックを繰り出すが、すぐさま勝利を狙うチームがチェックに入り、どの動きも決定的なものにはならない。
ラスト1kmを越え、大集団のままゴールスプリントに突入する形が現実的になった。
この中で隊列を組み、前方に上がったのが、地元栃木の那須ブラーゼンだ。西尾憲人、谷が今日スプリント勝負に臨む金子大介(すべて那須ブラーゼン)を引き、好位置をキープ。自力で最前列まで上がってきた増田を先頭に最終コーナーを回った。

優勝の行方はスプリント勝負に。小柄な金子が全身全霊をかけ繰り出すスプリントのパワーは、この日誰よりも勝っていた。先頭に躍り出ると、そのまま誰にも譲ることなく、がむしゃらに体を弾ませるようにペダルを踏み込んでいった。軽く振り返り、自分が勝つことを確信すると、何度も叫び声を上げ、ガッツポーズを突き上げながらフィニッシュラインを越えた。


雄叫びをあげながらフィニッシュラインに飛び込んだ金子大介(那須ブラーゼン)

那須ブラーゼンにとっても、今季初優勝。ホームである栃木県内のレース、さらにチームが連携し、導いた勝利とあって、最高の形のフィニッシュとなった。


最高の形での優勝を決め、金子の目には嬉し涙が溢れた

2位には前半も逃げ集団に入り展開していた吉岡が入る健闘を見せた。金子大介はもともと国内チームで走っていたが、昨年までフィリピンのチームに所属しており、今季那須ブラーゼンに移籍した。158cmと小柄で、SNSなどの発信力も高いことから、注目度も高く、多くのサポーターを有する選手である。なかなかチームのセレクションに選ばれず、悔しい思いをしてきたというが、3位に入った広島クリテリウムに続き、今季2回目の出場。出場レースでは連続の表彰台を飾ったことになる。


ひときわ小柄な金子だが、表彰台では誰よりも大きな喜びを爆発させた

表彰台で、スプリントで脚がつっていたことを告白した金子。「体全体でペダルを押し込んで最後まで行きました。」と、まさに全身の力を投入したスプリントだったことを明かし、会場を沸かせた。「今回の勝利が来年へ向け、いい流れとなるきっかけになればと思います」と話し、「自宅から30秒程度」の距離で開催されるという最終戦の那須クリテリウムへの抱負を語り、インタビューを締め括った。


U23のリーダージャージは宇賀が奪取に成功。他のリーダージャージは、それぞれの選手がキープした

総合首位のイエロージャージは山本大喜が守ったが、首位の山本大喜と次点の小野寺とのポイント差は240。残り2戦の優勝ポイントは260(大田原)と130(那須塩原)であり、まだ逆転の可能性は残されている状況。U23リーダーはこのレースで同点となり、近いレースでの加点が優先されるルールから、宇賀隆貴(チーム右京 相模原)が首位に返り咲くことになった。U23の首位争いは、この2名の一騎討ちとなるが、どちらが総合優勝を果たすのか、まだまったくわからない。山岳賞は山本元喜が、ポイント賞は、この日転倒し、レースはリタイアしてしまったが、小野寺が首位を守っている。
栃木2チームにとっては、ホームゲームの空気感の中で戦える最終2連戦。クリテリウムを得意とする小野寺にとっては、絶好のシナリオでもある。最後の2戦を制し、最後に笑うのは誰なのだろうか。さらに注目が集まっていった。

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【結果】湧水の郷しおやクリテリウム 84km
1位/金子大介(那須ブラ―ゼン)1:51'49"
2位/吉岡直哉(チーム右京相模原)
3位/小山智也(チーム右京相模原)
4位/山本大喜(キナンサイクリングチーム)
5位/谷順成(那須ブラ―ゼン)
6位/沢田桂太郎(スパークルおおいたレーシングチーム)+0'01"

【イエロージャージ(個人ランキングトップ)】
山本大喜(キナンサイクリングチーム)

【ブルージャージ(スプリント賞)】
小野寺玲 (宇都宮ブリッツェン)

【レッドジャージ(山岳賞)】
山本元喜 (キナンサイクリングチーム)

【ホワイトジャージ(新人賞)】
宇賀隆貴(チーム右京 相模原)

【地元特別表彰】
周回賞(JA全農とちぎ賞)
10周目/小野寛斗(スパークルおおいたレーシングチーム)
20周目/小野寛斗(スパークルおおいたレーシングチーム)

【敢闘賞(塩谷町観光協会賞)】
谷順成(那須ブラーゼン)

画像提供:JCLロードレースツアー(株式会社ジャパンサイクルリーグ)

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「おおいたいこいの道クリテリウム」
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