2021/11/08(月) 16:49
JBCFサイクルロードシリーズの最高峰Jプロツアー2021の最終戦が、茨城県の霞ヶ浦湖畔に設営された特設コースで10月16日に開催された。
前日に開催されたタイムトライアルと同様に霞ヶ浦の湖畔を走るが、アップダウンのある1周4.8kmのコースが設定された。ラスト400mに急斜度の上りが含まれ、エリアに応じて道路幅が急激に変化するなど、集団走行を妨げる要素が含まれ、周回が小さいことから、それらの要素が頻繁に現れることになる。難コースと評されるコースのひとつだろう。
10月中旬ながら、レース当日は朝から雨が降り続き、気温は13度前後と初冬を思わせるほど低く、霞ヶ浦特有の強い風が吹き付けるタフなコンディションとなった。この日のレースの設定距離は105.6km。このコースを22周することになる。
このかすみがうらロードレースが、2021リーグの最終戦となるため、選手たちの間には緊張感が漂っていた。ここまで個人総合首位を守ってきたホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)の累計ポイントは3145だが、2位につける岡本隼(愛三工業レーシングチーム)は2730。ポイント差は415であり、この最終戦の優勝ポイント450より小さい。すなわち岡本が優勝し、トリビオが上位に入れなかった場合など、リーダーが入れ替わる可能性も残っている。
個人総合首位を示す赤いリーダージャージを着るホセ・ビセンテ・トリビオと、U23の個人総合首位であることを示す白いリーダージャージを着る山本哲央(TEAM BRIDGESTONE Cycling)を先頭に雨の中のレースがスタートした。
スタートはかすみがうら市歴史博物館前。最終戦はタフな雨の中のレースとなった
2周目に、全日本チャンピオンジャージを着る入部正太朗(弱虫ペダルサイクリングチーム)、山本哲央、小森亮平(マトリックスパワータグ)、平井光介(EQADS)が抜け出し、4名のグループを形成した。
4人の先頭集団が形成された。厳しい横風を受け、斜めの隊形を取る選手たち
メイン集団は、岡本隼を擁し、個人総合の逆転を狙う愛三工業レーシングチームが先頭を固め、がっちりとコントロール。前半は先頭集団と1分前後の差をキープして展開した。
岡本隼の逆転優勝に賭け、愛三工業レーシングチームがメイン集団を序盤からコントロール
状況が変わらないままレースは折り返しを越える。14周目に入ったころ、メイン集団から湯浅博貴と山田拓海(共にEQADS)が飛び出し、追走を始めたが、先頭の4名には届かず、15周目にメイン集団に吸収されてしまう。
霞ヶ浦湖畔は平坦だが、周回コース内には丘陵区間も含まれる。低温と強風、道幅の変化、頻繁に現れるアップダウン。選手たちは周回を経るごとに消耗されていった
リーダージャージのホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)は集団内でチームメイトに守られ、周回をこなしていく
ここでラスト7周。2名の吸収のための動きを機に、メイン集団はペースアップを始め、先頭4名との距離を縮めにかかり、30秒ほどまで迫った。
ところが、逃げ切りを図る先頭4名もペースアップで抵抗。ラスト3周までに、その差をもう一度、1分まで広げることに成功した。この状況から、集団が再び差を詰められる可能性は低く、勢いのある先頭小集団の逃げ切りの可能性が色濃くなっていた。
30秒まで縮めた差を、決死のペースアップで1分まで広げた先頭4名
上り区間で入部正太朗(弱虫ペダルサイクリングチーム)がアタック
ラスト2周の上り区間で入部がアタック。ここに食らいつくことができたのは山本のみだった。
先行する入部を山本哲央(TEAM BRIDGESTONE Cycling)が追う
協調して最終周回を走る二人
ふたりは協調し、ラスト1kmまで向かったが、最後の上りで入部が再び渾身のアタックを仕掛けた。山本はこの動きに付いていくことはできず、山本を振り切った入部は単独でフィニッシュラインへ。最終戦にして、弱虫ペダルサイクリングチームにとってのJプロツアー初優勝をもたらすことになった。
天を指差し、独走でフィニッシュへ飛び込んだ入部。前日が命日だった昨年他界した母親に捧げる優勝だった
上位3名の表彰台。厳しい環境の中、すばらしい走りを見せた
弱虫ペダルサイクリングチームは今回の会場となったかすみがうら市の近く、つくば市に拠点を設けており、チームにとっては、ホームとも言えるレース。トレーニングで走ることもあるコースだという。重要なレースできっちりと勝利を収めることができ「力勝負でなんとか先着した」と語る入部は満足げだった。入部が着用する全日本チャンピオンジャージは2019年に獲得したもの。今年度の全日本選手権を間近に控え、このジャージで走るのは、この日のレースが最後になる。昨年はワールドチームに所属していた入部が、日本チャンピオンとしての意地を見せたレースだった。
逆転優勝をかけて走ったが、展開に恵まれなかった岡本隼人(愛三工業レーシングチーム)
リーダージャージのトリビオは無事に首位を守り抜いた
個人総合首位争いは、優勝を狙って走った岡本が、集団の先頭、5位でフィニッシュし、225ポイントを獲得したが、トリビオも8位に入り、160ポイントを獲得。逆転は叶わず、トリビオが2021シーズンのリーダーになることが確定した。U23首位のホワイトジャージも、このレースでも2位と大健闘した山本哲央が手に入れることが確定した。
2021の個人総合優勝、U23の総合優勝が確定したトリビオと山本
新型コロナウィルス感染拡大を受けての緊急事態の発令や、リーグ加盟チームの変更もあり、選手たちにとっては調整の難しいシーズンとなったと思うが、若手の躍進や超ベテランの健闘まで、個々の選手の活躍が光るレースが多かったように思う。通常開催が予想される来シーズン、この流れがどのような形になるか、期待は大きい。
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【結果】かすみがうらロードレース 105.6km
1位/入部正太朗(弱虫ペダルサイクリングチーム)2時間28分47秒
2位/山本哲央(TEAM BRIDGESTONE Cycling)+6秒
3位/平井光介(EQADS)+34秒
4位/小森亮平(マトリックスパワータグ)+1分5秒
5位/岡本隼(愛三工業レーシングチーム)+1分23秒
6位/フランシスコ・マンセボ(マトリックスパワータグ)+1分24秒
【敢闘賞】
山本哲央(TEAM BRIDGESTONE Cycling)
【中間スプリント賞】
1回目/山本哲央(TEAM BRIDGESTONE Cycling)
2回目/山本哲央(TEAM BRIDGESTONE Cycling)
【Jプロツアーリーダー】
ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)
【U23リーダー】
山本哲央(TEAM BRIDGESTONE Cycling)
画像提供:一般社団法人 全日本実業団自転車競技連盟(JBCF)
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