JCLロードレースツアー2021第6戦レポート

2021/09/15(水) 17:11

JCLロードレースツアー2021第6戦レポート

三菱地所JCLロードレースツアー2021の第6戦「山口ながとクリテリウム」が9月11日、山口県長門市で開催された。このツアーのレースは、前回のオートポリスロードレースから1カ月ぶりの開催となる。

JCLロードレースツアー2021第5戦レポート

長門市でプロ選手を迎えたリーグ戦としてロードレースが開催されるのは今回が初めて。コースとして設定されたのは「山口国立劇場ルネッサながと」の外周路。1周800mと非常にコンパクトなコースを50周する40kmで競われる。
コースの道幅は狭く、コーナーが連続し、スピードに乗せられる直線路も短い。テクニックが求められると同時に、集団が強調して差を詰めるといった展開などは考えられにくい。そのため位置取りが重要になるであろうし、各チームがこのコースに適した走り方を模索することになるだろう。これまでのレースとは異なる展開が予想された。


コーナーが多く、テクニックの必要なコースレイアウトが選手を悩ませた

スタートラインには、各カテゴリーの成績首位であることを示すリーダージャージを着た選手たちが並ぶ。個人総合成績の首位のイエロージャージは畑中勇介(キナンサイクリングチーム)が着用。畑中が同じくスプリント賞のブルージャージも有するが、この日は繰り上げで新城雄大(キナンサイクリングチーム)が着用する。山岳賞のレッドジャージは、山本元喜(キナンサイクリングチーム)、新人賞のホワイトジャージは宇賀隆貴(チーム右京 相模原)が着用し、スタートラインに立った。
この日は新型コロナウィルスの感染状況から、山口県に緊急事態宣言は発令されていないにしても、会場での観戦自粛とYouTubeのライブ中継での観戦のお願いがアナウンスされ、静かなサーキットになった。


江原達也長門市長をスターターにレースがスタート

スターターは長門市の江原達也市長。12時に号砲が鳴り、53名の選手がスタートした。
まずは最前列から宇賀隆貴(チーム右京 相模原)と、ベテランの中島康晴(キナンサイクリングチーム)が抜け出し、先行。2周目に吉岡直哉(チーム右京 相模原)が合流して3名の先頭集団が形成された。


先行していたメンバーの中で吉岡直哉(チーム右京 相模原)が転倒。レースを去る結果に

さらに、メイン集団から、小坂光(宇都宮ブリッツェン)が合流、先頭が4名になったが、コーナーで吉岡が転倒し、そのままレースから去ることになってしまった。
逃げ集団がメイン集団と差が付き始めたところで、宇都宮ブリッツェンから小野寺玲、阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)も合流し、先頭集団は宇都宮ブリッツェンからの3名を含む5名となった。宇都宮ブリッツェンにとっては、絶好の展開だ。


形成された5名の先頭集団


キナンの選手たちを先頭にペースアップ

メイン集団はキナンサイクリングチームがコントロール。だが、逃げ集団との差はジワジワと開き、30秒に。道幅が狭く、コーナが繰り返されるテクニカルなコースであり、スピードのアップダウンも激しく、後方にいるほど、選手たちは影響を大きく受け、脚力を消耗していく。メイン集団はジリジリと伸びていき、後方では、集団に食らいつけなくなる選手も出てきてしまう。だが、1周回は800mしかない。メイン集団の後方が先頭の選手たちの視界に入ってきてしまった。


先行する集団を追いあげる追走集団


先頭集団はハイペースで周回をこなし、メイン集団からこぼれた選手をラップし始める

20周回目の周回賞を阿部が取りに行くと、このペースアップで、先頭集団がメイン集団の後方の選手たちに追いつき、飲みこんでしまった。メイン集団前方では、集団をコントロールしてきたキナンを中心に15名ほどが追走集団を作り、先行する。
この段階では先頭集団の後に、ラップされたメイン集団の後方、そしてペースアップし、先頭を追う集団、と800mの短いコースの中に3グループが10秒程度のギャップで走るという、混沌とした状況になってしまった。

審判団はここでレースの混乱をおさめ、危険を回避するためにメイン集団全てをラップアウト扱いにするという決断を下す。先頭に数十秒差で追っていた選手たちもレースを止められ、5名を除く全員がコースからの退出を指示されるという前代未聞の事態に。審判の指示でレースペースでの走行を止められた選手たちの横を5名が走り抜けていく。リーグも終盤となり、年間の順位が関わってくる重要なタイミングのレースであり、圧倒的に有利な展開に持ち込んでいた宇都宮ブリッツェン以外のチームは、困惑と動揺を隠せなかった。


大量の選手がラップアウトとなり、各チームが対応に追われ、会場は混乱に包まれた

このあとのレースは残された5名の中で展開された。3名を送り込んでいる宇都宮ブリッツェンの優位は変わらず、宇賀、中島の体力を奪うため、阿部と小坂が波状攻撃をしかける。


先行する小坂光(宇都宮ブリッツェン)を追う中島康晴(キナンサイクリングチーム)ら

ラスト3周、先行する小坂を追っていた中島が第一コーナーで転倒、中島のすぐ後ろを走っていた宇賀も巻き込まれ、いったんストップし、2名が優勝争いから脱落してしまう。ここで残ったのは宇都宮ブリッツェンの3名のみだった。


先頭に残るのは、宇都宮ブリッツェンの3名のみ。隊列を作り、フィニッシュを目指す

3名はそのまま連れ立って2周を走り抜け、小坂を先行させ、横並びでゴール。1-2-3フィニッシュを決めたのだった。


宇都宮ブリッツェンの小坂、小野寺、阿部が横に並び、1-2-3フィニッシュを決めた

4位には宇賀が入り、痛々しく流血し、傷跡を残した中島は5位でレースを終えた。
小坂は宇都宮ブリッツェンの創設期から所属するメンバー。普段は宇都宮市役所に勤務、選手とフルタイムワーカーの二足のワラジを履く。シクロクロスでは日本の頂点に立った経験があれど、ロードレースのトップカテゴリーで優勝するのは初めての経験だという。


満面の笑みを見せる宇都宮ブリッツェンの3名

小坂は「強いチームメイトと前に乗ることができた」とレースを振り返る。「(総合)順位のことも気になったけれど、『行ってください』と言ってもらえて」小坂を先頭に、小野寺、阿部の順にフィニッシュしたのだと言う。優勝できたことは「純粋に嬉しい」と笑顔を見せた。この日は、チーム創設にも関わり、宇都宮のロードレース振興の立役者の一人であるチームの運営会社の会長が、闘病生活の中、とても厳しい局面を迎えており「会長のために頑張ろう」と話し合い、チームが一致団結して臨んだレースだった。コースの特性を見極め立てた「先行していく」という戦略もコースにハマり、後続を突き放し、表彰台を独占する完全勝利だった。

15周を残し、ラップアウトになった選手たちの順位に関しては、協議の結果、ラップアウト時のフィニッシュライン通過時のグループごとにグループ先頭の順位の適用が適用され、その順位に基づくポイントが与えられることになった。(追走していた13名は全員6位、後方を1名で走行していた選手が19位、続いた8名グループは全員20位)


レースを終えた各賞リーダーたち。ポイント賞が小野寺の手に移った

結果、イエロージャージは畑中がキープ。平坦コースのため、山岳賞に変動はなく、ホワイトジャージは4位でフィニッシュした宇賀が守り、ブルージャージは小野寺の手中に移った。

新コースで開催されたクリテリウムは、まさに予期せぬ展開になった。ロードレースはいかに各コースの特性を読み、展開を予想し、戦術を立てることが大切かを思い知らされる結果になったといえよう。不完全燃焼でこの日のレースを終えた選手たちは、翌日に開催される秋吉台カルストロードレースに全力で臨み、熱のあるレースになることが期待された__。

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【結果】JCLプロロードレースツアー2021
第6戦山口ながとクリテリウム 40km 平均速度45.12km/h
1位/小坂光(宇都宮ブリッツェン)0:53'11"
2位/小野寺玲(宇都宮ブリッツェン)+0"
3位/阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)+0"
4位/宇賀隆貴(チーム右京 相模原)+17"
5位/中島康晴(キナンサイクリングチーム)+50”

【イエロージャージ(個人ランキングトップ)】
畑中勇介(キナンサイクリングチーム)

【ブルージャージ(スプリント賞)】
小野寺玲 (宇都宮ブリッツェン)

【レッドジャージ(山岳賞)】
山本元喜(キナンサイクリングチーム)

【ホワイトジャージ(新人賞)】
宇賀隆貴 (チーム右京 相模原)

【地元特別表彰】
日出男商会 周回賞(20周目)阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)
サイクリングサロン HIROSHIGE 周回賞(30周目)阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)
COLORS BIKE&CAFÉ 周回賞(40周目)小野寺玲(宇都宮ブリッツェン)

画像提供:JCL ロードレースツアー(株式会社ジャパンサイクルリーグ)
三菱地所 JCL ロードレースツアー2021公式サイト

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【過去のレポートはこちらから】
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JCLロードレースツアー2021第4戦
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JCLロードレースツアー2021第2戦
JCLロードレースツアー2021開幕戦(P-Navi編集部)

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