第1回JBCF南魚沼クリテリウム・レポート

2021/09/30(木) 12:21

第1回JBCF南魚沼クリテリウム・レポート

新潟県の南魚沼六日町を舞台に9月19日、初開催となる「南魚沼クリテリウム」が開かれた。これは国内ロードレースのプロリーグ、Jプロツアーの一戦に位置づけられるレースで、開催が予定されていたタイムトライアルチャンピオンシップが中止となったため、7月の「石川サイクルロードレース」以来、2カ月ぶりの開催となった。


六日町市の商店街をスタートする選手たち

レースで使用される特設サーキットは、六日町駅に近い商店街通りをスタートし、魚野川を渡り、対岸を走ってまた商店街通りに帰ってくる四角形に近い五角形に設定された1周1.24kmのコンパクトなもの。このコースを40周する49.06kmでレースが競われる。ほぼフラットで、鋭角のコーナーはなく、道路幅も広い。シーズンも終盤になり、勝ちを狙うチーム間のハイスピードの展開が予想された。

新潟県は、まん延防止等重点措置等も実施されてはいないが、新型コロナウィルスの感染対策として、観戦客に関しては、県外から移動しての来訪には自粛が要請され、県内在住者に対しても大会への登録をし、健康状態の申告書を出した上でルールにのっとった観戦をしてもらうよう要請が出された。自主検査でチームに陽性者が出たため、出場を辞退したチームもあり、コロナ禍にありながらも、感染状況に対応しながら、その時点での可能なかたちでの開催を実現していく新しい形が定着しつつあることを感じさせられた。


スタート前に選手とチームカーがパレード走行を行った

チームランキング順に、それぞれのチームの選手とチームカーが登場し、パレード走行を行った後、選手たちはスタートラインに並んだ。
個人総合首位であるJプロツアーリーダーの証である赤いプロリーダージャージは、ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックス パワー タグ)が、U23のリーダーの白いネクストリーダージャージは山本哲央(TEAM BRIDGESTONE Cycling)が着用する。


商店街を駆け抜ける集団

スタートの号砲が鳴った後、1周半のパレード走行があり、リアルスタートが切られると、ナショナルチャンピオンジャージを着る入部正太朗(弱虫ペダルサイクリングチーム)が飛び出した。


スタート後すぐに入部正太朗(弱虫ペダルサイクリングチーム)が積極的に動き始める

この動きに反応したのは、橋本英也(TEAM BRIDGESTONE Cycling)、佐藤遼(群馬グリフィンレーシングチーム)の2名。このメンバーで3名の先頭集団が形成された。


先頭を走る入部正太朗(弱虫ペダルサイクリングチーム)と橋本英也(TEAM BRIDGESTONE Cycling)


マトリックスパワータグが集団先頭に立ち、鉄壁のコントロールを始めた

佐藤がこの集団から遅れ、先頭に立つのは、入部と橋本の2名になった。

メイン集団はリーダーチームであるマトリックスパワータグが早々にコントロールを開始し、レースを落ち着かせた。ベテラン勢を揃えるマトリックスは冷静に10秒以内の差を維持して周回を重ねていく。


魚野川を渡る選手たち。この日は晴天に恵まれ、暑さを感じるほどだった

レースが折り返しに近づく17周目、入部と橋本が集団に吸収された。続いて、小山貴大(群馬グリフィンレーシングチーム)、小村悠樹(Team Eurasia-iRC TIRE)、冨尾大地(CIEL BLEU KANOYA)が飛び出し、新たな先頭集団を形成。メイン集団はマトリックスパワータグが先頭に立ち、引き続きコントロールする体制を敷いた。先頭3名との差は10秒以内にきっちりとキープされた。


中盤に入り先頭に立った小山貴大(群馬グリフィンレーシングチーム)、小村悠樹(Team Eurasia-iRC TIRE)、冨尾大地(CIEL BLEU KANOYA)


マトリックスを先頭に、スピードが上がり一列に伸びるメイン集団。最後の展開に備え、チームごとに集結している

残り10周を切ったところで、メイン集団は3名を吸収、ここから本格的なレースが始まるという緊張感がみなぎり始めた。


終盤に入り、勝ちを狙うチームが集団前方に上がってくる

ラスト6周に入ると、勝利を狙うスプリンターを擁するチームが先頭に集まってくる。トラックレースでも活躍する選手が多く所属するTEAM BRIDGESTONE Cyclingや、愛三工業レーシングチーム、さらに今年のツアー・オブ・ジャパンの最終ステージを勝った弱虫ペダルサイクリングチームなどが、熾烈な位置取り合戦を繰り広げる。


TEAM BRIDGESTONE Cyclingを先頭に最終周回に突入

ラスト5kmになる37周に入ると、スピードを誇るメンバーが揃うTEAM BRIDGESTONE Cyclingがマトリックスパワータグから主導権を奪い、先頭に立った。この状態のままレースは最終周回に突入する。

だが、ゴールスプリントが展開されるホームストレートに向かう最終コーナーを先頭でクリアしたのは愛三工業レーシングチームだった。ここから放たれた岡本隼(愛三工業レーシングチーム)が爆発的なスプリントを繰り出し、TEAM BRIDGESTONE Cyclingの選手らを抑え、先頭でフィニッシュラインを越えた。


見事勝利をもぎとった岡本隼(愛三工業レーシングチーム)が笑顔のガッツポーズ


チームメイトたちの祝福を受ける岡本

2位、3位には山本哲央、橋本英也が入った(ともにTEAM BRIDGESTONE Cycling)。 愛三工業レーシングチームにとっては、久々の勝利となり、チームは大いに沸いた。

海外チームの所属も経験してきた岡本だが、ロードレースでの優勝は、ナショナルチームとして参戦した2018年のツール・ド・台湾以来となる。

岡本は、チームが最後の局面まで3名を残せて、それぞれが自分の役割を果たせたことが大きかったと勝因を語った。チームがうまく連携し、協力して果たした勝利の手応えは大きく、喜びもひとしおだったようだ。大前選手が自分を連れ先頭で最終コーナーを回ってくれたため、自分は全力で最後のスプリントに臨むだけだった、とチームメイトへの感謝の思いを込めてレースを振り返った。


上位3名の表彰台。岡本は、はにかんだ笑顔を見せる。商品は南魚沼産コシヒカリの新米だ

個人総合の首位順位に変更はなく、プロリーダージャージはホセ・ビセンテ・トリビオが、ネクストリーダージャージは山本哲央が守った。
次戦は、Jプロツアーのレースの中でも最高位に位置付けられ、優勝者には900ポイントが与えられる経済産業大臣旗ロードチャンピオンシップだ。首位のトリビオに迫る2位の岡本との差は500ポイントあまり。シーズン終盤に向け調子を上げてきた選手が大きくジャンプアップする可能性もある。Jプロツアーは9月中盤から集中的な開催が続き、残り6レースが開催予定となっている。

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【結果】南魚沼クリテリウム 49.06km
1位/岡本 隼(愛三工業レーシングチーム)1時間6分42秒
2位/山本哲央(TEAM BRIDGESTONE Cycling)+0秒
3位/橋本英也(TEAM BRIDGESTONE Cycling)
4位/中川 拳(愛三工業レーシングチーム)
5位/中村龍吉(群馬グリフィンレーシングチーム)+1秒
6位/安原大貴(マトリックスパワータグ)

【地元賞】
1回目/橋本英也(チームブリヂストンサイクリング)
2回目/小村悠樹(チームユーラシア-iRCタイヤ)
3回目/冨尾大地(シエルブルー鹿屋)

【Jプロツアーリーダー】
ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)

【U23リーダー】
山本哲央(TEAM BRIDGESTONE Cycling)

画像提供:一般社団法人 全日本実業団自転車競技連盟(JBCF)(P-Navi編集部)

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