2021/10/16(土) 09:44
JBCFロードシリーズの最高峰であるJプロツアー。9月24日のDay1に続き、25日・26日には「群馬CSCロードレース9月Day2、Day3」が開催された。Day1、Day2は会場である群馬CSCのサーキットを逆回りするが、Day3は正回りを採用し、設定距離も異なる。
今季のシリーズ戦はまさに大詰めに差し掛かっており、年間ランキング逆転への望みをかけ、各チームが全力で挑んだこの3連戦。同じサーキットでありながらも、それぞれ別の展開があり、熱のあるレースが繰り広げられた。
群馬CSCを舞台に3連戦が展開された
【Day2レポート】
Day2のコースは6kmサーキットを逆回りで12周する72kmに設定された。距離が短く、上りもスピードでクリアできる設定であることを考えると、ハイスピードの展開が予想された。
午前中の雨の影響で少し濡れた路面の中、レースがスタート。
スタート早々、2周目に8名の先頭集団が形成される。ここには、圧倒的な存在感で今シーズンも核となる動きをしたフランシスコ・マンセボと安原大貴(以上マトリックスパワータグ)に加え、調子を上げている愛三工業レーシングチームDay1を制したTEAM BRIDGESTONE Cycling、さらにシマノレーシング、弱虫ペダルサイクリングチームからも選手が入り、主要チームを含めた動きとなった。
序盤から積極的な動きが展開された
フランシスコ・マンセボらの先頭集団が形成された
1名がメイン集団に戻り、7名となったが、メイン集団はTEAM BRIDGESTONE Cyclingが集団先頭を固めて牽引し、30秒前後の差を維持して周回を重ねる。
メイン集団はTEAM BRIDGESTONE Cyclingがコントロール
粘る先頭集団
レース後半に入ると、もう1名もメイン集団に戻り、先頭集団は6名に。メイン集団とのタイム差は一気に縮まり、6周目完了時点で20秒を切り、吸収のタイミングを待つばかり。次の展開に向けて、緊張感が高まってくる。
独走したマンセボの後ろに集団が迫る
9周目、まず動いたのはマンセボだった。アタックを繰り出すと先頭集団はバラバラになっていった。メイン集団が先頭集団に入っていたメンバーを吸収しながらマンセボを追い上げる。マンセボもついに11周目に吸収され、レースは振り出しに戻った。選手たちは大集団となって最終周回に入っていく。
スプリンターで勝負したいチームは前方に隊列を組み、位置取りを始める。スプリントでは勝ち目のないチームや選手は他の動きを試そうとアタックを繰り出すが、どれも決定打にはならない。勝負は集団スプリントに持ち込まれることになった。
ラスト100m、チームの隊列から放たれた兒島直樹(TEAM BRIDGESTONE Cycling)が伸びる
初優勝を飾り、喜びを爆発させる兒島
トラックの有力選手が籍を置き、スピードを誇るTEAM BRIDGESTONE Cyclingの鉄壁のリードアウトから放たれ、伸びたのは兒島直樹(TEAM BRIDGESTONE Cycling)だった。力強くフィニッシュラインを越え、ロードレース初優勝の喜びを爆発させた。
上位3名の表彰台。2位、3位には個人総合で追い上げる愛三工業レーシングチームの2名が入った
「最終局面までチームメイトが3名残っていたため、自分は託し、最終勝負に懸けるだけだった」と兒島は振り返る。翌日も勝って、3連勝を目指したいとインタビューを締めくくった。
この日、2位には年間の個人総合ランキングで2位につける岡本隼(愛三工業レーシングチーム)が入り、着実にポイントを積み上げている。
【Day3レポートは2ページ目をご覧ください】
【Day3レポート】
3連戦最終日は、6kmサーキットを正周りする、20周120kmに設定された。同じサーキットでも走行方向が変われば、まったく別のコースプロフィールとなる。心臓破りの坂が含まれ、距離はDay2よりグッと伸びるが、Day1とは違う展開になるだろう。
スタートのタイミングで雨が強く降り始め、霧も濃く、気温は14度とコンディションはみるみる悪化。3日間の中でもこれほどまでに状況が変わるのかと驚くほど、厳しい状況の下でレースが始まった。
降りしきる雨の中、Day3がスタートした
2周目、全日本チャンピオンの経験も持つ佐野淳哉(セレクションチーム)が飛び出し、これを契機に11名の先頭集団が形成された。
佐野淳哉(セレクションチーム)の動きを契機に先頭集団が形成された
中には、佐野に加え、2連勝しているTEAM BRIDGESTONE Cyclingのほか、愛三工業レーシングチーム、弱虫ペダルサイクリングチーム、シマノレーシングから2名ずつ、地元である群馬グリフィンレーシングチーム、海外を転戦する若手育成チームであるEQADS、JCF強化指定選抜チームのメンバーを含んでいる。
佐野、入部(弱虫ペダルサイクリングチーム)らが先頭集団のペースを作る
霧が濃くなり、視界も悪くなってきた。メイン集団は淡々と周回をこなす
ここでメイン集団は落ち着き、ペースダウン。レース前半は集団をコントロールするチームも現れず、先頭11名との差は最大で4分近くまで開いた。この展開を嫌い、何度か追走集団が形成されたが、先頭集団に追いつけないまま、レース中盤までに全て吸収されていった。
心臓破りの坂を上るメイン集団
橋本英也(TEAM BRIDGESTONE Cycling)が先頭に立って、強力に集団を牽引する
レース後半に入るとTEAM BRIDGESTONE Cyclingがメイン集団のコントロールを開始し、先頭集団との差を徐々に縮め始めた。パワフルな牽引で、残り2周となる19周目までに差は1分30秒前後までに縮まった。
最終周回に入ると、ついに差は30秒にまで縮まった。逃げ切りたい選手がアタックを始めたが、決定的な動きは作れない。メイン集団はジリジリと追い上げ、残り2kmの時点で20秒差にまで迫った。
逃げ切りをかけ、先頭集団から入部らがアタックを繰り出す
最後の心臓破りの上りをクリアし、残り1kmのバックストレート。まずは先頭で粘った織田聖(セレクションチーム)と入部正太朗(弱虫ペダルサイクリングチーム)が姿を現す。数秒差で先頭集団にいた佐野らに加え、後方集団からジャンプしてきた沢田時(TEAM BRIDGESTONE Cycling)の4名が飛び込んできたが、直後に迫ってきたメイン集団が全ての選手を吸収する。またもや、勝負はスプリントに託される展開に。
スプリント合戦が始まった。集団左から今村駿介(TEAM BRIDGESTONE Cycling)が強烈な伸びを見せてくる
天野壮悠(シマノレーシング)が残り100mを先頭で越えたが、左サイドの大外から今村駿介(TEAM BRIDGESTONE Cycling)が伸びてくる。圧倒的なスプリント力で、今村がこのレースを制した。
今村はこの写真の後、自分が勝ったことを知ったという。スプリント直後に余裕さえ見える今村はDay1に続き、群馬の2戦を制した
Day1も制した今村だが、これが今季3勝目の勝利となった。
3名の表彰台。個人総合2位を行く岡本隼(愛三工業レーシングチーム)はきっちり3位に入っている
「集団の先頭を取ろうと思い、全力でもがいた」と語る今村は、フィニッシュ時は優勝へのスプリント勝負だと理解しておらず、チームスタッフに教えられて自分が優勝したことを知ったという。3連勝し、チーム力の高さを示せたことが嬉しいと喜びを語った。群馬CSCロードレース 9月大会の3連戦はTEAM BRIDGESTONE Cyclingが3連勝。完全制覇という形になった。
この3連戦を経ても、リーダージャージには変動がなく、ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)が首位を、山本哲央(TEAM BRIDGESTONE Cycling)がU23の首位を守っている。
今季、残すは10月の茨城のかすみがうらタイムトライアルとロードレースの2戦のみ。優勝ポイントはブロンズのタイムトライアルが300ポイント、シルバーのロードレースが450ポイントだ。
首位のトリビオと2位の岡本隼(愛三工業レーシングチーム)の差は260ポイント。岡本はDay2、Day3ともに表彰台に乗り、調子も上々。挽回の可能性はまだ残っている。最後の2レースでどのような戦いが展開されるのか、注目だ。
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【結果】群馬CSCロードレース9月Day2(72km)
1位/兒島直樹(TEAM BRIDGESTONE Cycling)1時間43分51秒
2位/岡本隼(愛三工業レーシングチーム)+0秒
3位/草場啓吾(愛三工業レーシングチーム)+0秒
【結果】群馬CSCロードレース9月Day3(120km)
1位/今村駿介(TEAM BRIDGESTONE Cycling)3時間3分9秒
2位/天野壮悠(シマノレーシング)+0秒
3位/岡本隼(愛三工業レーシングチーム)+0秒
【敢闘賞】
中村龍吉(群馬グリフィンレーシングチーム)
【中間スプリント賞】
1回目/入部正太郎(弱虫ペダルサイクリングチーム)
2回目/香山飛龍(弱虫ペダルサイクリングチーム)
3回目/天野壮悠(シマノレーシング)
【Jプロツアーリーダー】
ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)
【U23リーダー】
山本哲央(TEAM BRIDGESTONE Cycling)
画像提供:一般社団法人 全日本実業団自転車競技連盟(JBCF)(P-Navi編集部)