経済産業大臣旗ロードチャンピオンシップ

2021/10/12(火) 10:08

経済産業大臣旗ロードチャンピオンシップ

新潟県南魚沼市を流れる三国川(さぐりがわ)のダム湖周辺に設定されたコースを舞台に9月20日、Jプロツアーの南魚沼ロードレースが開催された。昨年は新型コロナウィルス感染拡大を受け中止となり、2019年以来2年ぶりの開催だ。


三国川(さぐりがわ)のダム湖周辺の特設コースで開催された南魚沼ロードレース

Jプロツアーでは、各レースを4つにレーティング(位分け)しており、今回のこのレースは、今年の「経済産業大臣旗ロードチャンピオンシップ」と位置づけられ、最高位の「プラチナ」に指定されている。「プラチナ」は最低位「ブロンズ」の3倍のポイントが与えられ、優勝ポイントは900点。この大会での優勝が例年年間ランキングに大きく影響しており、各チームが焦点を合わせて臨むレースになっている。


マトリックスパワータグから4年連続で獲得してきた「輪翔旗」が理事長に返還された

また、優勝チームに与えられる経済産業大臣旗、通称「輪翔旗」の存在も伝統となっており、大きな価値がある。団体戦は各チームの上位3名の順位の総合で判定されるため、エース1名を勝たせるだけでなく、チームとしていかに複数の選手を上位に入れるか、という点もポイントとなる。輪翔旗は2017年以来4年連続でマトリックスパワータグが獲得しており、今年は5連覇がかかる。

使用されるのは、三国川ダムのダム湖「しゃくなげ湖」を囲むように設定された1周12kmのコース。スタート地点から約2km登坂が続き、ここが勝負どころとなるだろう。コース後半は道幅が狭くカーブが連続し、残り3kmからはヘアピンカーブが連続する長い下りになっている。このコースを13周、156kmで競われる。1周の中で約100mの高低差が存在し、道幅も狭く、ダム湖特有のカーブと細かいアップダウンが続く。集団は長く伸びざるをえず、特に後部に位置すると消耗されやすい難コースだ。前回大会では、2周目に飛び出してから、120kmを独走したフランシスコ・マンセボ(マトリックスパワータグ)が逃げ切り優勝した。ちなみにその前大会では、開始早々に形成された逃げ集団から2名で抜け出したマンセボがチームメイトと1-2フィニッシュを飾っている。


前戦の覇者岡本隼(愛三工業レーシングチーム)を先頭にスタート

個人総合首位の赤いプロリーダージャージは、ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックス パワー タグ)が、U23のリーダーの白いネクストリーダージャージは山本哲央(TEAM BRIDGESTONE Cycling)が着用している。前戦の勝者、岡本隼(愛三工業レーシングチーム)を先頭にスタートラインに選手たちがラインナップした。


スタートからさっそくアタックのかけあいが始まった


早々に形成された先頭集団。先頭を行くのは東京五輪にトラック代表で出場した橋本英也(TEAM BRIDGESTONE Cycling)

スタート直後、アタック合戦が始まる。ここで10名が先行した。

この先頭集団からは2周目までに2名が遅れ8名となった。この先頭集団には、草場啓吾(愛三工業レーシングチーム)、橋本英也、沢田時(以上TEAM BRIDGESTONE Cycling)、小森亮平(マトリックスパワータグ)、冨尾大地(CIEL BLEU KANOYA)、中村龍吉(群馬グリフィンレーシングチーム)、香山飛龍(弱虫ペダルサイクリングチーム)、小林弘幸(LEOMO Bellmare Racing Team)と、多くの主要チームの選手たちが入っていた。TEAM BRIDGESTONE Cyclingのみがここに2名の選手を送り込んでいる。

先頭は、メイン集団との差を2分以上まで広げて3周目に入る。


メイン集団はリーダーを擁するマトリックスパワータグがコントロール

3周目、メイン集団から佐野千尋と比護任(ともにイナーメ信濃山形)の2名が追走を始めた。メイン集団と先頭集団との差は6分以上まで開いていた。

5周目に入ると、メイン集団は佐野と比護の追走を吸収し、先頭集団との差も3分20秒に縮めた。だが、その後先頭集団とメイン集団との差は再び開き始めてしまう。7周目には集団間のギャップは7分まで広がってしまった。メイン集団に差を縮めるようなペースアップが生まれる様子はなく、先頭集団の逃げ切りの可能性が高くなってきた。


単独で先行する草場啓吾(愛三工業レーシングチーム)。終始積極的な走りだった


追い上げを図るメイン集団。だが、人数も減り、スムースなペースアップができない

8周目、中間スプリントポイントを取りに動いた草場がそのまま単独先行し、後続に40秒ほどの差をつけた。草場は10周目まで先行を続けたが、この動きで集団のペースが上がり、影響で橋本と中村が遅れてしまった。TEAM BRIDGESTONE Cyclingも1名のみとなり、集団は6チームの6名の選手から構成される形になった。先頭集団の逃げ切りは濃厚となり、優勝争いはこの6名の中に絞り込まれてきた。


6名になった先頭集団。この集団の逃げ切りの可能性が濃厚となってきた

ラスト2周となる12周目、登り区間で沢田がアタック。これを草場が追い、さらに小森、冨尾も食らいつき、4名の集団が作られたところで最終周回に入った。


先頭集団は最終周回までに4名に絞り込まれた


最終周回の上りで再び渾身のアタックを繰り出した沢田時(TEAM BRIDGESTONE Cycling)

沢田は登り区間で再度アタック。10秒ほどの差をつけた。草場、小森、冨尾が追い、ラスト4km、ついに沢田を捉えた。再び4名となった集団は、そのままフィニッシュに向かう。抜け出しにくい下り基調のエリアであることを考えると、勝負を決するのは、4名のゴールスプリントになる可能性が高い。


沢田、小森(マトリックスパワータグ)とのスプリントに競り勝ち、雄叫びをあげる草場

ラスト1kmをこのままの構成で越え、スプリント勝負に臨むことになった。草場、沢田、小森が競り合う。この中から抜け出したのは、草場だった。草場は、Jプロツアー初優勝を、このビッグレースで手にすることになった。愛三工業レーシングチームにとっては、南魚沼クリテリウムに続く勝利。Jプロツアーで2連勝を飾ることになった。

注目された団体戦だが、7位に今村駿介、8位に山本哲央が入ったTEAM BRIDGESTONE Cyclingが首位となり、伝統の輪翔旗を獲得。5連覇のかかっていたマトリックスパワータグは2位。3位には、今シーズンからJプロツアーに参戦することになった鹿屋体育大学から派生したチーム、CIEL BLEU KANOYAが入った。


上位3名の表彰で笑顔を見せる草場と、沢田、小森。すばらしい戦いだった


団体優勝に輝き、輪翔旗を手にしたTEAM BRIDGESTONE Cycling

草場は、逃げ集団の中から勝者が出ることを確信し、勝ちを意識してふるまったという。4名全員が優勝をかけ、最後まで全力で競い合ったレースを「最後は気持ちの勝負になった」と振り返った。

「上りで一番踏めるのは自分」だと信じ、上りで仕掛けたという沢田は敢闘賞を受賞した。沢田は昨年度のシクロクロスの全日本チャンピオンであり、MTBのリーグ戦でも首位を経験しているオフロードのトップ選手だ。今レースで最後まで残り、2回自ら仕掛けるという積極的な姿勢を見せた。優勝を飾れなかった悔しさはあるものの、やり切ったという満足感が漂っていた。「また挑戦します」と語った。

草場が高得点を獲得したが、逆転にはいたらず、Jプロツアーリーダー、U23リーダーはそれぞれ、トリビオと山本哲央が守ることになった。

ここからレーススケジュールは密度の濃いものとなる。シーズン終盤戦、ここからどのような展開が待っているのだろうか。

※第1回JBCF南魚沼クリテリウム・レポート

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【結果】経済産業大臣旗ロードチャンピオンシップ・南魚沼ロード JPT 156km
1位/草場啓吾(愛三工業レーシングチーム)4時間13分23秒
2位/沢田 時(TEAM BRIDGESTONE Cycling)+0秒
3位/小森亮平(マトリックスパワータグ)+2秒
4位/冨尾大地(CIEL BLEU KANOYA)+30秒
5位/小林弘幸(LEOMO Bellmare Racing Team)+4分11秒
6位/香山飛龍(弱虫ペダル サイクリングチーム)+4分11秒

【中間スプリント賞】
1回目/草場啓吾(愛三工業レーシングチーム)
2回目/小森亮平(マトリックスパワータグ)
3回目/草場啓吾(愛三工業レーシングチーム)

【敢闘賞】
沢田 時(TEAM BRIDGESTONE Cycling)

【Jプロツアーリーダー】
ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)

【U23リーダー】
山本哲央(TEAM BRIDGESTONE Cycling)

画像提供:一般社団法人 全日本実業団自転車競技連盟(JBCF)(P-Navi編集部)

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