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前橋G1を振り返って

2019/10/18 (金) 13:36

前橋G1を振り返って

東日本を中心に甚大な被害をもたらした『台風19号』。この原稿を書いている10月14日現在で……死者は75人、行方不明者は10人にも及ぶ。台風15号の爪痕も未だ残っている地域もあるというのに、自然とは本当に恐ろしいものだと実感した。

その中で行われた前橋G1第28回寛仁親王牌・世界選手権記念トーナメント。英断だったのは10日の前検日に、2日目の12日の中止順延を決定したことだろう。ニュースなどで報じられていたのは12日に台風が関東地方を直撃するというもの。過去においては開催の有無は直前まで決まらなかったものだが、今回は違った。これにより遠方から来るファンに対しても、参加選手にも時間的な余裕が生まれたことだろう。選手にしてみれば前日に中止が発表されるよりも、調整面での不安が取り除かれる。ファン目線、選手目線に立った決定であったと言えるのではないだろうか。実際、YAMADAグリーンドーム前橋に隣接する駐車場や公園は水没し、聞くところによるとドームの正面玄関まで水が押し寄せてきたという。もし強行でもしていたらと考えただけで、ゾッと、してしまう。

4日間の売り上げは67億7,167万6,300円、目標の85億円には遠く及ばなかった。「台風で1日延びた影響はある」と、関係者はコメントしていた。確かに中止順延の影響はあるだろう。しかしながら全て順調に消化できていたとしても、85億円を超えられたかどうかは疑問符が付く。裏を返せば台風の影響を言い訳にするのならば、影響がなかった時の具体的な数字は出てくるのだろうか?恐らくではあるが、85億円には届いていなかっただろう。ここぞとばかりに台風を言い訳に使うのはいかがなものか?真摯に受け止める姿勢が求められる。

優勝は村上博幸(京都86期)だった。三谷竜生(奈良101期)の先行を寸前で捕らえ、5年ぶりのG1制覇となった。伏線は向日町記念欠場にあったと考えている。古傷の股関節を痛め、G1と同等に力が入る地元の記念を欠場した。大袈裟な言い方かも知れないが、向日町競輪場は村上兄弟で持ち堪えているという人もいる。過去、何度となく存廃問題が明らかになった向日町だが、村上兄弟の存在が大きかったようにも思える。語弊がないように言っておくが、もちろん、日本競輪選手会をはじめ、他の選手たちの頑張りは当然のことである。その地元記念を欠場したのだから、相当、股関節の症状は悪かった証拠とも言える。苦渋の選択だったであろうが、今となってはその決断が正解だった。どうしても兄・村上義弘(京都73期)と比較されてしまう博幸だが、キャリアは兄と遜色ない。

そして、もう1人、準優勝の三谷も忘れてはならない。決勝は誰が先行するのかが勝負を左右するポイントだった。ラインの先頭は三谷のほかに小松崎大地(福島99期)、清水裕友(山口105期)。唯一、ライン3人の清水が先行するという見方が大方の予想であっただろう。しかし、小松崎は清水の番手でイン粘り、清水に関しては先行意欲すら感じられなかった。そこを三谷が一気に突いて先行したのは、揺るぎない自信とプライドだったに違いない。小松崎にしろ、清水にせよ自信がないから、逃げる選択をできなかったのだと感じる。清水に関して言えば、結果的に最初から着狙いのように見受けられ、とても優勝を狙う選手の走りではなかった。これは筆者だけの意見ではなく、知人の多くも嘆いていた。それだけ清水への期待も大きいということだが、大一番の舞台で逃げることができるかどうか?これがタイトルを獲っている三谷との差なのだろう。今年の前半は苦しんでいた三谷だけに11月の小倉G1競輪祭が楽しみになってきた。

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岩井範一

Perfecta Naviの競輪ライター

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