207

恋して競輪ハンター

2020/03/20 (金) 16:24

恋して競輪ハンター

恋して競輪ハンター 56 Hunting

遂に__この方のことを書く日がきたかっ!
今、そんな気持ちでキーボードを打つ手を進めています。
今回は先日の松山記念に出場した選手をハンティング。
勘の良い読者の方はもう私が誰の話しをしたいのか、お気づきのことかと思われます。

そう、2日目の二次予選A=第9Rを走った稲垣裕之(京都86期)選手のお話しです。
稲垣選手のことは、競輪を始めて1年も経たないうちに好きになりました。ラインの先頭でいつも村上義弘(京都73期)選手をはじめ、近畿地区のメンバーを連れて先行をする姿に、先行選手好きの私が惚れない訳がありません。3連単の稲垣選手-全-全を買ったのは、確か2015年松戸のG1オールスター競輪決勝。後方8番手に置かれ、残り1周をただ無の境地で見ていました。その翌年、再び松戸で村上選手の番手からG1初優勝を掴めなかった時は過去最大に泣いたかも知れません……。ラインを思って、風を切ってきた稲垣選手が報われて欲しいと、思っていましたけれども、もうG1は獲れないのかな……?なんてことも思ってしまった瞬間でした。それでも、そのあとの寬仁親王牌で悲願のG1優勝を達成した時、嬉しさと共に、燃え尽きた気持ちになり、私の中で一つの恋が終わったように感じたのです。また、年齢を重ねると共に、番手を回る競走も増えてきたことで「ラインの先頭で駆ける稲垣選手」が好きだった私の恋の炎は静かに消えていきました。
ですが、松山記念の二次予選A。私の恋の炎は再び燃え上がります。

まず二次予選Aは二次予選Bの2着権利と違い、5着(6着でも1人だけ)までが準決勝に進めるレースです。稲垣選手は中西大(和歌山107期)選手と近畿2車の連携でした。中西選手は一時期、調子を落としていましたが、最近は復調気配。初日も早めの捲りで1着ゴールを決めていました。しかし、二次予選Aの相手は山﨑賢人(長崎111期)選手とS級S班・中川誠一郎(熊本85期)選手の九州ライン、根田空史(千葉94期)選手が率いる南関東ライン。さらに初日に唯一、逃げ切りを決めた吉武信太朗(愛媛107期)選手のラインという四分戦です。私の持っていた今の稲垣選手の印象ではタテ勝負、ヨコの動き、どちらを選択しても楽なレースにはならないと、思っていました。
しかし、稲垣選手は捲ってきた山﨑選手をブロック!ブロック!もう一つブロック!山﨑選手の捲りをシッカリ止め、冷静に直線を追い込み、ゴールしました。結果的に脚を貯めていた根田選手に外を捲られ3着でしたが、逃げた中西選手を4着に残すことに成功。勝ち上がり権利を意識し、先行選手を守る番手の競走に「やっぱり稲垣選手、かっこいい!」と、恋の炎に再着火完了です。

そして、それだけでは終わりません。稲垣選手と中西選手は最終日の10R=特別優秀戦で再び連携。しかも、なんと山﨑選手とも再戦です。ここで私は考えました__稲垣選手は今節、まだ未勝利。2日目は5着権利の勝ち上がりだったけど、今日は敗者戦だし、今まで以上に1着を獲りにいくはず。そして、山﨑選手も同じ轍を2度も踏まないだろう。タテ勝負になった時は山﨑選手に出られてしまう可能性も?そう考えた結果、稲垣選手から3―15―157と山﨑選手から9―135―135というタテ勝負の車券買い、逃げる中西選手は着外になってしまうという予想をしました。
そして、実際のレースを見て、飛び出した言葉は「中西選手、強っ!稲垣選手、巧っ!」の二言だけでした。稲垣選手はこの日もシッカリと山﨑選手の捲りを止め、そして、先行した中西選手を3/4車輪、追い込んでワンツーを決めたのです!二次予選で残してあげたから良いよね?ではなく、何度だって先行選手を守り、前回よりもさらに良い結果に結びつける。ラインを思う稲垣選手の走りが変わらずにここにあると思ったら、忘れていたトキメキが蘇ってきました。
こうして私は稲垣選手に2度目の恋をしました。今度は自力ではなく番手で、ラインを思って走る姿に__。競走スタイルが変わって、冷めた気持ちに何度だって火を点けるのは、そこに熱い走りがあるからです。近畿のベテラン選手として、強く、優しい稲垣選手の走りをこれからもハンティングしていきたいと思います!

【略歴】

木三原さくら(きみはら・さくら)

1989年3月28日生 岐阜県出身

2013年夏に松戸競輪場で
ニコニコ生放送チャリチャンのアシスタントとして競輪デビュー
以降、松戸競輪や平塚競輪のF1、F2を中心に
競輪を自腹購入しながら学んでいく
番組内では「競輪狂」と、呼ばれることもあるほど競輪にドはまり
好きな選手のタイプは徹底先行
好きな買い方は初手から展開を考えて、1着固定のフォーメーション
“おいしいワイド”を探すことも楽しみにしている

恋して競輪ハンター

木三原さくら

2013年夏に松戸競輪場で ニコニコ生放送チャリチャンのアシスタントとして競輪デビュー。 以降、松戸競輪や平塚競輪のF1、F2を中心に競輪を自腹購入しながら学んでいく。 番組内では「競輪狂」と、呼ばれることもあるほど競輪にドはまり。 好きな選手のタイプは徹底先行! 好きな買い方は初手から展開を考えて、1着固定のフォーメーション。 “おいしいワイド”を探すことも楽しみにしている。

閉じる

木三原さくらコラム一覧

新着コラム一覧