2021/10/19(火) 10:32
「OITAサイクルフェス!!!2021」が10月9日、大分市でスタートした。UCI(国際自転車競技連合)公認の2つのレースを開催し、大分市が大いに自転車で沸く週末だ。初日の9日には、大分駅南口前のシンボルロード「大分いこいの道」を舞台に、「三菱地所おおいたいこいの道クリテリウム」が開催された。
JR大分駅前で万全の感染対策のもと開催された「三菱地所おおいたいこいの道クリテリウム」
例年は国際レースとして海外チームを迎え入れていたが、今年は新型コロナウイルスの感染対策のため入国規制が厳しく、海外からの招聘が困難であるため、国内チームのみからなる13チームが参加する形で開かれた。
クリテリウムで用いるのは 「大分いこいの道」に作られた1周1kmの特設コース。数字の6を思わせる形になっており、1箇所Uターンに近いコーナーが設定されている。もちろんコースは完全にフラットで、コースを40周する40kmの短距離決戦になることから、高速の展開が予想された。
シンボルロード「大分いこいの道」に設営された1周1kmのコースを40周する
この日、一般的には観戦の自粛が推奨されたが、レース会場ではワクチンを2回接種済みであるという証明か抗原検査を受け陰性であったことを証する書類の提示(ともに自己申告も可)でリストバンドが発行され、これを身につければ、観戦ができるという新しい試みが行われた。レース会場には無料の抗原検査所も設置され、その場でも検査を受けられる環境が整えられた。パブリックビューイングの会場でも、同様の条件でリストバンドを発行。さらに連絡先を登録してもらうことで、安全度を高める配慮がなされた。感染のリスクを低減しながら観戦を可能にする、一歩踏み込んだ試みは、明るいニュースと言えるだろう。多くのチームの選手・スタッフたちも、ウイルス検査をしてから大分市に入っているという。
ワクチン接種かウィルス検査を受けた観客がコース脇の感染スペースに入ることができる。観客間でも、選手たちも、安心できる取り計らいだ
10月とはいえ、大分市は軽く気温30度を上回る真夏日となり、熱中症が心配されるほどの陽気になった。
地元を拠点に今年誕生したスパークルおおいたレーシングチームが先頭に並び、大分市の佐藤樹一郎長がスターターを務め、晴天の下、75名がいっせいにスタート。
スタート。先頭に並ぶのは大分を拠点とするスプリンターチームのスパークルおおいたレーシングチームだ
序盤はシマノレーシングの選手が代わる代わる単独でアタックを試みた。抜け出しを図る動きが生まれるものの、マトリックスパワータグが、早々に集団のコントロールを開始。前方に超ベテランのフランシスコ・マンセボ(マトリックスパワータグ)が陣取り、睨みを利かせ、逃げの動きをひとつひとつ潰していった。大集団のままレースが進んでいく。
孫崎大樹(スパークルおおいたレーシングチーム)が、一つ目の周回賞を獲得
10周目に設定された周回賞は、地元の大きな期待を背負った地元・スパークルおおいたレーシングチームの孫崎大樹がしっかりと獲得。地元ではすでにこのレースの認知度が高く、テレビ、新聞でも大きく報道される。特に今年は多くの広報番組が制作され、事前にも大々的に盛り上げられていたようだった。まずは表彰台の位置を一つ確保した。
レースの流れはマトリックスパワータグがコントロールしたまま、変化が生まれず、淡々と進行していく。
20周目にトラブルが発生。ラスト500mのコーナーを越える際、集団の中程で落車が発生した。大きな落車ではなかったが、数名が足止めを食らい、集団の後方の速度が鈍った。この日の本命だったスパークルおおいたのメンバーをはじめ、多くのスプリンターが後部に固まっており、先頭をひいていたマトリックスが状況を確認すると、一気にスピードを上げ、振り切りにかかった。危険を察知した選手たちはこの集団に食らいついたが、集団は大きく二つに分裂してしまった。数名の選手たちが先頭集団への合流を果たしたが、このペースアップに耐えきれず、脱落する選手も出るほどで、先頭集団は18名に絞り込まれた。
集団が落車で分裂、集団をコントロールしていたマトリックスがペースアップし、後続を引き離しにかかる
先頭集団には、レースをコントロールすべく前方に位置していたマトリックスパワータグと、宇都宮ブリッツェンから5名ずつが入り、有利な状況に。他は、チーム右京相模原から3名、キナンサイクリングチームから2名、ヴィクトワール広島、VC福岡、愛三工業レーシングチームから1名ずつが入っていた。
集団が千切れ、追いつくことができず後続集団に取り残されてしまった選手たち
マトリックスは先頭に立ち続け、集団のコントロールを続ける
引き続き、マトリックスパワータグが集団前方に陣取り、レースのコントロールを続ける。20周回、30周回目の周回賞は安原大貴(マトリックスパワータグ)が獲得。レースを完全にコントロールし、あとは擁するスプリンター吉田隼人(マトリックスパワータグ)の優勝を狙うのみという気迫を放つ。マトリックスの後ろには、宇都宮ブリッツェンが集合し、最終スプリント決戦に向かう準備を始めた。緊張感が高まってくる。
この均衡が崩れたのは最終周回、すなわちラスト1kmに差し掛かる手前だった。宇都宮ブリッツェンがマトリックスパワータグを抑え、先頭に迫り出し、その後ろに2名ではあるがベテランが食い込んだキナンサイクリングチームの白いジャージが上がる。それぞれのチームが、この日勝負をする選手を連れ、前方に上がってきた。
最終周回を目前に、宇都宮ブリッツェンが前方へ
スプリンター小野寺玲を牽引する西村大輝(ともに宇都宮ブリッツェン)を先頭にホームストレートに突入。ロングスプリントを始めた小野寺を、吉田隼人(マトリックスパワータグ)、中島康晴(キナンサイクリングチーム)が追うが、小野寺に迫ることはできなかった。小野寺は喜びを大爆発させながらフィニッシュラインを越えた。
ロングスプリントを決め、喜びのポーズでフィニッシュする小野寺玲(宇都宮ブリッツェン)
期待を受けて戦った小野寺を称えるチームメイト
「終盤まで多くの選手を(先頭集団に)残せて、(皆が)いい形で集団をさばいてくれ、僕はそこについていくだけだったので、完璧なチームのサポートがあっての勝利だった」と語った小野寺。今日の勝利の点数を聞かれると、「自分のスプリントの特性を生かすことができた勝利だった」と振り返り、笑顔で「満点」と答えた。
笑顔で表彰に臨む小野寺、吉田隼人(マトリックスパワータグ)、中島康晴(キナンサイクリングチーム)
このレースは、国内のロードレースのプロリーグである「三菱地所JCLロードレースツアー2021」のポイント付与レースとなっており、順位に応じ、リーグ既定のポイントが与えられる。優勝した小野寺は260ポイントを獲得し、一気に個人ランキング首位に躍り出ることになった。中島康晴が3位で80ポイントを獲得している。U23に関しては、本田晴飛(VC福岡)が5位に入り、40ポイントと、U23の30ポイントを獲得。U23の首位を守っていた宇賀(チーム右京相模原)と同点に並んだが「直近のレースの上位者」という規定から、U23のリーダージャージの奪回に成功することになった。
翌日には、UCIポイントも付与される住宅街の公道を使ったロードレース「おおいたアーバンクラシック」が開催される。今季非常に稀な機会となったUCIポイントを獲得できるレース。激しい戦いになることが予想された。
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【結果】おおいたいこいの道クリテリウム(40km)
優勝者平均時速43.75km/h
1位/小野寺玲(宇都宮ブリッツェン)54分51秒
2位/吉田隼人(マトリックスパワータグ)+0秒
3位/中島康晴(キナンサイクリングチーム)
4位/岡本隼(愛三工業レーシングチーム)
5位/本多晴飛(VC福岡)
6位/安原大貴(マトリックスパワータグ)
【スプリント賞】
10周目/孫﨑大樹(スパークルおおいた)
20周目/安原大貴(マトリックスパワータグ)
30周目/安原大貴(マトリックスパワータグ)
画像提供:JCLロードレースツアー(株式会社ジャパンサイクルリーグ)
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